三国さんご夫婦の「自転車施策とこれから」❶

三国さんご夫婦の「自転車施策とこれから」❶

三国さんご夫婦の「自転車施策とこれから」❶

2020.01.24 更新

金沢市内の自転車走行環境の改善活動を牽引されてきたことで広く知られている三国さんご夫婦。自転車で走る道路環境と聞くと「自治体や国がするもの」と思いがちですが、その必要性についていち早く声を上げ、地元住民と一緒に一歩ずつ活動したことが市や国を動かし、金沢のまちに具体的な成果を残されました。なぜお2人がこの活動を推進することになったのか、どのように取り組んできたのか、そしてこれからのビジョンについてじっくりとお話を伺いました。

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三国千秋さん、成子さん 地球の友・金沢

1990年環境保護グループ「地球の友・金沢」設立。2002〜2006年『金沢自転車マップ』(地球の友・金沢)、『自転車・歩行者交通安全マップ』(金沢河川国道事務所との協働制作)などを機に金沢市を中心にした自転車利用環境の向上を牽引。

三国千秋さん:北陸大学名誉教授。NPO法人市民環境プロジェクト代表理事、自転車利用環境向上会議全国委員会監事などを兼任。地球の友・金沢代表。

三国成子さん:自転車利用環境向上会議全国委員会会長。2013年環境省「環境に優しい自転車の活用方策検討会」検討委員、土木計画学研究委員会自転車政策小委員会委員、金沢自転車ネットワーク協議会委員などを務める。

≪Part①のお話≫

  1. きっかけは、環境問題への関心。
  2. 「このまちでは自転車に乗らない」その指摘への対応。
  3. 官民がひとつになった住民のためのマップ制作。

「12月上旬の金沢は、雨が降ったり止んだりを繰り返す気候ですよ」と
教えていただいた通り、冷たい雨が時折降っては青空がまた広がって、という不安定な天候の中
Cyclingood取材班は三国さんご夫婦のご自宅へ。
笑顔で迎えられて中に入ると、
木造建築のぬくもりと薪ストーブのあたたかさに瞬間に魅入られました。
「ささ、座って、お茶でも」とはじまったお2人への取材。
自転車環境といえば三国さんご夫婦、と有名ですが、
そのルーツはこのお家が無言で語っているように環境問題への意識だったそうです。

Cyclingood
お2人が自転車施策に取り組むことになった最初のきっかけは何だったのでしょう?
千秋さん

もともとは環境問題への関心でした。1990年にオーストラリアのアンニャ・ライトさんの、マレーシア・ボルネオ島サラワク州での熱帯雨林破壊に関する講演を聞き、その後10年間は熱帯雨林保護の活動に携わってきました。
1997年にドイツのフライブルクを訪問することになり、そこで「交通と環境」という分野に出合いました。このまちは酸性雨の被害によって市内のクルマ移動が規制され、自転車道が確保されており、美しいまち並みを取り戻していたのです。

Cyclingood
そこで環境負荷低減に直結する自転車に着目されるように
なったのですね?
千秋さん

そうです。自転車の利用が拡大することで、二酸化炭素排出量の削減、排気ガス削減、騒音防止、交通事故減少にもつながると考えました。当時の日本は、エコというとゴミ削減やリサイクル活動が主流で、まだ交通環境と結びついていない時代です。
私はその後スイスのバーゼルに赴いて環境政策を調査研究し、NGO「環境と交通」の代表マティアス・ツィンマーマン氏との出会いによってインフラ整備の重要性に気づき、金沢への訪問をお願いしました。

Cyclingood
マティアスさんに金沢市内を視察してもらうことになったのですね。
千秋さん
はい、それが2000年のことです。金沢市内を案内すると、マティアスさんは「このまちでは市民は自転車に乗らない」「潜在的に皆、危険を感じている」とおっしゃいました。そこで「安全で快適に走れる場所でなければ乗る人は増えない」と気づきました。
Cyclingood
それは、そのまちに住んでいると、かえって気づきにくいこと
かもしれません。
成子さん
それからマティアスさんの意見を確認するために、私たちは自転車利用者を対象に調査をすることにしたのです。
Cyclingood
調査といいますと?
成子さん
最も頻繁に、日常的に自転車を利用しているのは高校生です。地元の高校に掛け合って、自転車通学をしている高校生に協力してもらえることになり、加えて市民200名にも賛同いただき、合わせて1,500名に白地図を渡して危険・安全・快適別に色分けしてもらいました。
Cyclingood
それはとてもユニークな試みですね。
成子さん

集まった地図の情報は、市民と高校のボランティア部の生徒たちに集計していただくことになりました。こんなにも危険な箇所があることがわかり、その驚きは集計に関わった人たちも同じだったようです。
さらに長距離通学の生徒ほど危険な場所を危険だと認識してない傾向もわかり、「恐怖に対して心に蓋をして走っている」子どもたちの姿が浮かび上がってきたのです。

Cyclingood
なるほど。毎日走る場所に対して、
危険だと思わないようにしているということですね。
成子さん

そうです。こうして、「金沢自転車マップ」として発行しました。それが、国土交通省金沢河川国道事務所の目に留まり、その後国土交通省金沢河川国道事務所との協働で、最終的に小中学生の通学路などの生活動向をふまえて地区別に4種のマップを発行しました。

Cyclingood
しかしそのような道路の改善は、市民レベルでは実現できないのでは…?
マップが完成した後も、活動を継続されたのでしょうか?
千秋さん

はい。危険な箇所がわかっているのにそのままにはできません。20人以上が「赤」、つまり危険と指摘した場所を中心にピックアップし、実際の道路改善は国、県、市、警察、PTAが一同になって取り組み、「道の点検簿」と名付けて3年以内に改善するという目標を定めました。

Cyclingood
たとえばどのような危険箇所があったのでしょうか?
千秋さん

ガードレールの無い坂道で、歩道がなく、クルマが左側に幅寄せするために自転車と接触しやすい箇所とか、歩道が狭すぎて通学時間帯の信号待ちの際に歩道から子どもがあふれている交差点、視界を妨げている利用者の少ない歩道橋など、自転車走行時に限らない問題点が浮上していました。

Cyclingood
潜在的に皆が困っている場所を発掘し、
スピーディに改善できたことが素晴らしいですね。
千秋さん

金沢市内はご存知の通り、戦火を逃れた古いまち並みが残っています。それだけに道路そのものに手を入れることがとても難しい。道は狭い、広げられない、しかしまだ自転車走行時の「走りにくい」問題は残っているという状況に対し、私たちは新たな活動に取り組むことにしたのです。

地元の人にこそ使ってもらえる
日々の生活に役立つ自転車マップを完成させた後も
止まらないお2人の活動。
第2回では、道路環境の具体的な改善へ進んでいきます!