2015.03.31 更新

行動範囲がどこまでも広がるハンドバイク。
この自由な楽しさを、もっとたくさんの人に。

ハンドバイクとは、手でハンドル部分を回して動かす自転車の一種で、
車いすよりも効率的にこぐことができ、一般的な自転車並みのスピードが出るのが特徴。
このハンドバイクに約5年前から夢中になり、現在では海外のレースにも出場されているのが岡山県で飲食店を営まれている末吉政己さんです。パラリンピックの正式種目となっているハンドバイクですが、国内ではまだ認知が低いのが実状。末吉さんが感じているハンドバイクの魅力とこれからの目標について、お話しをお伺いしました。

どこにでも行ける。それはたくさんの出会いと体験によって、自分の可能性が広がるという大きな希望。

Cyclingood
今から約10年前に脚の手術をされたのがきっかけでハンドバイクに出合われたそうですね。
末吉さん
ええ、難病で思うように歩けなくなりまして、車いすを使ったスポーツを何かはじめたいと思いました。
テニス、バスケットボール、陸上と、いろいろ試してみたのですがテニスとバスケットボールは一人ではできないので諦め、陸上にしようと決めたのです。
そんなとき、ハンドバイクの情報が少しずつ入ってきました。
ヨーロッパでは健常者と障がい者が一緒にレースに参加しているほど盛んですが、日本ではほとんど情報がない状態。
興味を感じて調べ、乗ってみると自転車並みのスピード感に、車いすだけでは得られない気持ち良さ、そしてどこにでも行ける可能性を感じ、一瞬でとりつかれました。

Cyclingood
行動範囲が広がることが、末吉さんにとって特に大きな魅力だったとか。
末吉さん
そうですね。もちろん、車いすだけでも移動はできますが、やはり限界があります。
しかし、車いすにアダプター式ハンドバイクを装着すると、その行動範囲が無限に広がるのです。これは私にとって、大きな意味をもつことでした。 単にレースに参加できる、サイクリングを楽しめるということだけでなく、どこにでも出かけることで、いろいろな人やコトとの出会いと体験があり、たくさんの刺激を受けることができる。
それだけ、いいことも悪いことも自分の肥やしにできる。
私の人生の可能性が、大きく広がる喜びを感じました。
Cyclingood
人生にとっては、辛いことさえも意味のある、大切なことだとお考えなのですね。
末吉さん
人生に失敗はない。反省は必要だけど後悔は要らない。
というのが私の考えです。
つまずきや失敗があっても、それを肥やしにしていくことでいつか何らかのプラスになると思っています。
しかし、昔はこんなにポジティブな性格じゃなかったんですけどね(笑)。 どうしてでしょう、いつの間にかそういう考えをするようになっていました。

障がい者の方と行動を共にして、気づいた現実。
いま必要なのは人の心をバリアフリーにしていくための活動。

Cyclingood
最初は車いすのレースから出場されていたそうですが、その経験によってご自身の変化や発見は何かあったのでしょうか。
末吉さん
障がい者の方と行動を共にするようになり、一番に感じたことは「私は何も知らない、理解できていない」ということでした。
岡山県では当時、「吉備高原車いすロードレース」と「津山国際車いす駅伝」という2つの大きな大会があり、私もその存在は知っていました。
しかし、選手の方たちの生活やトレーニングなどについてはまったく知らず、障がい者の方が本当に求めていることまでは理解に至っていなかった。わかったつもりでいたのです。

Cyclingood
たとえばどういったことでしょうか?
末吉さん
多くの施設には駐車場に障がい者用が確保されています。
出入り口に近い場所に、通常よりも広い面積で設定されていますがなぜあれほど広くなっているかわかりますか?
車いすを自動車から出し入れするためには、ドアを大きく開かなければなりません。そのためにはあの面積が必要なのです。
ときおり、障がい者用の駐車場に一般の自動車が留まっているのを目にしますが、こういうことも障がい者の実状を知ってもらうことで減らしていけるのではと考えています。
Cyclingood
末吉さんが障害のある方の立場を理解し、情報を発信していく立場に立たれると。
末吉さん
私の障害は軽度ですが、この病気は天からのプレゼントだと思っています。そのおかげで、これだけ多くの出会いや発見があったのですから。
私ができる範囲は限られていますが人の心をバリアフリーにしていくような、何かの力になりたいと考えています。

空を見ながら走れる気持ち良さがハンドバイクの魅力。
この素晴らしさを、もっと多くの人へ。

Cyclingood
それでは、ハンドバイクそのものの魅力について教えていただけますか?
末吉さん
これが私のマシンです。
両手でクランクを回して、チェーンを通じてタイヤを回転させます。
通常の自転車と同じ仕組みですね。
変速機は前10段、後ろ3段です。
これは仰向けに乗車するレースタイプ。他にも車いすに取り付けるアダプター式のハンドバイクもあります。
Cyclingood
地面からとても近いですね!
最初は乗るのが怖そうですが…
末吉さん
私はまったく怖いと思わなかったですね。
この姿勢だとほら、空がよく見えるんですよ。なんと気持ちいいか。
腕の力が必要なので、上半身が鍛えられ、レースなら速い人で平均時速40km/h近く出ます。結構な速度ですよ。
Cyclingood
今年もベルリンのレースに参加されるのですね。目標や抱負は?
末吉さん
去年は、右も左もわからない状況で何とか参加したのですが、35km地点でコースを離れてしまう痛恨のミスをしてしまいました。
事前練習ができなかったという反省もあり、今年はきちんと準備をして、リベンジを果たしたいと思っています。
ヨーロッパの女性選手に1人、とても速い選手がいまして、彼女をマークして追いつきたいですね。
Cyclingood
末吉さんが活躍されることで、ハンドバイクの認知がいっそう高まっていきますね。
末吉さん
現在、国内のハンドバイク競技者は30人ほどできちんとしたレースをしにくい状況です。
まずはハンドバイクの素晴らしさを感じてもらい、競技者人口を増やしていきたい、そして、通勤や通学にも皆が利用する時代がくればと願っています。個人的には、スポンサーに支援してもらいたいという思いもあります(笑)。これからも岡山県内の自転車大会への参加や、試乗会などにも積極的に取り組んでいく予定ですのでぜひ機会があれば体験してみてください。本当に気持ちいいんですよ。
Cyclingood
さらなるご活躍を楽しみにしています。
ありがとうございました。