2017.03.31 更新

オフィスに入り、まずは2人の画像データを集めてパソコンに落とし、
石川さんが明らかにNGな写真を省いて素早くセレクト。
矢野さん・荒尾さんともに50点ほどに絞り込まれ、
この画像をA4サイズの用紙1枚に20点程度が入るようにまとめて一旦出力します。
自分や他の人の写真で気に入ったものに印を付けていきながら、「これもチェックがついている」と他人の評価も理解でき、視点の違いに気付くきっかけに。
「さあここからはそれぞれ自分が良いと思う写真を10枚くらい選んでいきましょう」
と言われ、ハサミを手に写真を切り取りながらあれこれと悩む2人。
どの写真にも愛着があるし、がんばったし、となかなか選べない模様。
でもこうして自分の撮った写真を見つめ直す作業によって、その人らしさが浮き上がってくるそうです。

Cyclingood
今日はありがとうございました。
いまこうして2人は悩みながら「自分の作品」を絞り込んでいますがなぜこのようなプロセスを経ているのでしょう。
石川さん
写真を撮っているときは自分が「いい」と感じた気持ちに
無意識に従っていますが、こうして見比べながらベストを選ぶことって意外と出来ないものなんです。
私が一旦セレクトしていますが、まずはここから
客観的に自分の写真を見て、さらに絞り込んでいくと、その人らしさ、個性がだんだんと見えてきます。
Cyclingood
選んだ写真の中に自分らしさが表れてくると。
なるほど、おもしろいですね。
石川さん
時間の流れや旅っぽい表現をされる「レポート型」の人と、花やマンホールなど決めたテーマだけを追いかける「コレクション型」の人に分かれたり。
コレクション型には男性が多く見られるケースがあるなど、傾向がわかってくるのもまた興味深いです。
Cyclingood
石川さんは自転車雑誌の編集に携われる中で写真のスキルを
磨かれてきたそうですが、自転車とカメラを掛け合わせることの魅力をどのように感じていらっしゃいますか?
石川さん
私は自転車とカメラはとても似ていると思っています。
どちらも普遍的であること。流行に左右されないこと。
それなりに金額がかかりますから、物の価値を理解して買う人が多いこと。
つまり、こだわりを持って手にするため、
どちらもその人のスタイルを作ってくれるアイテムになります。
Cyclingood
ほんとだ。似ていますね。
今朝感じた扱い方にも重なる部分がありました。

石川さん
そうでしょう。確かにどちらも高価ではありますが
長く使えるものであること、そして自分のライフスタイルを変えるきっかけになるものだと考えれば、その価値は充分にあると思います。
Cyclingood
自分のライフスタイルを変えるきっかけ...
石川さん
スキーやゴルフなどはその場に行かないと体験できないものですが、自転車は10kmも走れば知らない町にたどり着き、
その体験を「旅」に変えてくれます。玄関を出たら旅になるという刺激や発見に満ちた日常を与えてくれるのが自転車の素晴らしさ。そしてその場その場での発見や体験を、その人ならではの視点で切り取り、旅を深掘りできるのがカメラの素晴らしさだと思います。さらにその場に来れない人へも、そのとき感じた魅力を写真を通じて誰かに伝えられることも良いですよね。
Cyclingood
日常を旅にする自転車とカメラ。
そんな風に自分の生活を見直すと、毎日がもっと魅力的に
映し出されていくような気がします。
石川さん
写真を通じて自分らしさを発見するということにもつながりますしね。
「こういうものが好きなんだ」「今度はこんな写真を撮ってみたい」と自分に対する発見や変化に気づくことができますよ。

矢野さんと荒尾さんがようやく数枚のベストショットを決めたようです。
ひとりずつ選んだカットを見て、「どうしてこれなんだろ」「こっちよりこっちの方がトーンが合うよね」と確認しながら最終的には石川さんと一緒に選び、二人のベストの作品が決定。
石川さんによると「矢野さんは整然としたきれいな写真が多い」「荒尾さんは偶然性を追いかけているのが特徴」なのだそう。同じ道を走り、同じものを見ているのに、こうして写真に残すとこんなにも2人の違いが表れることにも驚きです。

石川さんがよく話されていた言葉が「その人らしさ」と「そのときらしさ」。
同じ時間はもうやってこない。
だから自分ならではの視点で、そのときならでは瞬間を切り取る、残す。
それを可能にするのが自転車×カメラなのだと。
身近な場所を旅に変える自転車とカメラが、自分の町を、自分自身を、
未知の世界へ連れて行ってくれるようです。

友達と一緒のサイクリングでは、到達地点などで撮る記念写真だけでなく、自然な表情や雰囲気を捉えるような人物写真にもチャレンジ!コツは撮りたくなる景色や瞬間を探すように人物も観察しながら、写真の目(写真を撮るぞという気持ちを持って)で追ってみると、フォトジェニックな良きタイミングを見つけることができるはずです。

photo by Nozomu Ishikawa

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