住民に向けた「健康増進プログラムの開発」1

住民に向けた「健康増進プログラムの開発」1「今治に住む人に、自転車の楽しさを。」

住民に向けた「健康増進プログラムの開発」1「今治に住む人に、自転車の楽しさを。」

2016.12.27 更新

世界中のサイクリストの注目を集めている、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」。
今治市で長年にわたり自転車によるスローサイクリングを提案し、地元の住民に理解と協力を自らかけあって
「自転車のまち」を作り上げてきたのがシクロツーリズムしまなみの代表である山本さんです。
さまざまな事業に取り組まれている中、今回実施されたのは地元住民を対象とした健康増進プログラム。
観光客ではなく地域の方に自転車を、というその活動の背景や目的についてお話しをうかがいました。

what's
what's
NPO法人シクロツーリズムしまなみ
今治NPOサポートセンターで島しょ部の地域活性化に携わり、「自転車モデルコースづくり事業」のコーディネーターとしても経験をもつ山本優子さんが代表理事を務める民間非営利団体。理学療法士でもある吉武氏、ポタリングガイドを担当する宇都宮氏などのメンバーと共に、五感をフルに使って地域をまるごと楽しむ自転車ならではの「シクロツーリズム」(自転車旅行)の提案を通じて、持続的な地域づくりをめざしている。

シクロツーリズムしまなみさんが今回行った「健康増進プログラム」は
2016年9月~12月の約3カ月間、スポーツバイク経験のない40~50代男女に
1日30分、週3回以上スポーツバイクに乗ってもらい、その楽しさを体験してもらうとともに
実施前後の体力、血液性状などの変化を確認するというものでした。
私たちCyclingood取材班が伺ったプログラム最終日は
体力測定や健康診断を行う日。
午後からは「波方ふれあいセンター」に移動して、その様子を見学させてもらいました。

廊下を進むとまずは右側に脈拍・血圧・体組成などをマンツーマンで計る部屋があり、
その隣に腹筋や体幹筋持久力などを計る部屋へと続き、
皆さんめいめいに計測を受けていらっしゃいます。
さらに奥へ進むと、突き当たりに大腿四頭筋、ハムストリング、
腸腰筋の筋力測定のコーナーが。

これらは椅子に座って測定する筋肉の部位に応じて足を縛り、
その状態で足を動かすように働きかけるため
「もっと、もっと、もっと~!」という測定担当の理学療法士さんたちの声が
部屋中に響き渡っていました。

このプログラムでは、愛媛県理学療法士会の協力を得て
このような測定メニューを一緒に作り上げ、
さらには管理栄養士の指導による食事の記録も実施。

単に「自転車に乗る」だけでなく、
食生活にも意識を払い、自分の体力を実感できる機会となったことで、
皆さんの生活そのものにも変化をもたらしているのかもしれません。
では少しモニターの方にお話しを聞いてみましょう。

Cyclingood
今回のこの健康増進プログラムはいかがでしたか?

転勤で今治市に引っ越してきました。「今治といえば自転車」というイメージがあったのでスポーツバイクに乗ってみたかったのですが、一人ではじめるには勇気がなくて。このプログラムがあることを知り、「いい機会!」と参加を決めました。スポーツバイクに乗ってみて、しんどさもありますがそれだけの達成感を感じられたのが良かったです。
それにこうして仲間が増えたこともうれしいですね。

赤池 玲子さん

スポーツタイプの自転車に以前から興味をもっていたのが応募の動機です。主に通勤として自転車に乗り、週3回以上、30分のノルマはなんとか果たせました。
「ちょっと痩せた?」と言われるんですけど、実は体重計に乗ってないのでわからないんですよ。今日の結果が楽しみですし、今後も引き続き健康を意識した生活習慣を取り入れていきたいです。

大成 良幸さん

と、お2人が話されているように、このプログラムを通じて自転車の楽しさを感じ、
自分の身体や生活を振り返るきっかけとなったことは間違いない様子。
この後、男性1,500m、女性1,000mの急歩や、3つのグループにわかれて行う
反復横跳びが行われ、みなさん体力を出し切った、安堵した空気に包まれていました。
それではここで、この測定メニューを開発し、測定のサポートを行われた
理学療法士さんにもお話を聞いてみましょう。

このようなプログラムに私たち理学療法士が参画するのは珍しいケースです。普段は高齢者の方に指導することが多いので、40〜50代の方と向き合えたのは大変有意義でした。
筋力や体力は高齢になってからではなかなか身につかず、手遅れになるケースが多いため、こうした機会を無駄にせず、将来の身体を今から作るという気持ちで運動を取り入れていただきたいですね。

理学療法士/ 森川 真也さん

体力測定終了後は全員で「なみかた海の交流センター」に戻り
この3カ月間の振り返りが行われました。
「みなさん、今回のプログラムはいかがでしたか?自転車の楽しさを感じられたでしょうか?」
と山本さんが語りかけると一同うなずくシーンも。
「ではここで、スライドを見ながら私たちの活動を振り返ってみましょう」
とスクリーンに映し出されたのは、最初にメンバーが集まった血液検査の日にはじまり、
これまでの活動の写真が次々と。
「おお!」とどよめきが起こったと同時に、わずか数カ月前のことなのに、
なつかしさを感じられている様子でした。

実はこのプログラム期間中、モニターメンバーの交流を図ると共に
自転車の正しい乗り方やルールを理解し、さらには身体を動かすきっかけづくりとなるための
講座やサイクリングツアーを盛り込んでいました。
ヨガ、ノルディックウォーク、塩づくりなどの体験もメニューの一部。
一方的に「自転車に乗ってください」というだけでなく、
一緒にさまざまな体験を重ねることで、ここに住む人々のつながりを強くし、
これからの健康的な生活に生かしてほしいという
山本さんたちシクロツーリズムしまなみのみなさんの思いが感じられます。
スライドの投影が終わると、モニターメンバーが一人ずつ感想を述べることに。

というように、身体、気持ち、生活に何らかの変化を与えた自転車のある毎日。
なじみのある自分の町が、いつもと違う風景に見えると感じた人が多かったのも、
自転車だからこそなのかもしれません。
そして最後に全員に配布されたのが、今日の体力測定の結果。
プログラム開始前と今日の結果をチャート形式で比較して見られるようになっているため
自覚しにくい筋力の変化を一目瞭然で感じられるようになっています。
こういうはからいにも、シクロツーリズムしまなみさんのやさしさが。
ちなみに全体的に体力が向上したという結果だったようです。素晴らしい!

サイクリストの聖地、メッカと言われることの多い今治市ですが、
それを支えているのが山本さんたちが時間をかけてコツコツと築き上げてきた
住民の皆さんの理解とおもてなしの心であることが
今回の取材でしっかりと伝わってきました。
そして今、住民の皆さん自身が自転車を活用してこの町を楽しみ、
交流を広げ、より豊かな生活を実現していくステージへ。
2017年2月には、行政や地元住民の方に向けたこのプロジェクトの報告会が行われ、
さらに自転車の魅力が今治の人に浸透していくのだと思います。
今治の町がどのように変化していくのか、注目ですね。