愛媛県の「自転車ツーキニストモニター事業」2

愛媛県の「自転車ツーキニストモニター事業」2「自転車で変えていく。愛媛県の「環境」と「健康」。」

愛媛県の「自転車ツーキニストモニター事業」2「自転車で変えていく。愛媛県の「環境」と「健康」。」

2016.04.27 更新

CO2排出量削減のため、さまざまな地球温暖化防止対策に取り組んでいる愛媛県。
県内の事業所に向けた啓発活動をはじめ、再生可能エネルギーの導入、バイオ燃料の利用拡大などに積極的に取り組む中で、この度行われたのが「自転車ツーキニストモニター事業」です。愛媛県内の事業所に呼びかけてバイクやクルマから自転車通勤への転換を促し、CO2排出量削減をめざしたこの事業。
環境と健康づくりのための自転車通勤という新たなアプローチについておたずねしてきました。

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自転車ツーキニストモニター事業
愛媛県環境政策課では温暖化対策の観点から、自転車関連の専門家による講演会など、住民向けのエコ通勤啓発活動を平成26年度に実施。続く平成27年度はCO2排出量削減対策の一環として、愛媛県内の事業所に広く参加を募り、クルマ・バイク通勤から自転車通勤へ転換を促す自転車ツーキニストモニターを行った。これは参加者モニターに自転車通勤による環境面と健康面での効果を実感してもらい、CO2排出量削減につなげることを狙いとしている。
愛媛県庁を後にしてCyclingood取材班が伺ったのが、南海放送株式会社さん。
開局62周年を迎える愛媛県を代表するテレビ・ラジオの兼営放送局で、
今回の自転車ツーキニストモニター事業には4名の従業員の方が参加されました。
全員男性で、その参加者のうちのお一人が、このモニター事業を社員の方に紹介し、
窓口業務も担当された総合企画局の池内さん。
どうして南海放送さんがこのモニター事業に参加されたのか、
ご自身が通勤に自転車を使うことでどのような変化を感じられたのか聞いてみました。

Cyclingood
放送局というお仕事柄、多忙な社員の方が多いと思うのですが、
なぜ自転車ツーキニストモニター事業に応募されたのですか?
池内さん

弊社はラジオ・テレビの兼営放送局ですが、放送だけでなく地域とのつながりを重視して多くのイベント実施に関わっています。2015年の10月には「瀬戸内しまなみ海道・国際サイクリング大会」の番組制作を行い、愛媛県が推進している自転車に関連する取り組みなども「Let's サイクリング」という番組で取り上げています。

もともと、うちの社員は比較的自転車やエコへの関心が高いと感じていたので環境政策課さんからのパンフレットを見たときに「これは参加せざるを得ない!」と直感しました。

仕事柄時間が不規則だったり、打ち上げ等で外食の機会が多いことから社員の健康づくりに何かしたいと考えていたところだったのです。自転車通勤であれば、新たに時間を割かなくても実践できますからね。

Cyclingood
従業員の方にはどのようにアナウンスされたのですか?
池内さん
参加資格が通勤距離5km以上、自家用車かバイクで通勤している人という条件だったので、まず対象になる社員数名にあたりをつけ、直接説明にまわりました。
特に自転車関連の番組制作に関わっている社員は予想通り積極的に参加してくれましたね。
あるスタッフは高台の新興住宅地に住んでいるため、帰路がかなりキツイらしいのですが「初日から上りきった!」と即座にメールが飛んできました。
Cyclingood
それはなかなかユニークなエピソードですね(笑)。
池内さんご自身もモニターとして参加されたそうですが、いかがでしたか?
池内さん
私は以前、8kmほどの自転車通勤をしていた経験があるのでそんなに新しい発見はないだろうと密かに思っていたのですが、やはり違いました。
良い面としては通勤前後で気分が変わること。リフレッシュ効果の?さですね。
もちろん健康維持に役立つことや、通勤時に交通渋滞に巻き込まれずに時間通りに移動できるという魅力についても改めて実感しました。
Cyclingood
悪い面としては何をお感じになりましたか?
池内さん
私はこのモニター期間2カ月半、毎日自転車通勤をしたのですが、1日に1回はヒヤっとすることがありました。
自転車とクルマ、どちらにも運転マナーの悪さを感じたり、道路整備の必要性を痛感することが多かったです。
Cyclingood
愛媛県庁さんは自転車専用道路の拡充にも取り組まれるようなので
今後の動きに期待したいですね。
池内さん
それでも本当にこのモニターに参加して良かったと感じています。
モニター終了後も実は自転車通勤を続けているんですよ。
通勤用の自転車にドロップハンドルやビンディングペダルを付けて、さらに泥よけも付けました。
おかげで雨の日も汚れを気にせず、快適に走っています。
Cyclingood
と、池内さんのご感想をお聞きしていたら
3名の参加者の方が仕事の合間を縫ってインタビュールームに。
さっそくお話しをうかがってみましょう。

