藤本さんの「自転車安全教育プログラム」❷

藤本さんの「自転車安全教育プログラム」❷

藤本さんの「自転車安全教育プログラム」❷

2018.09.21 更新

デンマークの自転車教育を参考に、独自に開発された「自転車安全教育プログラム」を、子どもから大人までさまざまな
対象に提供されている藤本さん。過去3年間の実績だけで、延べ9,440人にもおよぶ方々に自転車を安全に利用する
ための指導を行われています。そのこだわりは「自転車のルールを守りましょう」ではなく、
その地域特有の道路状況を確認し、「どうすれば安全に走行できるか」を具体的に解説されているところにあります。
今回はその指導モットーとともに、自転車を安全に、そして安心して乗るためのポイントをお話いただきます。

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藤本 典昭 エフ・デザイン代表/NPO自転車活用推進研究会 理事
大阪府出身。エフ・デザイン代表。機械工学を専攻した後、長年に渡りメーカーで家電製品の研究開発に従事。現在、自治体の自転車関連委員を務める一方、市民、学生、子ども向けに年齢層に応じた「自転車安全教育プログラム」の開発と講師を務める。また、「まちづくり」「健康」「子供の自立」といった分野への「自転車」の活用を追求している。市民自転車学校プロジェクト(CCSP)認定インストラクター。

≪後編のお話≫

  1. 交差点での出会い頭、その状況。
  2. 主な要因は「右側走行」と「注意力低下」。
  3. 自分の存在に気づかせる働きかけも大切。
  4. あえて「守らない」。その新たな試み。
Cyclingood
どの地域でも多発しているのが、交差点での出会い頭とのことですが
その状況について詳しく教えていただけますか。
藤本さん
ではこちらをご覧ください。これは京都の双ヶ丘中学校で実際に使ったスライドです。
このような町並みは、どの地域でも見られる光景ですよね。

Cyclingood
はい、よく見る町並みです。
藤本さん
このような場所で自転車事故が起こる一番の理由として挙げられるのは自転車が車道の左側通行をしていないことにあります。
Cyclingood
それはどういうことなのでしょう?
藤本さん
ではこちらのスライドでご説明しましょう。

Cyclingood
あ、右側通行をしている方が、クルマと接触するまでの時間が
短く、事故につながっているのですね。
藤本さん
そう、自転車がなぜ、車道の左側を走行しなければいけないのかが
この事例でもよくわかりますね。
クルマに向かって逆走する右側通行では、角から出てくるクルマに気づきにくく、角に飛び出た瞬間にぶつかってしまう、ということも少なくありません。
一方、左側通行では視界が広がるため、クルマの有無に気づきやすく
回避しやすいのです。
Cyclingood
左側通行以外にもどんな注意が必要でしょうか。
藤本さん
注意力の低下ですね。
注意を妨げる第一は、ながら走行。
スマホを見ながら、音楽を聞きながらの走行は意識が散漫になり、
周囲の環境変化に気づきにくくなります。
さらに「気の緩み」と「遅刻などの焦り」も注意力を下げます。
Cyclingood
気の緩みも焦りも、自己中心的な走行になりがちですよね。
「クルマや人が現れないだろう」という思い込みでそのまま…
藤本さん
まさにそうです。無意識にそのような判断をしてしまい、
出会い頭の衝突につながってしまうのです。
人の多い歩道を走っていればなおさらですね。
Cyclingood
でも藤本さん、まだ車道よりも歩道を走る方が安全だ、怖くないと
考える人も多いようですが。
藤本さん
では、このスライドを見ていただきましょう。
クルマからの視界の違いを見比べてください。
歩道を走っている自転車に対しては遮るものなどの影響で存在に気づきにくく、左折段階で飛び出してきた、ということになりかねません。
一方、車道を並走している自転車については、ドライバーにとって
当然視界に入るため、接触しないようにという意識が働きます。
この方が、お互いにとって安全で安心なのは一目瞭然です。

Cyclingood
歩道を走っている自転車からはクルマが見えていても、
ドライバーには気づいてもらえていないケースもあると。
藤本さん
そうなんです。「気づいてもらっているだろう」「誰もいないだろう」という勝手な安心感がとても危険。
事故を起こさないようにするには、自分の存在を周囲に気づかせること、自身で周囲に意識を払うことのどちらも大切です。
それを実現するには、自転車側からドライバーにアイコンタクトをするなど積極的にコミュニケーションをとることが、
とても大きな意味をもちます。
「安心」をつくるのは「安全」があってこそです。
一人ひとりが自分の「安全」を守るためにどうすれば良いか
考えてもらいたいですね。
Cyclingood
周囲の状況を意識し、自分の存在に気づいてもらうよう行動することが、お互いに配慮し合える、つまりは藤本さんが理想とされている
「上手くシェアし合う」関係につながっていくのはよくわかります。
藤本さん
実は興味深い取り組み例がありまして、
京都市の一部の地域で、カーブミラーやセンターラインをあえて外す
試みが行われています。
これは人やクルマや自転車が、互いにより注意深く通行し合うことを
めざしているのです。

Cyclingood
「無い」ことで注意を強くするよう働きかけているんですね。
藤本さん
そうです。守られているから注意をしない。大丈夫だろうと思いこむ。
そこに着目して、あえてモノで守らずに注意力を高める取り組みです。
この効果にはとても期待しているんですよ。
Cyclingood
この事例で成果が生まれると、
ヨーロッパのように、譲り合って共存する
社会環境の実現に近づくような気がします。
藤本さん
そうなるといいですね。
交通安全と自転車安全の指導によって、一人ひとりの意識と行動を変え
滞りなく気持ちよく行き交うことができるのが私の目標です。
その上で、自立、健康、まちづくりなど、さまざまな場面で自転車が正しく活用される社会になることを願っています。
なぜ右側通行が危険なのか。ながら運転や歩道の走行が良くないのか、
皆さんにも伝わったのではないでしょうか。
自転車利用五則がもつ背景に目を向けて、
そうである「意味」に力を入れて指導をされている藤本さんの思いは、
多くの受講生の意識と行動に影響していると想像します。
皆さんもぜひ、藤本さんのお話を参考に
これまで以上に安全と安心を向上させる走行に取り組んでください。