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2016.12.22 更新
世界中のサイクリストの注目を集めている、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」。
今治市で長年にわたり自転車によるスローサイクリングを提案し、地元の住民に理解と協力を自らかけあって
「自転車のまち」を作り上げてきたのがシクロツーリズムしまなみの代表である山本さんです。
さまざまな事業に取り組まれている中、今回実施されたのは地元住民を対象とした健康増進プログラム。
観光客ではなく地域の方に自転車を、というその活動の背景や目的についてお話しをうかがいました。

今にも雨が降り出しそうな12月上旬の日曜日。
この日は山本さんたちシクロツーリズムしまなみさんが
3カ月にわたって取り組んできた
自転車モニターによる健康増進プログラムの最終日ということで
Cyclingood取材班は今治市にある「なみかた海の交流センター」を訪問しました。
瀬戸内海が目の前にひろがるこの施設は、シクロツーリズムしまなみさんの拠点のひとつ。
天気が良ければもっと素晴らしい景色を見られただろうに
と空を見上げていると、代表の山本さんが笑顔で迎えてくださいました。
シクロツーリズムしまなみさんはこれまで、自転車を通じた地域の活性化をめざし、
観光客として訪れるサイクリストの受け入れ環境の整備や
住民と観光客の交流を推進する施策などさまざまな活動を行っていらっしゃいます。
そして今回は、地元の住民を対象に、自転車を活用した健康づくりのプログラムを実践。
その経緯について、まずは山本さんにお話をうかがいました。
自転車による地域活性化に取り組んでいらっしゃったのですね?
今では世界的にも注目されるほどの観光資源となっていますが、
開通当時のレンタサイクル貸し出し数は年間6万台、
6年後の2005年では2万台程度という状態で
今治市は最初から自転車で盛り上がっている町ではありませんでした。
いったのでしょうか。
この頃にサイクルツーリズム、つまり自転車観光という考え方が
注目されてきました。同時に自転車で町おこしをする動きも活発化していき、私たちも2005年から「自転車モデルコースづくり事業」に
取り組むことになったのです。
どのような内容なのですか?
私たちが特に注力したのは地域資源を生かした住民参画型の町づくりです。この地域が抱える課題を、地元の人とサイクリストとの交流によって解決していくというゴールを描いていました。
傾きがちですが、地元の人との交流に重きをおかれたのですね。
それぞれ1年間かけて地元の人との座談会を行いました。
どの島でも20~30人ほど集まってくださり、地図を広げてどんなコースが魅力的か、どんなもてなしができるかをそれは熱く話し合いましたね。
とても根気のいることだと感じます。
その結果、町の課題解決につながると。
都会からこのしまなみに興味をもってさまざまな世代の方が訪問してくださっている。この双方をつなげていくことで「交流・観光・振興」につながるのではと考えたのです。その発展形が2008年に立ち上げた「スローサイクリング協議会」です。
暮らしにふれてもらい、今治ならではの良さを心と身体で感じてもらうことをコンセプトにした自転車旅を提供するために、
これまで培ってきた島の人々とのネットワークを生かした組織をつくりました。
たとえば観光客の人とお話しをしてもらったり、
「サイクルオアシス」として軒下やトイレを提供してもらったり...。
もちろん住民の方には生活がありますから、無理をされない程度に
こちらでマネジメントをして、地に足のついた「交流」に結びつけてきました。
このくるくると変化する今治の景色に加え、働いている人が手を止めて
声をかけてくれるというちょっとした交流が「楽しさ」として残るのだと思います。
そういえば、「脇道にそれて、いただいたみかんが忘れられない」と言われたこともありますね。
それに、こうした交流は住民の方にとってもプラスに働くことが多いんですよ。
もっと今治を良くしていきたいと「町」を考えるきっかけにもなっているようです。
2010年頃からはしまなみ海道を訪れる観光客が増えたこともあり、
「自分たちがこの町の発展を支えている」という自負心にも
つながっているのではないかと思いますね。
たくさんのサイクリストがこの町にやってこられました。
そのときにある70代の男性が私に話してくれたんです。
「僕らのおかげで来てくれてるんや」って。
本当にその通り。私にとって忘れられない言葉です。
今回は住民向けの健康増進プログラムを実施されました。
これはどのような背景があったのですか?
自転車が町に、自分にメリットのあるものだという理解が浸透してきたこと、そして住民の皆さんの中に自転車に対する関心が高まってきていることを肌で感じていました。
つい先日も、いちご農園のおかあさんから「自転車買ったの!」と
打ち明けられましたからね。
ああきっとみんな、自転車に乗りたくてうずうずしているんだなと。
そういう時期にきているんだなと思い、スポーツバイク未経験者を対象にした健康増進のモニター事業を行うことにしたのです。
午後からはモニターさんが集まり、今治市内の施設を借りて
体力測定が行われる予定です。
長い時間をかけてこの町で育まれてきた「自転車っていいなあ」という
住民の皆さんの思いが実際に乗ってみてどのように変化していったのか。
そして気になる体力はこの3カ月間の自転車習慣で向上したのか。
後編で皆さんの声をお届けします。
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