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2022.11.02 更新
≪Part③のお話≫
- 自転車にそっくり?足こぎカヤック
- 移動しては釣り、また移動。小回りの良さが魅力
- 自然と一体になる、西伊豆×人力ならではの体験
E-MTBでのトレイル初体験の興奮も冷めやらぬまま、取材班と松本さんは松崎港へ。山から海へあっという間に景色が変わり、西伊豆ならではの距離の近さを改めて実感します。港に到着すると、サンダルと短パンに履き替えて、これまた初体験の『足こぎカヤック』に乗り込みました。
カヤックといえばパドルを使った手こぎタイプをイメージされる方が多いかもしれません。なぜ足こぎなのかと松本さんに伺うと、「左右順番にペダルを踏み込むだけで、腕よりも疲れにくく操作がかんたんです。両手がフリーになるというメリットもあります」とのこと。その説明の通り、自転車のペダリングと似てリズミカルに足を動かすだけでどんどん進みます。舵取りは後方座席付近のレバーで行い、方向転換もスムーズ。
「ひとまず堤防の外側まで出ましょう」との声に従い、昼過ぎの太陽がまぶしく反射する海面を眺めながら、しばらくは足こぎに集中します。カヤックは想像以上に海面に近く、手を伸ばせば水に触れられるほど。エンジン音がしないため、カヤックが立てる波の音が心地良く響き、潮風が濡れた手を乾かしていきます。振り返ってみるとあっという間に港から離れて沖まで出ていました。さっきまで夢中で走っていた山も、遥かに眺めることができます。
沖を進みながら、魚群探知機を確認してポイントを決定。ルアーを海底まで落としたら、ゆっくりと巻き上げます。アタリがあるまでは、このくり返し。風の動きや波の音、潮の香りと常に五感が刺激され、飽きることがありません。
アタリが来なければ、また少し移動してポイントを探します。この小回りの良さもカヤックならではの魅力。風が出て波が少し高くなるとカヤックも大きく揺られ、太陽が陰ると海の色も濃紺に。アタリを待ちながら、刻一刻と変わっていく自然に身を任せます。海の上では目の前の波や風を感じながら、人の力では制御できない自然の中でただ待つだけです。そうして気がつけば、沖に出てから1時間以上が経っていました。
「思ったよりも疲れないものでしょう。体力に自信がない人でも子どもでも、こうして沖に出られますからね」と笑顔の松本さん。
この日は残念ながら釣果ゼロでしたが、春にはマダイやイサキ、夏から秋にかけてはブリやカンパチが釣れるのだそう。いつかリベンジしなくてはと思いつつ、今回のところは港に帰ることに。
トレイルを楽しんだ山と海とをひとつの視界に収めながら、港へと向かいます。「山が豊かになれば、川からこの海へと栄養分が運ばれ、プランクトンが増えて、それを食べる魚が増えます。こうした食物連鎖によって、生態系は豊かになっていくでしょう」と松本さん。さらに、ロッジ・モンドでは木の壁やインテリアが山の温もりを伝え、お風呂を温めるのも、獲った魚を焼くのもまた、山の木々を使った薪の力です。「こうしてみると、自然には何一つ無駄がないと教えられます。資源を無駄なく使い、自然に還元し、そしてまた自然から資源をいただいて暮らしていく。『西伊豆をまわす』とは、自然に倣い、人も自然の大きな輪の中に入っていく、そんな循環です」と話されていました。
山と海、2つのフィールドで松本さんが提供してくださったのは、なんと言っても人力のモビリティが生み出す自然との一体感。山ではタイヤが枯れ葉や枯れ枝を踏みしめるかすかな音まで聞こえ、海では波を身体に感じながら自ら舵を切って進むことができます。自然の音を遮らず、身体に馴染むE-MTBやカヤックだからこそ、小さな音にも敏感になり、雲や風のわずかな動きを感じることができる、自然に溶け込んでいく感覚を得られます。半日足らずの滞在でしたが、2つのフィールドを体験したことで、私たちも西伊豆の自然の一部になれた、そんな気がしました。
今回の体験では、実際に、海に山に溶け込むアクティビティによって、
自然の豊かさや多様性を肌で感じることができました。
この湧き上がる楽しさ。ずっといたくなる心地よさ。
まずは自分の心が動くことから、
自然との向き合い方が変わっていくような気がします。
「人と自然の共生」にはいろいろな方法がありますが、
松本さんが大切にしている「まわす/循環する」サイクルも、
まさに"人のチカラ"によって動き出すもの。
この大きな輪の中にいる感覚を、
ぜひ皆さんも西伊豆で味わってみてください。
松本さん、ありがとうございました。