池永さんの「幸せに生きるための“人力”」❷

池永さんの「幸せに生きるための“人力”」❷

池永さんの「幸せに生きるための“人力”」❷

2019.02.06 更新

こころもからだも健康になることはとても大切なことですが、そもそも人は健康になるために生きているのではなく、
健康の先にある「幸せ」を求めているのだと思います。現代を生きる日本人は「個」に根ざした多様な価値観をもち、
それぞれが描く「幸せ」のあり方も三者三様。では、幸せに生きるというゴールに向かって健やかな心身が生み出す
ものとは何だろう?と考え、Cyclingoodが出したのは「知性」「感性」「社会性」でした。この考えについて
池永所長にインタビュー。健康と幸せの間にある「人力」の必要性について、お話をお聞きしました。

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池永 寛明 大阪ガス株式会社 エネルギー・文化研究所(CEL)所長
1982年大阪ガス入社。人事労務、業務用・産業用エネルギー部門で中期事業計画、エネルギーのマーケティング、国内新規エネルギー事業開発に従事。2008年4月に日本ガス協会企画部長に出向、2011年4月に大阪ガスに帰社後の北東部エネルギー営業部長では東日本大震災後のエネルギー・レジリエンス対応、近畿圏部長としてまちづくり・ソーシャルデザインを通じた地域との共創活動を行った後、2016年4月より現職。

≪後編のお話≫

  1. 日本が得意な洗練された感性によるモノづくり。
  2. 想像力につながる感性は日々磨かれる。
  3. デジタル・ネイティブとそれ以上の世代の間にある「断層」。
  4. 幸せに生きるためのヒント。
Cyclingood
では池永さん、次に「感性」についておたずねします。
先ほども自転車は感性が育まれるツールだとお話いただきました。
池永さん

ええ。景色をとらえられる適度なスピードによる視覚、変化する匂いや音を敏感に感じ取る嗅覚と聴覚など、自転車を走らせる時間は、感性が磨かれる機会になると言えます。

そもそも感性とは、物ごとを心に深く感じ取る動き、外からの刺激を受け止める感覚的能力です。日本人の感性は非常に高く、モノづくりや芸術、文化において独自の洗練された感性を発揮してきました。

Cyclingood
そうなのですね。
池永さん
ところがこの日本的感性が低下してきていると私は危惧しています。
では日本的感性とは何か。それは相手を想像することを起点とした発想やモノづくりにあります。
Cyclingood
たとえばどういうことでしょう?
池永さん
ペットボトルのデザインひとつ、海外品と日本製のを比べてみれば明らかです。 日本人は使う人を綿密にイメージして機能美を完成させるのが得意です。 海外で生まれたものであれば、日本的なものへと「翻訳」するチカラに優れているため、あらゆる海外品が日本的に磨かれ、洗練され、自然な流れで受け入れられていったのです。 ところが最近の潮流を見ていると、想像力も翻訳力にも欠けたものがそのまま日本に流れていると残念に感じています。

Cyclingood
では、感性を磨くにはどうしたらいいのでしょうか。
池永さん
視・聴・嗅・味・触の五感は、毎日毎日無意識に繰り返して
刷り込まれていくものです。突然身に付くわけではない。
日々の生活の中で見るもの、味わうもの、触れるものを心を澄ませて受け止めることで五感は磨かれていきます。
Cyclingood
その五感によって感性が高まり、それが先ほどのモノづくりの
例にあった想像力にもつながっていく気がします。
池永さん
相手を思う気持ちという、すべての関係づくりに関わる
想像力をふくらませることで、仕事も人間関係にも
ゆとりを生み出すかもしれません。
この心のゆとりこそ、現代人が求めているものですね。

Cyclingood
では次に「社会性」についてですが、
自転車は移動範囲を広げることで、あらゆる関わりをつくる、
つなげるという特長があると思っています。
池永さん
それはもう間違いのない自転車の効果です。
人との関わりによっていろいろな自分の居場所をもつことは人生における充足感や幸福感につながっていきます。
しかしその居場所が、同世代の人々、自分の価値観に合う人に限定していては、進歩は生まれません。
Cyclingood
年齢が近く、同じ趣味趣向を持つ者同士のコミュニティにだけ
所属していても発展性がないと。
池永さん
ええ、そうです。その背景には、現在の日本の人口構造があります。
日本の人口を100人とした場合、高齢者は27人、子どもは13人となり、世代間によるデジタルスキルの差が大きく開いてきています。
これも先ほどの情報革命による影響のひとつですね。
Cyclingood
今の子どもは当たり前にスマートフォンやパソコンを
駆使できますからね。
池永さん

子どもはおろか、20~30代を中心としたデジタルネイティブ世代と、
それ以上の世代の間に「断層」が生まれています。

この断層とは、世界観や感性、仕事観、思考法、行動法などにおける大きなギャップです。

Cyclingood
つまり、世代間であらゆることに対する
考え方やアプローチが異なっているということですね?
池永さん
はい。この溝を埋める方法はただひとつ、「対話」しかありません。
同年代や同じ価値観の者同士で集まるのではなく、
あらゆる世代、性別、職業、人種が集い、対話できる場にいることで
それぞれの違いを理解し、認め合うきっかけになり、
それが個々の強みを発揮できることにつながっていきます。

Cyclingood
そういうコミュニティに属することで、視点が増えて考え方が広がったり、知識を学んだりと、さまざまな学びがあるように感じます。
そしてその人、世代ならではの
何らかの強みが浮き立ってくる気もします。
池永さん

そうでしょう。どれほどテクノロジーが進化しても、リアルな場と体験は人間が健全に生きる上で絶対に切り離せません。

考えるチカラ、感じるチカラ、人とつながり協働するチカラを身に付けることは、その人の人生を豊かにします。

そしてその中で「分(ぶん)」、つまり自分の本質やなすべき役割をしっかりと自覚し、家族やコミュニティの中で何を果たせるのかを考え、行動することが幸せに生きるヒントになると私は考えています。

「感性」は、毎日毎日自然と刷り込まれていくものである。
「社会性」は、あらゆる人との対話によって進歩していくものである。
この池永さんのお話は、漠然としがちな感性と社会性の
あるべき姿をくっきりと浮き立たせ、
本質的な価値を感じることができました。
「知性」「感性」「社会性」という人力を、
自転車が育んでいく可能性は大いにあります。
スマホを置いて自転車で寄り道をしながら自分の感覚を澄ませ、
新しい人との関係性をオープンにしていく。
そんな日々を大切にすることが、
一人ひとりの幸せにつながっていくと容易に想像できます。
池永さん、有意義なお話ありがとうございました。