Life Style ライフスタイル
2021.03.04 更新
忙しすぎた毎日から解放された定年退職後。
自転車を相棒にした「散走」で、自由を満喫。
散走とは、自転車で走る行為そのものを目的にせず、興味関心を満たすことを目的に散歩のようにゆっくりと自転車を利用する楽しみ方。定年退職後に「やりたいことをやる」と決めた三船さんが夢中になったのが、この散走でした。
今回は自ら散走を企画し、仲間と共に楽しむ三船さんの1日に同行し、散走に行き着いた経緯をお話いただきました。
三船 義博さん
1950年大阪府堺市生まれの70歳。会社員時代はエンジニアとして勤務し、60歳で定年退職。環境問題への関心を起点に堺自転車のまちづくり・市民の会、堺エコロジー大学、写真クラブなどに入会し、活動の幅を拡大。2011年日本サイクリング協会サイクリングインストラクター取得、2012年仲間とミューズ・サイクリングクラブ立ち上げ(事務局自転車博物館内)、2017年堺市中心市街地活性化協議会堺コミュニケーションサイクル(SCC)参加、2019年SAKAI散走倶楽部世話人へと精力的に活動中。
前編の「三船さん」
- 「野点っぽい」散走企画に同行
- 寄り道を楽しみつつゆっくりペダリング
- 公園にて、抹茶と和菓子でわいわい
2020年11月のとある日曜日。三船さんが率いるSAKAI散走倶楽部のイベントに同行するため、Cyclingoodの取材班も待ち合わせ場所の公園へ向かいました。ひとり、またひとりと愛車に乗ったメンバーが集まる中、「今日の参加者は何名ですか?」とお聞きすると、「うーん何人だったかな?10人くらいかな?」と笑う三船さん。「いつもこういう感じなんですよ。誰かが友人に声をかけて当日参加になるケースもあるので、事前に把握してないんです」とのこと。さすが大人の集まりと驚いていたら、参加者が揃い自己紹介へ。
今日の散走テーマは「野点っぽい散走」。野点じゃなくて「っぽい」って何だろうと思いつつ、「じゃあ行きましょう。今日は和菓子屋さんに立ち寄ってから公園に向かいます」とペダルを踏み込みました。
常連のメンバーが前と後ろについて、一列になって車道をゆっくりと自転車を走らせます。このペースなら運動不足気味のCyclingoodスタッフも余裕でついていける感じで安心。コンビニエンスストアで少し休憩した後、再スタートして走っていたら大通りから外れて細い坂道へ。そこに現れたのは小さな神社。あれ、和菓子屋さんに直行するんじゃないんですね。
ここは「鈴の宮」とも呼ばれる蜂田神社。立派な木々が本殿を囲み、赤い鳥居があり、小さな神社ながら静かで心地いい空気が流れています。夏には数多くの風鈴を飾る風鈴まつりが有名らしく、この木陰の中に響く風鈴の音色を思い浮かべると、真夏といえどもとても気持ちよさそう。参加メンバーは、本殿をお参りしたり、飲み物をとりながら談笑したりとめいめいにこの場を楽しみ、「ではそろそろ行きますか」と自分の自転車へ。
「何時まではここにいる」とタイムスケジュールが決まっているわけではなく、参加者の様子を見ながらゆるやかに進行されているのが感じられます。
蜂田神社を出て向かったのは、お目当ての和菓子屋さん。自転車を止めて順番に店に入り、それぞれ自分が食べたいだけの和菓子を買い求めます。買ってきた人同士が袋の中を覗き込み「何にしたの?」と見せ合う姿も楽しそう。年齢も職業も皆さんそれぞれで初対面の人もいるようですが、こうして体験を共にすることで照れや垣根がどんどん剥がれていくように見えてきます。
「じゃあいよいよ野点っぽいことをする公園に向かいますよ」という三船さんの掛け声で、買ったばかりの和菓子をバッグに詰めてスタンバイ。どんな「っぽい」ことが待っているのでしょう。
公園に到着するとすぐさま常連のメンバーが中心になって準備をはじめ、「持ってきている器を出してくださーい」と声が。今回の持参品である「マイ茶碗」が並べられ、素早い連携で抹茶を入れ、お湯を注ぎ、マドラーでかき回して即席の野点に。そう、これが「っぽい」の正体。「ちゃんとしようとなると準備も大変でしょ?このくらいでも充分美味しいですよ」と三船さんに勧められて私たち取材班もお茶をいただくことに。芝生に座って和菓子をパクリ、そして抹茶をごくり。お作法はともかく、ここまで走ってきた爽快感も相まってほっと気持ちが和みます。
この頃になると皆さんが旧知の関係のようにあちこちで輪が生まれ、お茶をおかわりしながら楽しそうに談笑。三船さんはいろんな輪に参加しながら、にこやかな表情です。
こうしてしばらく自由な時間を過ごした後、「じゃあ今回はこのあたりで解散としましょう」と三船さんから挨拶が。まっすぐ家に帰る人、近くのパン屋に行ってみましょうと地図を確認するグループなど、散走後も過ごし方はそれぞれです。ここまで散走に同行する中で、三船さんはどうしてこのような散走企画を率いることになったのかとさらに興味がわいてきました。
参加メンバーと別れた後の公園で、ゆっくりと三船さんにお話しを聞いてみます。