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07
愛媛県の「自転車ツーキニストモニター事業」1
2016.04.18 更新
CO2排出量削減のため、さまざまな地球温暖化防止対策に取り組んでいる愛媛県。
県内の事業所に向けた啓発活動をはじめ、再生可能エネルギーの導入、バイオ燃料の利用拡大などに積極的に取り組む中で、この度行われたのが「自転車ツーキニストモニター事業」です。愛媛県内の事業所に呼びかけてバイクやクルマから自転車通勤への転換を促し、CO2排出量削減をめざしたこの事業。
環境と健康づくりのための自転車通勤という新たなアプローチについておたずねしてきました。
今回、愛媛県の環境局主導で行われた「自転車ツーキニストモニター事業」とは、
愛媛県内の事業所にモニター参加を呼びかけ、
約2カ月半ほどの期間中に自転車通勤を行ってもらい、健康づくりへの効果とともに
CO2削減効果を計る取り組みです。
そう、健康面だけでなく、環境面への効果に着目されているのが
これまでの自転車通勤モニターとの違い。
なぜ環境なのか。そして自転車なのか。
その背景や思いをお聞きするため、まずは愛媛県庁を訪ねました。
迎えてくださったのは、
県民環境部 環境局 環境政策課の
中原さん、松浦さん、吉田さん、
そして企画振興部 総合政策課
自転車新文化推進室の坂本さん。(写真右から)
環境と自転車を結びつけた県を挙げての取り組みであることが
このメンバーからも伺えます。
それではさっそく、自転車ツーキニストモニター事業について
お聞きしてみましょう。
背景からお聞かせいただけますか?
さまざまな活動に取り組んでいます。
さらに県内のCO2排出量が増加傾向にあるという現状をふまえ、
環境にも健康にもいい自転車で何かできないか、と考えたのです。
そんなとき、広島県の尾道市さんが
住民の健康づくりに自転車を活用されているという話を知りまして
「ぜひうちでも」とお声がけさせていただきました。
これまでにない取り組みですね。
つまり、あらゆる面でCO2削減に取り組まなければならない状況です。さまざまな普及啓発活動に取り組んでいる中で
どうすれば住民の方の具体的なアクションに結びつけられるかと考えた結果、「通勤」というキーワードが浮かんできたのです。
どのくらいのCO2排出量の違いがあるのでしょう?
そのように数値化されると、クルマで通勤している人が自転車に変えるだけでどれだけ多くのCO2排出削減に貢献できるかがリアルに感じられますね。
今回の自転車ツーキニストモニター事業でも、距離や消費カロリーの他CO2排出量もデータ化して継続のモチベーションにつながるように配慮しました。
あと、連合会のメーリングリストによる告知や愛媛県内の経済誌への出稿もしましたね。
結果、第1期(2015年 9月7日~11月20日)、第2期(2015年12月7日~2016年2月19日)合わせて24事業所92名の応募があり、定員を超えるほどの結果に。
最終的にはくじ引きでモニターを決めましたが
この予想以上の反応は私たちにとっても励みになりました。
参加者DATA

モニター期間中はサポートメールを配信して、自転車通勤のノウハウ紹介や質問への対応も行いました。これはとても好評でしたね。
あとは整備が進む県内おすすめのサイクリングコースを紹介するなど通勤だけでない自転車の楽しみ方の提案も行いました。
愛媛県が推進している活動を住民の方に知っていただく良い機会ですから。
現在2期目の中村知事が、5年前に自転車メーカーのGIANT社の会長にお会いし、通勤・通学といった移動手段だけでない自転車の魅力に強く惹かれたのがはじまりです。
「健康」「生きがい」「友情」を育む自転車の価値を「自転車新文化」として、愛媛県から発信していこうと。
幸い、愛媛県はしまなみ海道のサイクリングロードによって国内外からの誘客が見込めるという強みがあります。
これを生かすとともに、日本最古の道後温泉、西日本一高い石鎚山、日本一細長い佐田岬などの海・山・川を堪能できる優れた環境を多くの方に感じていただきたい。過疎化が進む南予地方を逆転の発想でサイクリングロードに生かすなど、愛媛県だからできる地の利を生かした「サイクリングパラダイス愛媛」を創り上げていきたいと考えています。
さらに県立の高校生全員にヘルメットを配布するなど、安全に走行できるための住民サポートにも取り組んでいます。
高校生が軽快車でヘルメットをきちんとかぶっている姿を目にすることが増え、私立や国立高校へも波及し、今や社会人にも着用者が目立ちはじめています。県内36事業所がヘルメット着用モデル事業所に指定されるなど、好影響がどんどん広がっています。
「着用しなければならない」ではなく、着用することが当たり前になっていくことこそ本来の「自転車文化」だと思います。
サイクリストがどんどん愛媛県を訪れ、ルールを守って皆がゆずりあいながら自転車を楽しむ姿を見る機会が増えていくことで、地元住民へのさらなる好影響が期待されます。
愛媛県は四国八十八箇所によるおもてなしの文化が根づいていますから、例えばお年寄りの方がサイクリストの方と交流する場が増えるなど、あらゆる意味での活性化につなげていきたいですね。
予想以上の反響の中執り行われた自転車ツーキニストモニター事業。
県を挙げての「自転車新文化の創造」という大きなプロジェクトを実現するために、
実に細やかに、丁寧に、地道な活動を重ねてこられているかがよくわかるインタビューでした。
ここからCyclingood取材班は、モニターとして参加された事業所さんへ。
皆さん自転車通勤でどのような効果を感じられたのか、次回へ続きます。

モニター期間の前後に体重、体脂肪率、握力、椅子立ち上がりテスト(CS30:30秒で椅子の立ち上がりが何回できるかを測定するテスト)の各種測定と血液検査を行い、変化を確認しました。特に目立つのは、椅子の立ち上がり能力と善玉コレステロールの改善率です。わずか2カ月半ほどでの下半身の筋力がアップし、血液もサラサラになっていることから、習慣的な自転車運動が健康づくりに直結しやすいと考えられます。
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