2017.05.31 更新

地域のコトと人をつないで
暮らしの楽しさを自転車とともに生み出す。

約4年間京都に移り住み、「自転車アクティビスト」として
さまざまな地域での自転車ツアーを企画・運営されてきたKaOさん。
京都に惚れ込み、この町の人とつながり、関係を紡ぎながら
「自転車を通じて地域の魅力を発見、発掘する」活動に取り組まれています。
今回は彼女が愛する京都の町、人を、Cyclingoodに特別に案内してくださいました。
自転車がつなぐさまざまなご縁のかたちを、一緒に巡ってみましょう。

profile
profile自転車アクティビスト
KaOさん

東京で編集者として勤めていた際に自転車メッセンジャーに惹かれ、国内外のメッセンジャーが集う催しや大会(CMWC:Cycle Messenger World Championshipsほか)の取材にカメラ片手に奔走。その後、雑誌『PAPERSKY』のBicycle Clubキャプテンとして自転車の楽しさと日本各地の魅力を結びつけるツアー<ツール・ド・ニッポン>の企画・運営を担当。京都を拠点に約4年間活動し、今春からは新潟に拠点を移して新たなステージを迎える。

㐂み家(きみや)さんの豆かんをおみやげにして向かった先は、「京旅籠むげん」さん。
京の町家造りのたたずまいは、5部屋だけという小さいお宿ながら、どっしりと、でもあたたかく旅する人を迎えています。暖簾をくぐった私たちを迎えてくださったのが、女将の永留(ながとめ)あふるさん。
「女将とは以前私が企画したイベントに協力してもらったご縁なんです」
「でもその前に去年のうちのオープニングのときにKaOさんが来てださったのが最初ですよね」と2人でわいわい。何でもfacebookでむげんさんのオープンを知ったKaOさんがこの空間に興味を抱き、オープニングイベントに飛び込んだのが最初の出会いだったそう。

京都に惹かれ、導かれた永留さんご夫婦による「京旅籠むげん」には、おくどさんと呼ばれる竈があり、その奥には中庭、そしてBarとして使用している離れの蔵へ続いていく京都ならではの空間が広がっています。
KaOさんと出会ってすぐに意気投合し、磁石のようにお互いがグッと惹きつけ合ったと話してくださった女将さんにも聞いてみましょう。
「KaOさんってどんな人ですか?」

「KaOさんの向こう側に魅力的な方がたくさんいて、KaOさんを通じて出会いがパッと広がる。まるで人と人をつなぐHUBのような存在です。私たちのこの宿も、お客さまにとってはひとつの通過点。その方の人生の何か次につながっていくような、HUBのような役割になればいいなと思っています。だからKaOさんは私にとって憧れの人なんです」。
やっぱりKaOさんって不思議な人。初対面であっても誰もを一瞬で魅了して仲間の輪をあっという間に広げてしまう。何がそんなに彼女を駆り立たせているんだろう。何でいつもそんなに真っ直ぐなんだろう。
彼女の原動力がもっと知りたくて、むげんさんの中庭をお借りしてお話を聞いてみました。

Cyclingood
今日は京都を案内いただきありがとうございました。
本当にどこも素敵な場所、素敵な方々でしたね。
KaOさん
私は2013年から「京都自転車ランデブー」と題した自転車のイベントを企画・運営していました。この活動を通じて出会った仲間や、力を貸してくださる方々に恵まれ、少しずつ京都に根を張ることができたと感じています。
Cyclingood
それにしてもなぜ「自転車」なのですか?
KaOさんの活動に自転車が欠かせない理由は何でしょう?
KaOさん
私が「自転車」に興味をもったきっかけは「メッセンジャー」でした。あえて自転車で、町をかけぬける姿に心奪われました。そこで仕事の傍らメッセンジャーの写真を撮りはじめ、海外で行なわれる大会にまで取材と称して何年も追いかけていたこともあるくらいです(笑)。
単なる乗り物というだけでなく、自転車というものが私たちの生活にとても大切な存在であるように感じられて、もっと地域を、毎日の暮らしを豊かにするために、自転車で何かできないかと、そう考えるようになったんです。

