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2018.09.14 更新
デンマークの自転車教育を参考に、独自に開発された「自転車安全教育プログラム」を、子どもから大人までさまざまな
対象に提供されている藤本さん。過去3年間の実績だけで、延べ9,440人にもおよぶ方々に自転車を安全に利用する
ための指導を行われています。そのこだわりは「自転車のルールを守りましょう」ではなく、
その地域特有の道路状況を確認し、「どうすれば安全に走行できるか」を具体的に解説されているところにあります。
今回はその指導モットーとともに、自転車を安全に、そして安心して乗るためのポイントをお話いただきます。
≪前編のお話≫
- 藤本さんが自転車安全教育の指導者になった理由。
- ヨーロッパと日本の道路状況の違い。
- 地図をまとめ、写真を撮りに。藤本さん独自の教育スタイル。
- 日本のどの場所でも多発している自転車事故とは?
自転車は原則、車道の左側を走行すること、
音楽を聞きながら・スマホを見ながらの「ながら」走行は禁止されていること、
2台以上で並走してはいけないことを、皆さんはご存知でしょうか。
「自転車安全利用五則」にまとめられたこれらの自転車ルール、
いったいなぜこのような走行をしなければいけないのかまで
理解している人は少ないかもしれません。
そこで今回は、関西を中心に子どもから大人までを対象に
「自転車安全教育プログラム」の提供と指導活動をされている藤本さんに
安全に走行するための意識や注意点を教えていただきました。
藤本さんのお話から、「自転車安全利用五則」がもつ意味が見えてきますよ。
自転車安全教育を実施されていますが、
なぜこのような活動に取り組まれることになったのでしょうか。
子どもの頃から自転車に親しんできたこともあり、
まずは自転車を社会の嫌われ者にされたくない、
という思いがありました。
それとともに自転車がもつ可能性を、
もっと多くの人に正しく知ってもらいたい
と感じたことが強い動機になっています。
「啓発」「教育」「取締」の
さらなる向上が必要だと痛感していました。
特に「教育」については、ルールを伝える以上に
「なぜそうしなければいけないのか」ということの
理解が不足しているように感じていました。
私なりに感じる課題が浮き彫りになりました。
さまざまな指導者資格を自ら取得し、5年前から本格的な
自転車安全教育プログラムの提供を行っています。
ヨーロッパでは、日本のように車道と歩道を分断せずにクルマが
人や自転車に対して配慮しながら走るような道路も整備されつつあり、
かつ共存する文化が育まれてきています。
一方、日本ではクルマを優先した道路環境が目立つため
自転車などの軽車両が「どこを走っていいかわからない」ということになってしまっています。
道路を移動するケースも増えています。
人、軽車両、バイク、クルマそれぞれが互いに思いやり
上手くシェアできる環境をつくることがこれからの社会に必要だと考えています。
これまで行ってきた自転車安全教育で、最も多いのが中学生ですが
子どもたち自身がいかに「自分のこととして受け止められるか」に重点をおいてプログラムを組んでいます。
指導する学校が決まったら、まずはその校区で発生した自転車事故の状況を警察のホームページなどから情報収集します。そして、その場所に足を運んで写真を撮ったり、地図を整理してビジュアル化したスライドを作成しています。
話を進めるうちにざわめきが起こり、しっかりと見て理解してくれているのが手に取るようにわかりますよ。
もちろん、小さなお子さんには保護者の方の付き添いが必須です。
中学生と同様に校区の写真を多用して、どこに注意すべきかが
伝わるようシンプルにまとめてお話しています。
現在多い自転車事故とその注意点について教えていただきたいのですが、どのような状況なのでしょう?
それはですね、どの地域でも自転車事故が多発している場所は同じで、この状況はもう何年も変わっていません。
つまり、現在起こっている多くのケースは、
交差点での出会い頭なのです。
ルールを教えるのではなく、
どのような場所でどのような注意が必要なのかを実感してもらい、
行動につなげることが藤本さんの指導モットー。
そのため指導を行う学校ごとに、まさにオーダーメードのプログラムを作成し、
一人ひとりの理解につなげていらっしゃいます。
後編では、多発している
交差点での出会い頭事故のケースと自転車走行時の注意点、
さらにはあるべき理想の姿についてお話いただきます。
「安心は、安全から」とお話される藤本さんの指導を、ぜひ体験してください。