2018.10.25 更新

自転車まちづくりのリーダーとして。
トライアスリートとして。自転車との2つの関わり。

30代でフルマラソンに出場、40代から現在までトライアスリートとして毎年の大会出場をめざしてトレーニングに励まれている貝塚さん。
プライベートでは鉄人アスリートである一方で、お仕事は堺市役所の自転車まちづくり部の部長として、自転車を活かしたまちづくりに取り組まれています。自転車活用推進法が今年施行され、各自治体が自転車まちづくりに着手している中、堺市がめざす姿とは?
貝塚さんのリーダーシップで活動が加速するその内容と自転車への思いについてお聞きしました。

profile
profile堺市 建設局 自転車まちづくり部 部長
貝塚 耕一さん

39歳のときに泉州国際市民マラソン(現:KIX泉州国際マラソン)に出場、完走して以来ランニングを続けて40代半ばからトライアスロンにも挑戦。2011年に自転車の練習中に事故に遭い、頭部手術を経て「タイムを競うよりも単に走れる喜び」を感じるように。ジェットコースターの坂が有名な皆生トライアスロンにも毎年のように出場している一方、仕事では平成27年、堺市役所に自転車まちづくり部が発足して以来部長を務める。大阪府岸和田市出身。60歳。

後編の「貝塚さん」

  1. 散走の裾野を広げる新たな取り組み
  2. 自転車通勤者拡大をめざして
  3. もっと堺市ならではの自転車のまちへ

堺市自転車まちづくり部の部長として、SAKAI散走の実施に取り組んできた貝塚さん。「百舌鳥(もず)古墳群めぐり散走」「【和】の1日散走」「堺夕日散走」といった多彩な企画で堺のまちを切り取り、この町を知り尽くしているはずの地元の方にとっても新鮮な楽しさを提供されています。回を重ねるごとにリピーターが増え、現在は堺市内外から参加者が。このSAKAI散走をさらに発展させるべく、貝塚さんは新たな試みへと踏み出されています。

Cyclingood
貝塚さんの狙いどおりにSAKAI散走が定着しはじめているように感じます。
貝塚さん
参加いただいた方にはとても好評なのですが、「参加して終わり」の一過性のイベントになっていないかという思いがあり、もっと多くの人に広げてこの散走を堺に根付かせていかなければいけないと考えはじめました。どうしていくのか?誰がするのか? いろいろと議論していくと、やはり行政だけでやるには限界があります。
Cyclingood
散走をイベントではなくライフスタイルとして多くの人に定着させて裾野をさらに広げたいという思いですね。
貝塚さん
そうです。この町を一番良く知るのは誰か?と考え、堺の魅力の語り部となっていただく「SAKAI散走アンバサダー」を養成することに。広く一般から応募してもらい、認定者には安全に楽しく走行できるコース設定やガイド役を担当していただきたいと考えています。この度第一回目の養成講座を行いましたが、皆さんとても積極的に参加してくださって盛り上がりました。
Cyclingood
市民がガイド役になるとはとてもユニークですね。
貝塚さん
この養成講座の実施は、私たち行政だけでは難しかったでしょうね。実際、市民団体や地元の自転車店など皆さんのご協力があってのものでした。官民一緒になって散走で堺を盛り上げようという機運が高まっているのをうれしく感じています。
Cyclingood
それは先ほどお話されていた、放置自転車対策のときと同じ感じですね。
貝塚さん
皆さん地元愛があり、自転車への思いも強い方ばかりです。行政がリードするのではなく、この町をよく知る方の、この町をもっと良くしたいという思いがつながって、大きな力になっていくことを実感しています。でも、運営体制などもあってまだまだこれからですね。

Cyclingood
自転車のまちとして、SAKAI散走以外にどのようなことに取り組んでいらっしゃいますか?
貝塚さん
現在考えているのは自転車通勤者を増やすことです。自転車の健康効果は身体だけでなく精神面にもあると言われています。心の病を抱える人が増えている中で、自転車通勤で気持ちをリセットできる効果は無視できません。堺市民がいきいきとした人生を送るためにもとても意味のあることだと考えています。
Cyclingood
具体的にはどのような活動を?
貝塚さん
まずは市の職員に向けて自転車通勤セミナーを実施しました。72名が集まり、その後アンケートで自転車通勤くらぶの加入を確認したところ30名が賛同してくれました。私たち自身が自転車通勤のメリット・デメリットを確認して必要な設備環境について考え、これらの経験をふまえて堺市内の企業に提案して広げていきたいと考えています。
Cyclingood
自転車通勤となるとまずは設備、保険というところから入るケースも多いようですが...
貝塚さん
危険とかお金がかかるとかネガティブな部分から考えずに、まずはできることからやってみる。そして何が問題になるかを見つけて解消していく。どんなことでも実際にやってみないとわからないでしょう。自転車通勤で心身の健康が期待できるなら、そのために何をすべきかを考える方が建設的だと思っています。
Cyclingood
そのような貝塚部長のポジティブな思考やバイタリティは、トライアスロンで鍛えられたものなのでしょうか?
貝塚さん
さあ、どうでしょうね。私は鳥取県で毎年開催されている皆生トライアスロンに参加することが一年の大事な目標なのですが、実際参加すると暑さやアップダウンのツラさで自分に負けそうになります。こういうときってリタイアする理由をずっと頭の中で巡らせているんですよ。もうダメ、もう止めていいとささやく自分と戦いながら、ゴールしたときの喜びに泣いてしまうほどです。妻や娘、孫たちと一緒にゴールした瞬間に、あれほど私を苦しめていたツラさが吹き飛びます。トライアスロンは私にとって生涯スポーツだと思っているので、いつまでも続けていくつもりです。

Cyclingood
やはりその強さ、タフさがすごいです。
貝塚さん
自転車を活かしたまちづくりは、まだまだできることがあります。
私がこだわっていきたいのは、堺らしさを出していくことです。
かつてマラソンは一部の人だけのものでしたが、健康志向の高まりもあって、いまやマラソンを楽しむ人が増えて多くの人が参加するようになってますよね。自転車も同じで、誰もが遊び感覚で楽しむことができると思ってます。もっともっと裾野を広げて行きたい。
「もののはじまりなんでも堺」と言われているほど、堺は昔からいろんなことを始めてきた町なんです。自転車の楽しさをこれからも堺から発信していきたいですね。

2018年10月26日・27日開催の「自転車利用環境向上会議」については、
以前から「堺市でやりたい」と名乗りを上げて実施にこぎつけたと話す貝塚さん。
自転車利用環境、安全・教育、サイクルツーリズム、自転車と健康などのテーマを設け、
堺市の独自性を広くアピールしたいと胸を張っていらっしゃるのが印象的でした。
トライアスリートとして、堺市職員として、ふたつの立場のふたつの目で
自転車がもたらす価値に真摯に向き合って適材適所の活かし方を生み出されているのは
さすが貝塚さんならでは。エネルギッシュでユーモアにあふれ、リーダーシップを
発揮しつづけている貝塚さん、そして堺市の自転車のまちの行方に期待が高まります。

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