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社会を変える「ハンドバイク」の可能性 1
2015.12.25 更新
「ハンドバイク」とはその名の通り、手でこぐスタイルの自転車。足が不自由な方のリハビリや生活の足として日常的に利用される一方で、2008年の北京パラリンピックから正式種目に採用されるなど、パラスポーツとしての一面をもっています。日本ではあまり馴染みのないハンドバイクですが、世界的に見るととても注目が集まっているのだとか。日常使いにもスポーツとしても、生活をより豊かにしてくれる可能性を大いに秘めているハンドバイクの魅力を探るために、2つのイベントに密着してきました。多くの人に知っていただきたいハンドバイクの素晴らしさ、どうぞ感じてください。
欧米ではパラスポーツとして人気が高いハンドバイク。
ベルリンやニューヨークなどで行われている一般のマラソン大会にはハンドバイク部門が設けられているなど、レースの機会が豊富に用意されています。
競技人口も多く、ベルリンマラソンではハンドバイク競技者は車いすマラソン選手の約5倍だったとか。
欧米には自転車文化が根付いていますし、
ハンドバイクは腕を動かすだけで走行できる仕組みになっているため、
多くの人が挑戦しやすいこと、そしてやはり、
ハンドバイク特有の「気持ちよさ」に人気が高まる理由があるのではないでしょうか。
特にレースタイプの場合、風の抵抗を受けにくい乗車姿勢によって
40km/h程度の速度を出すことができ、マシンと一体となって駆け抜ける爽快感が人々を夢中にさせているのかもしれません。
多くの人々にスポーツを楽しんでもらえる可能性を持つハンドバイクですが、
日本ではまだまだ普及していないのが実状。
一般道でも競技場としても、安心して走れる充分な環境が整っていないために、レースの機会も少なく、認知度もなかなか高まらないようです。
もっと多くの人にハンドバイクの姿を見ていただきたい、
そしてその魅力を感じていただきたい。
そんな思いから、2015年8月に行われた「シマノ鈴鹿ロード」では、
エキシビションを開催しました。
車いすに装着するアダプタータイプ・レースタイプともに
1周2.243kmのショートコース2周を走破します。
コースに向かう途中、列になって移動していたら、
どこからともなく「かっこいい!」という声が。
自転車イベントの参加者でもハンドバイクを初めて見る人が多かったことがよくわかります。
しかしこうして見ると、まるでF1カーのように見えてきて、
みなさんそれぞれこだわりのマシンが本当にかっこいい!
合図とともに、レースタイプ・アダプタータイプが同時にスタート。
8月の太陽が照りつけるコースを思い思いに駆け抜けていきます。
ハンドバイクは少しの上り坂でも負担が大きく、コーナーを曲がるときにテクニックが必要となるため皆さん無我夢中の様子。
レースタイプの選手から順次ゴールを迎え、皆さん初めての大舞台を走り抜いた達成感に満たされた様子でした。
こちらは表彰式の様子です。
1位の奥村さん(写真中央)はハンドバイクキャリア10年以上の大ベテラン。「今日はトップを狙う」と宣言されていた通りの堂々の1位です。
2位の花岡さん(写真左)は、20年間ほど車いすマラソンの選手で活躍され、
2012年のパラリンピックで引退。
ハンドバイクに転向されてからはこの競技でいつか金メダルを取りたいと
日々練習に取り組まれています。
そして3位の田中さん(写真右)は、トライアスロンの選手で、
その種目の一つであるハンドバイクの強化に取り組んでらっしゃるのだそう。
皆さんに花束とメダルが贈呈され、トップアスリートにふさわしい爽やかな
笑顔が印象的でした。
この日は一般社団法人日本パラサイクリング連盟と株式会社テレウス主催による
「テレウスカップ ハンドバイクロードレース大会」の開催日です。
千葉県下総運動公園のサイクルロードを利用したこの大会はこの日で5年目。
主催者のおひとり、株式会社テレウスの木戸さんにお話しを伺いました。
このテレウスカップは、東日本大震災が起こった2011年にハンドバイクユーザーたちを元気づけようという目的ではじめたのです。
木戸さんはハンドバイクの魅力をどのように感じていらっしゃいますか?
車いすは前輪が小さいのでほんの数cmの段差でも大きな衝撃を受け、歩行では気づかないほどの微妙な傾きでも左右のタイヤを回す速さを調整しなくてはならず、車いすでの移動にはストレスが伴いがちです。その点、ハンドバイクは大きな前輪ひとつだけになり直進性が増すので、段差にも傾斜にも強く、これらの問題を一気に解決することができるのです。
さらにスポーツとしての楽しさが付加できることは
障がいをもつ方にとって、大変意味のあることだと思いますが。
身体を動かす機会が増えることによって、上半身の筋肉を鍛えられるなど健康面のメリットがあります。
でもそれよりも、大事なことがあると私は思っています。
障がいを問わず仲間の輪が広がり、ファッションやマシンに凝ってみたりとさまざまな楽しさが生まれます。
こうした日々の張り合いや喜びが、心理的なバリアを無くしていくのではと期待しています。
スポーツとして楽しむことで、心身ともの健康に役立つだけでなく
仲間が増え、夢中になる楽しさが広がり、
社会のバリアを無くしていけるというさまざまなハンドバイクの可能性。
木戸さんのお話しからその気づきを新たにしていたところで
そろそろ試走の時間に。
次回は、実際のレースの様子や参加者の皆さんのお声をお伝えします。
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