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2024.7.24 更新
福島県の東南に位置するいわき市で、昨年から定期的に実施しているのが「いわき時空散走」。2021年にオープンした「自転車文化発信・交流拠点ノレル?(NORERU?)」にてはじまった散走イベントが発展し、春や秋のシーズンにはフェスティバルとして参加者を集めたツアーを開催しています。なぜ散走なのか、いわき市で散走がどのように生かされているのかを、現地レポートとインタビューでお届けします。
いわき時空散走やノレル?(NORERU?)についてはこちらもどうぞ。 https://note.com/noreruiwaki
≪ Part①のお話 ≫
- 今日のサポーター、ユーミンさんと赤井駅の関係
- 赤井焼、凱旋門、お仕置場もコースポイント
- 平窪の超人気店、華正楼さんでランチ&自己紹介
雨雲が抜けて、雲ひとつない晴天となったゴールデンウィーク後半の日曜日。
私たち取材班は、指定されたJR磐越東線の赤井駅前に到着しました。
自転車が並び、カジュアルウェアに身を包んだ人があちこちにいる中、
まずは「いわき時空散走」のコーディネーター寺澤さんと
プロデューサーの陸奥さんとご挨拶。
このお二人や、マップを作るデザイナーさん、イラストレーターさん、
そして地域で活躍されているサポーターの皆さんで構成されたプロジェクトチームで
「いわき時空散走」を推進されています。
おっとそろそろ開始時間。
今回は参加者の皆さんと一緒の散走体験からスタートします。
みんなが集まってまずは寺澤さんによる
「おはようございます!春のいわき時空散走フェスティバルも4日目となりました。今日の赤井・平窪エリアは新しいコースで、これまでじっくりリサーチを進めてきました。今日のサポーターは大森さんです。よろしくお願いしまーす」
という元気な挨拶から、ガイド役であるサポーターの大森さんへバトンタッチ。大森さん、愛称は"ユーミン"で、35年前にここへ引っ越しされてきた、このエリアをよく知る頼もしいサポーターさんです。
参加者の一人ひとりに渡されたのがこのマップ。イラスト付きでとてもわかりやすいこのマップこそが、「いわき時空散走」の象徴です。この日の予定の赤井・平窪エリアを含めてこれまでに5コース=5種のマップが完成。5年間でいわき市内30エリア、30マップを作るのがプロジェクトの目標だそうです。
そろそろ自転車にまたがって出発か、と思っていたら、ここ赤井駅がツアーの最初のポイントで、さっそくユーミンさんから説明が行われます。
「昔は木造の駅だったんですよ、ここ。いつの間にかこんなにきれいになってビックリ!猫が棲んでいたりしてね、夫婦喧嘩の後によく来ていました(笑)」
と、個人的エピソードを盛り込んだお話に思わずみんな笑顔。赤井駅の歴史をたどり、いよいよ自転車で出発!
駅前を出てすぐにストップがかかり、自転車を置いて集まると、
「昔ここに赤井焼という焼き物のお店があったんですよ、知ってました?」
と解説がスタート。このあたりは粘土の質が良くて日用品として使われる赤井焼の生産が盛んだったこと、ここにあった「瀬戸屋」さんが赤井焼最後の店だったという栄枯盛衰を寺澤さんとユーミンさんが資料を見せながら説明。
「ちなみにメルカリで探したら5,000円で売ってましたよ」と陸奥さん。さらに
「昔この用水路に落ちたことがあってね」とユーミンさん。このテンポのいい展開、さすが!
まだはじまって30分程度なのに、私たちもようやくわかってきました「いわき時空散走」の空気感。歴史をテーマにした散走なのでもっと真剣・まじめ・勉強的な雰囲気かと思っていましたが、とてもフランクで誰にもとっつきやすく、説明される内容がおもしろい。サポーターのユーミンさんだけでなく、寺澤さんや陸奥さんとの掛け合いもあり、つい聞き入ってみんなも質問したりツッコミをいれたりと自由。この先も予想外のことがいろいろありそう!
次に止まったのが夏井川の河川敷。なんだろうと思っていたら、ここ「愛谷の堰」から田んぼに続く用水路が張られ、米の栽培に欠かせない水源を確保したという歴史があるそうです。はじまりはなんと江戸時代。昔の人の知恵と労働、水や米を無駄にしない思いがわかるような気がします。しかしここに暮らして通りすぎているだけでは、隠れた歴史に気づきにくいんだろうなあ。
次も「気づかない」スポットで、枯れ木が2本立っているだけにしか見えないけれど、実は歴史的名所。
「ここは赤井凱旋門といって、日露戦争の勝利を記念して建てられた凱旋門。帰還した兵士を歓迎するためのもので、こうした凱旋門は日本に3箇所しか残ってないそうですよ」
という説明に、
「3つのうち1つが赤井にあるってスゴイ」と話が展開し、ついには記念撮影会に。
「普段通っているのに全然知らなかった」という声が目立っていました。
快晴の中を気持ちよくペダルをこいで、またまた夏井川の河川敷に戻ってストップ。河川敷のアスファルトが真新しいのは、令和元年の台風19号の影響で甚大な被害が出て、護岸工事が進んでいるからだそう。数年前の出来事からもいわき市の風景が変化していることがわかります。
さて、夏井川を渡る赤い磐城(いわき)橋、どんないわれがあるのかというと、このあたりに仕置場があったのだとか。
「江戸時代のお仕置きする場所です。ある大強盗がここで処刑され、解剖すると常人の3倍ほどの大きさの肝臓が出てきたという話が残っています」との説明に、
「飲み過ぎだったの?」
「肝硬変じゃない?」
との声が。なんでそんなに大きな肝臓だったのかは謎のままですが、ここには他にもエピソードがあるようで話が尽きない!
そろそろランチの時間です。立ち寄ったのは、地元平窪の超人気店、中華料理の華正楼さん。目移りするたくさんのメニューからめいめいが選び、この日初めて全員がきちんと顔を合わせたので、料理を待つ間に自己紹介。だいたいが顔見知りのメンバーですが、一人単独で初参加となったのが小野さん。自分の住むまちの歴史を知りたいと申し込まれたそうです。
はじめましての場でも、半日一緒に時間を過ごして食事を共にするだけで、すっかり仲間になれた気分。私たち取材班も仕事を忘れて(いや忘れてはいけません)中華をいただき午後に備えました。次はどんなところで、どんな時代の出来事に連れていってもらえるのでしょう?
パッと見てすぐに名所なのだとはわからないけど、
話を聞くほどに「へー」、「知らなかったー」、「なにそれー」とつい反応してしまう
いわき時空散走の前半でした。
後半も濃密なコースをめぐります。どうぞお楽しみに!