Bibli「旧大宮図書館活用プロジェクト」❶

Bibli「旧大宮図書館活用プロジェクト」❶

Bibli「旧大宮図書館活用プロジェクト」❶

2022.07.20 更新

2021年にオープンした複合施設、「Bibli(ビブリ)」。ここは、約50年市民に親しまれた大宮図書館の移転・新設に伴い、残った建物の運営を民間に委託する、さいたま市初の公民連携プロジェクトとして誕生した複合施設です。この委託事業者を選定する公募に手を挙げ、採択に至ったのが、大人も子どもも楽しめる自転車イベント「バイクロア」を主催される松原さんを中心とした4社合同チーム。なぜ「自転車のバイクロア」が図書館の活用に参画したのか、さいたま市の福田さんと、現在ビブリを運営する「バイクロア」の松原さん、「キャンプサイト」の佐々木さんにお話を伺いました。

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「Bibli」旧大宮図書館活用プロジェクト 主要メンバー

株式会社キャンプサイト 佐々木 星さん(写真左)

キャンプサイトは建築設計からキャンプ場の運営まで手がける企画・運営会社。「Bibli」の施設管理、運営にも携わる。

一般社団法人バイクロア 代表 松原 満作さん(写真中央)

さいたまを中心に大人も子どもも楽しめる自転車イベント「バイクロア」を開催。「Bibli」の運営を行うとともに、同施設1階に「バイクロア」初の常設店をオープンした。

さいたま市大宮駅東口まちづくり事務所 福田 翔平さん(写真右)

市役所職員として、プロジェクト初期から携わる。

≪前編のお話≫

  1. 50年以上愛された図書館。解体する!?しない!?
  2. 「自転車のバイクロア」だからこその図書館活用法
  3. 異色の4社合同チームでコンペに参画

さいたま市大宮に、自転車を軸にした施設ができたらしい。
そう聞きつけた私たちは、東京駅から電車で約30分の場所に位置する
東日本の玄関口、大宮駅に降り立ちました。
自転車を軸にした複合施設ってどういうものだろう?
そんな疑問を抱きながら駅からの道を歩いて行くと、
まちの象徴であり、「大宮」の由来でもある
武蔵一宮氷川(むさしいちのみやひかわ)神社の参道が見えてきました。

杉の木立が2km以上続くこの参道沿いに建つのが、今回の目的地「Bibli(ビブリ)」。
元は図書館だったという施設は、外観はもちろん内装にも図書館の名残りが感じられます。
迎えてくださった、企画の発案者である「バイクロア」の松原さん、
建築設計を担当された「キャンプサイト」の佐々木さん、
公募前からプロジェクトに携わる市役所の福田さんにご挨拶して、取材がスタートしました。

Cyclingood
初めて訪れる場所ですが、なんだか懐かしい感覚がします。
佐々木さん

この建物は50年以上図書館として使われていました。老朽化した壁や照明などは一新しましたが、歴史ある建物の構造はあえてそのまま残しているので、懐かしいと感じる方が多いようです。

Cyclingood
50年の歴史を残しているのですね。では、そんな建物が「Bibli」へと生まれ変わった経緯を教えていただけますか?
福田さん
そもそものきっかけは、大宮図書館と区役所が整備・新設された2019年にさかのぼります。図書館が区役所新庁舎内に移転したことで、残った旧大宮図書館をどうするべきか、市民や行政が一体となってまちの将来像を考える、さいたま市主催のパブリックミーティングを開催しました。
Cyclingood
そこではどのような意見が上がったのでしょう。
福田さん
市としては当初、建物の解体も含めて検討していましたが、参加した方々からは存続を希望する声が多く寄せられました。氷川参道の並木道を目の前にした好立地や地域に長く愛されてきた歴史など、建物のもつポテンシャルを再認識したことから、市の代わりに運営していただける民間事業者を公募することになったのです。
Cyclingood
公募にあたって、どのような場所になってほしいなどのイメージはありましたか?
福田さん

