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2023.07.26 更新
神奈川県の東南部、湘南エリアに位置し、南側は相模湾に面する藤沢市。人気の観光スポット江の島を有し、サイクリングにうってつけの景色と走りやすい平坦な道が続くこの場所を拠点に、田代さんはサイクリングツアーのガイドをするとともに、ガイドの養成を行っています。アテネオリンピック出場という華やかな経歴をもつ元プロアスリートが、なぜこの地でツアーガイドやその養成に取り組むのか、これまでの歩みや現在の取り組みについてお話いただきました。
≪前編のお話≫
- 友人の勧めでロードバイクに熱中
- 埼玉から北海道まで自転車へ
- 約束の2年目でつかんだプロの道
- もう二度と自転車には乗らない!
元プロアスリートでオリンピック出場も果たした人が、
現在サイクリングツアーの企画・運営を行い、
さらに全国各地でツアーガイドの養成や自転車の安全講習を行っている。
そんな話を聞き、Cyclingood取材班はさっそく神奈川県藤沢市へ向かいました。
新横浜駅から在来線で南下し、江ノ電に乗り継ぐこと1時間ほど。
電車は狭い路地を通り、車窓からは時おり海を見ることができます。
人気の観光スポット江の島まで、電車でも自転車でも10分ほどの
好立地にある田代さんの拠点、リンケージサイクリングで
まずは田代さんのアスリート人生を振り返るところから
取材がスタートしました。
いえ、まったく。幼い頃は身体が弱くて、ロードバイクに乗ったのは大学生のときが初めてです。友人の勧めでサイクリング部に入部したところ、速く走れることがおもしろくて一瞬で夢中になりました。それほど厳しい部活ではありませんでしたが、私はのめり込んでいきました。
喘息持ちで身体が丈夫とはいえない自分でも、走り続ければ海のない埼玉から自力で海にたどり着くことができる。そんな自転車の自由さに惹かれました。
在学中に競技大会で優勝したこともあり、自転車が仕事になればと考えました。両親に相談して、「2年で結果を出せなかったら辞める」という約束でプロをめざすことに。10代からプロをめざす人が多い世界ですから、今考えると無謀ですよね。それでもとにかく地道に練習を重ねて、ちょうど2年目でプロ契約することができ、約10年間ブリヂストンの選手として活動しました。
「ツール・ド・フランスをめざそう!」というのがチームの目標でしたからね。武者修行のためにヨーロッパのクラブチームに入って、1年間で120レースに出場した年もあります。その成果か、全日本選手権優勝やアテネオリンピック出場を果たすことができました。
広報活動をする傍ら、当時新しくできたブリヂストンのショールーム運営の担当になりました。展示と合わせて初心者向けの試乗会を行っていたところ、お客さんが本当に楽しそうで。初めてスポーツバイクに乗れた喜びやワクワク感。大人が童心にかえってはしゃぐ表情を見ていたら、勝ち負けとは無縁の純粋な自転車の魅力がふとよみがえってきたのです。
そうした気持ちの変化と同時に、自転車を取り巻く課題も見えるようになってきました。自転車って基本的に、ほとんど試乗しないまま買うことが多いんですよ。クルマは免許を取る際に交通ルールを覚え、販売店で試乗もできますが、自転車は交通ルールも知らないまま買う人が圧倒的に多く、試乗できる販売店は稀です。
そうですね。ただ「作る・売る」だけでなく、初心者が安心して乗れる環境作りや、乗り方を学べる場の必要性を痛感しました。そこで、2014年に独立して、初心者向けのサイクリングツアーをはじめました。プロになったときも同じなのですが、「まずやってみて、ダメならそのとき考えよう」という気持ちで。実際、それで結構苦労もしたのですが(笑)。
自転車には二度と乗らない。
固かったはずの決意が、自転車を楽しむ人の表情で徐々にほどけ、
また乗りたい気持ちがうずうずと湧き上がってきた田代さん。
後編では、アスリートからサラリーマンを経て、
田代さんの新たなステージがはじまります!