Cyclingood
それが「自転車アクティビスト」という「職業」につながっていくんですね。
KaOさん
そうですね。職業、という大げさなものではないかもしれませんが、私は自転車に乗ることは大好きですが、サイクリストでもなければ、自転車ライターでもありません。自転車そのものを追求するのではなく、自転車を「暮らしの道具」として、日々の楽しさにどのように活かしていけるかということを大切にしています。
Cyclingood
暮らしの道具。そのあたりをもう少し詳しく教えていただけますか?
KaOさん
私自身、京都での生活に自転車は欠かせないものでした。想像以上に離れた町へも、スイスイと行ける、ぐっと行動範囲が広がる。
その喜びや日々の楽しみ方が、自転車があるとないとじゃまったく違うんです。
明日香ちゃんやしおりさんたちとどこに行くのも自転車が当たり前だったように私にとって「京都」と「自転車」はセットになっていたんです。
Cyclingood
自転車ツアーを企画する際にもKaOさん流のこだわりがありますか?
KaOさん
私が自転車のツアーを企画するときは、その町を取材し、自分で触れてみて良いと思った場所や人、できごとをセレクトしていきます。先日も群馬県に行ってきましたが、そこで出会える「人と手仕事」に着目してスポットを決定しました。
たとえばうどん打ち体験をコースに加えたのですが、なぜそこにしたかというと店主がとてもユニークだったから(笑)

Cyclingood
KaOさんにとっての魅力は「そこ」なんですね(笑)。
そしてご自身がいいと思った体験を何よりみんなと共有したいと。
KaOさん
ええ。私が企画するツアーの主旨は、その地域がもっている思わぬおもしろさ、楽しさを私なりの視点で発掘することなので、やはり自分自身の感覚や体験がベースになっています。そこで感じた「いい!」と思ったものを「みんなに知ってほしい!」と願う気持ちが、私の活動の原動力なのかもしれませんね。
Cyclingood
そして、その「いい!」の気分をつないでいくのが自転車だと。
KaOさん
そうです。地元の人にとっては当たり前の風景も、訪れる人には魅力的に映るということがとても多いです。そういうことも含めて、その土地の良さをみんなに知ってもらうには自転車が一番。町を駆けて立ち止まり、その場を深掘りする体験を通じて、地域と自転車両方の素晴らしさを多くの人に感じてもらいたいと思っています。

おもしろいと感じられる場所へ。そこにしかないコトと人のところへ。
KaOさんにとって一番気持ちいい方法でつなげることができるのは「自転車」でした。
自分が知りたいという思いに忠実に、でも活動のひとつひとつに誠実に取り組まれてきたことで、たくさんの人と強い絆を育み、わずか4年の京都生活であるにも関わらずみんなにとって無くてはならない存在になられたのだと思います。

そして、その京都の生活で無くてはならなかったのが「暮らしの道具」として
いつも生活に寄り添ってきた自転車。
すれ違いざまに声をかけ合う関係、どこからか漂ってくるその町ならではの匂い、そして
くるくると変化する町の風景。生活の中にいつも自転車はそばにいて、
その町に溶け込む時間を加速させたのではないでしょうか。
暮らしの道具、つまりは生活のパートナーとしての自転車という価値を
改めて教えてもらえたような気がしました。
KaOさん、ありがとうございました。

KaOさんが「本当にここのお寿司がおいしくて」とおまけに教えてくださったのが中京区にある末廣さん。天保年間創業という歴史あるたたずまいだけでなく、200年にわたり製法を守り続けているというその姿勢にも驚きです。KaOさんは珍しい鯖としば漬けの海苔巻き「いそ巻」をこの日の晩ごはんにとお持ち帰りされました。