やはり長く愛された場所ですから、市民の皆さんの想いや記憶を継承しながら、交流の拠点となりつつ、参道沿いに相応しい静かなにぎわいを演出する。そんな場所になればと期待しました。

Cyclingood
この公募に手を挙げたのが、大人も子どもも楽しめる自転車イベント「バイクロア」を主催される松原さんですね。なぜ、図書館の活用に参画されたのでしょう。
松原さん
私の実家は、さいたま市で3代続く手焼きせんべい屋です。まちに根付いて生活する中で、似たような商業ビルやテナントが増え、どのまちも均一化していく様子を見てきました。その中でも大宮は、まだその土地らしさを残した最後の砦のように感じていたのです。公募を知ったとき、図書館がただの商業ビルになってしまうのは悲しい、「大宮らしさ」を発信する場所にしたいと感じました。
Cyclingood
故郷への想いから企画がはじまったのですね。施設活用は、これまでの「バイクロア」の活動とはまったく異なる展開ではないでしょうか。
松原さん

確かにイベント企画と施設運営では大きく異なりますが、私はさいたまを中心に「バイクロア」を開催し、年齢や性別を問わず多くの人に自転車の楽しみを伝えてきました。そこで強く実感していたのは、自転車には人やまちをつなぎ、交流を生み出す力があるということ。「大宮らしさ」を発信するために、自転車だからこそ、「バイクロア」で培ってきたノウハウとネットワークがあるからこそできることがあると考えました。

Cyclingood
では、具体的にどのような提案をされたのでしょうか。
福田さん
一つは、自転車を使ったまちづくりです。大宮には氷川神社や盆栽ミュージアムといった施設をはじめ、こだわりをもった飲食店や小売店など、魅力的なコンテンツがたくさんあります。これらを自転車でめぐるツアーを企画しました。
Cyclingood
それでは、もう一つは?
松原さん

カーゴバイクを使って、旧大宮図書館のテナントの商品を近隣地域に届けるマイクロデリバリーです。ただ届けるのではなく、その先でコミュニケーションをとりながら旧大宮図書館の存在を伝え、近隣の人々と関係性を築いていく、"現代版三河屋さん"を実現したいと考えました。

Cyclingood
"現代版三河屋さん"!日常の延長の中で大宮の魅力を再発見できる、そんな期待を自転車に込められたのですね。佐々木さんはどのようなきっかけで参画されたのでしょう。
佐々木さん

松原さんが弊社キャンプサイトの代表を大宮に誘って、シェアサイクルでまちを回ったそうです。「こんな魅力的なまちにまた来たい」と感じたことから、「大宮らしさの発信拠点」という方針に共感し、「キャンプサイト」もこの事業に参画することになりました。

松原さん
「キャンプサイト」は建築設計からキャンプ場の運営まで幅広く手掛けている会社なので心強かったです。そこに、ご縁があって大手ゼネコン「戸田建設」とビルメンテナンスの「戸田ビルパートナーズ」が加わり、4社合同チームが誕生しました。
Cyclingood
この4社合同チームが打ち出した「自転車を軸にしたまちづくり」という提案を、市としてはどのように受け止めたのでしょう。
福田さん

まず、大宮を含むさいたま市は、地形が平坦で走りやすく、自転車レーンの整備なども積極的に行っています。自転車を軸にした松原さんチームの提案は、大宮の環境と親和性が高いと感じました。
そして、旧図書館を活用することで市民同士の交流を増やし、まちへの愛着を育てながら観光拠点としても機能する。商業的な施設利用に留まらない企画に、当初から期待が高かったですね。

外部有識者も交えた審査の結果、
活用事業者が松原さんのチームに決定。
リノベーションを終えた旧大宮図書館は、
図書館を意味する外国語から着想した「Bibli」という名称で
2021年秋にオープンしました。
後編では、生まれ変わった「Bibli」の姿と
これからの大宮についてお伝えします!

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