2018.10.22 更新

自転車まちづくりのリーダーとして。
トライアスリートとして。自転車との2つの関わり。

30代でフルマラソンに出場、40代から現在までトライアスリートとして毎年の大会出場をめざして
トレーニングに励まれている貝塚さん。プライベートでは鉄人アスリートである一方で、
お仕事は堺市役所の自転車まちづくり部の部長として、自転車を活かしたまちづくりに
取り組まれています。自転車活用推進法が今年施行され、各自治体が自転車まちづくりに
着手している中、堺市がめざす姿とは? 貝塚さんのリーダーシップで活動が加速する
その内容と自転車への思いについてお聞きしました。

profile
profile堺市 建設局 自転車まちづくり部 部長
貝塚 耕一さん

39歳のときに泉州国際市民マラソン(現:KIX泉州国際マラソン)に出場、完走して以来ランニングを続けて40代半ばからトライアスロンにも挑戦。2011年に自転車の練習中に事故に遭い、頭部手術を経て「タイムを競うよりも単に走れる喜び」を感じるように。ジェットコースターの坂が有名な皆生トライアスロンにも毎年のように出場している一方、仕事では平成27年、堺市役所に自転車まちづくり部が発足して以来部長を務める。大阪府岸和田市出身。60歳。

前編の「貝塚さん」

  1. トライアスロンをはじめたきっかけ
  2. 放置自転車対策を通じた気付き
  3. 堺の魅力をつなぐ「散走」に共感・実践

堺市役所は南海高野線堺東駅のすぐそばに位置し、駅を出ると21階建ての市役所高層館が目の前にあらわれます。堺市は大阪市の南側にある大阪府内で人口・面積ともに第2の都市。仁徳天皇陵をはじめとする古墳が点在し、堺包丁や和菓子などの伝統産業が盛んで千利休生誕の地としても知られる歴史のある町です。この堺市のさまざまな魅力を自転車でつなぐ「SAKAI散走(さんそう)」に取り組みはじめたのが堺市建設局自転車まちづくり部で、そのリーダーが貝塚部長。「自転車のまち」にはあらゆるかたちがありますが、貝塚さんたちがまず取り組んだのは、誰もが気軽に参加できる散走というスタイルでした。なぜ堺市が選んだのが散走だったのか?貝塚さんご自身はトライアスリートなのになぜ? いろんな疑問を胸に、さっそくお話を伺っていきます。

Cyclingood
まずは貝塚さんの自転車との出会いからお聞かせいただけますか?
貝塚さん
私は最初、趣味でランニングをしていまして、39歳のときに地元で開催される市民マラソンに出場、完走しました。マラソンの世界に同じレベルの仲間ができていくと結構トライアスロンをしている人とも知り合いになっていきます。トライアスロンってハードルが高いイメージがありましたが、「あの人もやってるんだ」と次第に身近に感じていき、40代になってから自転車を知人に譲ってもらい、ショートディスタンスの大会に出場したのが最初です。

Cyclingood
40代からトライアスロンの世界へ。すごいですね。
貝塚さん
水泳は苦手でしたが、マラソンと自転車は好きでしたし、やってみるとおもしろくて。年に1〜2回ほど各地で行われているロングディスタンスの大会にも出場するようになりました。いまはタイムを競うよりも、それぞれの競技を長い時間ゆっくりと楽しむことに魅力を感じています。
Cyclingood
それでもトライアスリートとしてはやはりタイムが気になるのでは…
貝塚さん
それがですね、あれは2011年のことでした。自転車の練習中にクルマと接触してそのときは頭を打った程度でとくに何もなかったのですが、その後痛みが出て病院に行ったら即手術だと。硬膜下血腫という病名で、1ヵ月ほど入院しました。このことをきっかけに、速さを競うことよりただただ普通に走れる、完走できることが私にとって一番大事なことに変わっていったのです。

Cyclingood
競技に出ることの目的が変わったのですね。
貝塚さん
そうですね。事故の後に新しいロードバイクを購入して、トライアスロン大会への出場は現在も継続しています。通勤は自転車で片道18km走っていますし、自転車で走る気持ちよさや便利さは日々感じています。
Cyclingood
トライアスリートである貝塚さんが、自転車まちづくり部の部長に就任されました。このあたりの背景をお聞かせいただけますか?
貝塚さん
堺市は自転車産業が盛んな町であり、平成26年10月には堺市自転車のまちづくり推進条例が制定されました。これは市民の皆さんに交通ルールの遵守・マナーの向上を啓発し、安全で安心して、楽しく利用することができる自転車のまちづくりを進めるためのものです。そして翌年の平成27年に自転車まちづくり部が組織として発足。当時は全国的にもまだ珍しい部署名でしたね。
Cyclingood
自転車まちづくり部の部長に就任される前はどのような部署に?
貝塚さん
私が現職に就く前は、4年間、放置自転車対策に取り組んでいました。放置自転車対策は、ただ駐輪場をつくるだけでは根本的な解決になりません。次々とまた放置自転車が生まれてしまう。この問題に取り組む中で、特に商店街の放置自転車対策は、建設局の枠の中での『自転車駐輪場をつくって撤去する』というやり方ではなく、地元住民の方の声を聞き、関係部署などと横断的に関わりをもち、どうあるべきかを一緒に考えていくことの重要性を肌で感じていました。その方が効果があるしおもしろい。そんな後での自転車まちづくり部への異動でした。

Cyclingood
どんな「自転車のまち」にするか現在いろんな自治体さんが考えられていると思います。そのような悩みは堺市にはなかったのでしょうか?
貝塚さん
平成27年12月に私が現職に就き、確か翌年の2月でしたね、散走(さんそう)という自転車の楽しみ方に出会ったのは。「堺市がやるべきなのはこれだ!」とすぐさま共感して、一気に企画が進んでいきました。
Cyclingood
散走のどのようなところに共感されたのでしょう?
貝塚さん
まずは堺市に点在する、歴史的・文化的な数々の名所を自転車を通じてつなげられるようになることです。堺市は観光ポテンシャルの高い町だと自負していますが、交通の便でコースにしにくい面がありました。これが自転車で解決でき、堺市ならではの独自性の高いサイクリングを楽しんでもらえます。そしてもうひとつは誰でも参加できるという気軽さです。
Cyclingood
散走は「散歩するように自転車を楽しむ」乗り方で、速く走ることを目的にしていないため年齢を問わずに楽しんでいただけますね。
貝塚さん
そこなんです。「自転車のまち」にはさまざまなかたちがあります。堺市にはサイクリストの聖地となるようなコースは残念ながらありませんが、名所はたくさんあります。この財産である名所を活かし、かつどなたにでも参加してもらえる「自転車のまち」にするために、服装も自転車も自由でゆっくり走る散走は最もフィットしました。自転車は健康に良いのはもちろん、行動範囲が広がることで人生の楽しさまで広がります。堺市民をはじめ、観光客の方にも堺を健康的に楽しんでもらえると大きな期待を抱きました。

トライアスリートとして自己の限界に挑戦するスポーツサイクルの魅力を体感しながら、
堺市らしい自転車のまちづくりとしては、誰もが気軽に参加できる「散走」に共感し、
スピーディに実施された貝塚さん。貝塚さんが指揮を執る自転車のまちづくりについて
まだまだお話は続きます!