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2019.04.19 更新
伊豆半島西海岸の南部に位置する松崎町は、西に駿河湾を望み、北・東・南の三方を天城山系に囲まれた小さなまちです。海の観光が中心だったこのまちで今、山の新たな観光としてマウンテンバイクによるトレイルツアーを提供し、年中観光客が訪れるようにまで変化を遂げたその仕掛け人が、(株)BASE TRES代表の松本さん。世界を旅してきたからこそ気づいた松崎町の魅力、おもしろさ。最初は単身で、次第に仲間を増やし、地元の人とも積極的に関わりながら「ここならでは」の楽しさを発信されています。松本さんのここにたどり着くまでの経緯と現在について、お話をお聞きしました。
2017年「株式会社BASE TRES」を設立。2018年からは宿泊施設の「LODGE MONDO -聞土-」をオープンし、観光客の誘致だけでなく地元住民や移住者の雇用など、松崎町をはじめとする西伊豆エリアの活性化を支えている。

≪Part①のお話≫
- 束縛されるのが嫌いで、幼稚園中退。
- 両親から聞いた世界の姿をこの目で確かめたくて。
- 調理師免許を取るために、松崎町に住み込み。
- 1200年前の暮らしの道。古道に魅せられて。
西伊豆のマウンテンバイクによるトレイルツアーが話題になっているらしい。
しかもそれを提供されているのが、10年前に西伊豆に移住してきた松本さんという人らしい。
という話を聞きつけ、Cyclingoodの取材班が西伊豆の松崎町に伺ったのは2019年の3月某日。
晴天の中にそびえる美しい富士山に目を奪われつつ、
海沿いの道をひたすらクルマで南下しました。
伺ったのは、松本さんたちが2018年にオープンした「LODGE MONDO -聞土-」。
広々としたリビングに通され、温かいコーヒーをいただきつつ、
まずは松本さんがここにたどり着いた経緯からおたずねしました。
世界を旅していらっしゃったそうですね。
ええ、子どもの頃から束縛されるのが嫌いで、幼稚園は中退、小学校・中学校もまともに通っていませんでした。
初めて一人旅に出たのが中学1年生のときで、祖母のいる熊本まで時刻表を読み解いて青春18きっぷで電車を乗り継いで行きました。
僕の両親が旅好きなこともあり、幼少時代から旅の話をよく聞かされていました。
ヒマラヤやネパールの美しい風景から、レバノンやシリアの情勢まで。
子どもの僕にとっては両親から聞く世界の話は絵本のように記憶に刻まれ、旅することが当たり前になっていました。
16歳になってすぐバイクの免許を取り、日本一周をめざしました。
それはすごいエピソードが飛び出しそうです。
日本じゃないなと思い、17歳で単身ネパールへ飛びました。
1年以上日本に帰らないこともありましたね。
南米から戻ってきたのは25歳のときでした。もう日本に住むのは止めよう、世界に出ようと決めていました。
日本人が海外で永住権をとるためにどうすればいいかを調べ、調理師免許を取ることにしたのです。これさえあればフランスやスペインなどの和食店で働ける、仕事ができると思って。
そうです。
たまたま西伊豆の堂ヶ島に来て、旅館での板前仕事を見つけました。
住み込みで働けるのも好都合でした。
調理場に入って働いているうちに、地元のご老人たちと話す機会が増えて、かつて漁師たちが山に入って炭焼きをしていたことを知りました。
西伊豆はご覧の通り、海のイメージが強いまちです。「こんな海辺に山道があるのか」と驚き、どんな姿か見てみたいと単純な好奇心で山に入ってみることにしたのです。
といっても、もう使われていない山道だったのですよね?
その通りです。
樹木が倒れ、草が生い茂るまさに壊れた道、廃道でした。
しかしよくよく見ると住民に親しまれてきた暮らしの道であり、1200年前からある古道だとわかりました。
驚いたのは、少し掘ってみると土の中から300年前の年号が刻まれた馬頭観音があらわれたんです。この道はおもしろい。ヒマラヤにもアンデスにもこんな風景はなかったと瞬間で魅了されました。
湧いてきたのでしょうか?
ええ。ヒマラヤのトレイルのような楽しみ方ができ、近くに海があり、
温泉も食べ物もある独特の風土がこの西伊豆エリアにはあります。
海外のどこにも引けをとらず、おもしろいことができると直感し、
まずはこの山の整備に取り掛かろうと決めました。
もちろんそうです。「気づいたやつがやるしかない」という気持ちでいっぱいでした。とはいえまだ調理師の仕事をしている身です。
休日に一人で道具をかついで山に入り、こつこつと古道の整備をしていました。古道の中に染み付いた人の暮らしを感じるのが楽しかったですね。
単身で山に入り、整備に取り組んでいくこの行動力。
松本さんの迷いのなさが、
この後多くの人を巻き込んでいきます。
気になる続きは第2回へ。
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