Cyclingood
それではまず、このモニターに参加されることになった当時のお気持ちをお聞かせください。
津田さん
以前私はMTBで通勤してたこともあったので、自転車には慣れ親しんでいましたし、今回クロスバイクをお借りできるのも魅力的でした。
とにかく軽くてスピード感もあって楽しかったです。
谷本さん
自転車は2台保有していますが、通勤にほとんど使ったことはなかったんです。
片道10kmほどなので「いけるかな」とは思ったのですが、夜勤明けで乗るのはイヤだなあと。そんなスタートでしたね。

岡田さん
私は10年前に引っ越しして、今は自宅が高台にあります。
あまりに急勾配の坂を上らないといけないため、池内さんからお話しをもらったときも最初は「ムリ」と言ってたくらいなんです。以前自転車でこげなくなって押して帰ったことがあったので。
でもまあクロスバイクだったら「できるかも」という期待もありました。
Cyclingood
あ、岡田さんが「上れた!」と池内さんに即メールを送られた方なのですね!
それでは2カ月半近く通勤に利用されて
健康面や体調の変化をどのようにお感じですか?
谷本さん
運動不足であることは充分感じていたので
体脂肪や体重がどう変化していくのかと興味をもっていました。
このモニター期間で900kmほど走り、不思議と間食をしなくなって結果体重が3kgほどダウン。
それに加え、仕事にスッと切り替われるようになったのが良かったです。
バイクで通勤していたときは眠さが残って頭が動いていない感じでしたが自転車だと脳が覚醒するのでしょうか。スッキリ感が違いましたね。
津田さん
秋の健康診断でメタボ予備群と診断され、「運動しないといけない」と思っていたところでのこのモニター参加でした。片道5kmと短い距離なので、正直もの足らないと感じたことも。
そんなときは遠回りして距離を延ばしたりと工夫をして、体重は2kg減少という結果に。
自転車で走っているときになぜか考えごとの整理ができて、気分が軽くなったように感じていました。
岡田さん
私は週1回テニスをしているのでわかるのですがあの「坂」をほぼ毎日のように上っていたことで、基礎体力が上がったような気がします。
それにモニター期間中の約2カ月で2kg体重が落ちて、その後も減少しているんですよ。
筋力がついて代謝が上がったのかもしれませんね。
Cyclingood
そのすごい坂はクロスバイクになったことで制覇できたのですね。
岡田さん
ええ、がんばりましたよ(笑)
当初は「ムリだろう」と思っていたのですが、軽いギアを使うといいとアドバイスをいただきクルクルと回転させてひたすらこぎ続けました。達成感は大きかったですね。
最後に、自転車愛好家として知られる田中社長と一緒に記念撮影。
「爽快感が違う」「体質改善につながった」「環境だけでなく財布にもやさしい」という声も飛び出した南海放送のモニターの皆さん。放送局という仕事柄、運動する必要を感じながらもなかなか時間が取れないという状況に自転車通勤はぴったりとフィットしたようです。
それでは私たち取材班は、次に松山ライオンズクラブ合同事務局さんへ。
ここでの参加者は女性ばかりの3名です。

Cyclingood
職場の皆さんに自転車ツーキニストモニターへの参加を呼びかけたのは渡部さんだそうですね。
渡部さん
ええ、そうなんです。
最初はfacebookでこのモニターのことを知って、「いいなあ」と思いまして。
私はロードバイクをもっていて、しまなみ海道サイクルトレインにも参加した経験があるので自転車の楽しさをみんなに知ってもらういいきっかけになると思い、声をかけました。
「自転車をもらえるかもしれないよ」って(笑)
Cyclingood
なるほど(笑)。今回はモニター期間終了後に抽選でクロスバイクをもらえるというお話しだったようですね。それでお2人はなぜ参加を決められたのですか?
白石さん
私は過去にしまなみ海道をレンタル自転車で走ったことがありまして、そのときちょっとサイズが合わなかったことから「私に合った自転車に乗ってみたい」と常々思っていました。
それと膝の痛みを抱えているのですが、自転車なら膝への負担の心配なく筋力をつけられます。そういう意味でもモニター参加には前向きでしたね。
土居さん
クロスバイクには興味があったのですが、自転車はママチャリしか乗ったことがないので最初は運動神経に自信がなくて。
渡部さんたちに「私でもできるかな」と相談をして、まずはモニターなら自分に合うか試せるからと参加することにしました。
Cyclingood
皆さん、約2カ月半のモニター期間はいかがでしたか?
渡部さん
クロスバイクに乗るのは初めてだったのですが、街なかを通勤で走るならロードバイクよりも断然ラクでしたね。
段差も怖くないし、小回りもきくし、スタンド付きなら自由に止められます。
職場から家に向かっている間に、仕事を引きずらずに自然と気持ちを切り替えられるのも新しい発見でした。
白石さん
そうそう。
私は普段クルマ通勤だったのですが、クルマだとなんだか家の空気を引きずってるような気がするんですよ。
そういうのが自転車にはまったくないですね。
土居さん
それにクルマやバイクで家を出るときは「行かないと」という強制感があるのに、自転車だと気持ち良く出られるんですよ。不思議です。

Cyclingood
それでは今感じられている自転車の魅力についてお聞かせください。
土居さん
私は年齢に合ったちょうどいい運動ができるのが魅力だと思います。ムリしてないのに快適な運動ができるのは自転車ならでは。
これからは通勤だけでなくもっと乗れる機会を増やしたいです。
白石さん
この年齢になって「乗れる」自信を与えてくれたのが大きかったと思います。
モニター期間だけで体重は少し減り、筋肉が若干ついた気がします。身体が変わって自信もついて、「まだまだ人生いけるやん」と思えたのはうれしいですね。
渡部さん
私、先日グリーンツーリズム企画のサイクリングイベントに参加して愛媛県内のとある農家民宿に伺ったんです。
この地域ならではの手の込んだお料理をいただいて、農家のおばさんたちとお話ししておいしくて、楽しくて、すごくパワーをいただいたんですよ。
自転車だから出会えることやモノがあるんだと気づいてこういう場所にまた行きたい、もっと行きたいと思っています。
この2人と一緒にあの感動を共有したいんです。
だからお願い、自転車が当たりますように!(笑)

最後は大爆笑に包まれた松山ライオンズクラブ合同事務局の皆さんのお話し。
体重や体脂肪への影響よりも、自転車がもたらす気持ちよさや楽しさに
とても共感されていることが伝わってきました。
後日談ですが、なんと白石さんに自転車が当選し、土居さんは自ら購入して
渡部さんたちと一緒に「LIONS OFFICE サイクリングクラブ」を結成されたのだとか。
2カ月に1度のペースで、50km程度のサイクリングをしつつ
遠方にも行ってみたいとお考えのようです。
これからも自転車を通じたさまざまな出会いを楽しんでくださいね。

この「自転車ツーキニストモニター事業」の目的のひとつである
温室効果ガス削減の効果は数値化され、わずか40名でもクルマやバイクから自転車に変えるだけで環境にもたらす好影響がどれほど大きいかを実感できる結果となりました。
この事業がもたらしたのはそれだけでなく、参加者全員が
愛媛の道を、風を、風景を通じて愛媛ならではの魅力を改めて感じられたことではないでしょうか。
住民の皆さんひとり一人がこうして地元愛を深めることが、
「自転車新文化の創造」の実現を後押しするのだと思います。
今後の愛媛県の取り組みに、ますます注目です!

この事業のもうひとつのテーマである「環境面」への貢献については以下のとおり。ガソリンを使うクルマやバイクから自転車に変えた結果、距離に換算すると日本列島縦断3往復分を走ったことに相当し、2カ月半×40名=2,645kgほどのCO2排出量を削減できたことに。 ひとり一人の日々の積み重ねが大きな成果につながることがよくわかります。

この距離をクルマで利用した場合、
ドラム缶約9本分相当の
ガソリンを使用。
価格に置き換えると、トータルで
25万2千円
(1人当たり約6,300円)
節約できたことに!

削減できたCO2量は、
年間1人あたりのCO2排出量に相当。
これを1年間継続すると
1人当たりのCO2削減量は
1人あたりの年間CO2量の約11%に!

※一人あたりの二酸化炭素排出量(2013年度)
約2,300kgCO2/人

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