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やらない理由とサヨナラ! "楽しさ"からはじまる好循環。 ➌
運動しないと。続けないと。頭では分かっていながらも、忙しいから、今日は気分が乗らないから...、と何かと理由を見つけてなかなかできない・続かないのが運動習慣の現実。
今回は、この状況を断ち切る「楽しさ」について、産業医科大学の江口先生と考えていきます!
2023.9.27 更新
産業医科大学 産業保健学部 人間情報科学
江口 泰正 教育教授
1986年、福岡教育大学大学院修士課程教育学研究科修了。2014年より産業医科大学産業保健学部人間情報科学准教授、2022年より現職。日本健康教育学会理事ほか。専門は健康教育・ヘルスプロモーションや体力科学。
後編のお話
- ① 自転車がつくる楽しさってどんなもの?散走レポート
- ② 運動継続につながる、遊びの4要素
- ③ ウェルビーイングをかなえる散走の可能性
前編・中編では江口先生に「運動継続につながる5つの楽しさ」についてお伺いしました。
はい、「予測できない出来事や発見、刺激を受けるワクワク感」、「ライバルとの競争」、「仲間や友人・家族と一緒の体験」、「自分の居場所がある心の充足感」、そして「目標への挑戦や達成感」の5つですね。私の調査では、運動が続いている人は、これらの楽しさが継続理由になっていることが分かりました。
そこで実際、自転車ではどんな楽しさが得られるのか、シマノが提唱する「散歩するように自転車を楽しむ"散走"」を例に探しに行きました。
「散歩するように」というのが良いですね。刺激やワクワク感、参加者同士の交流から生まれる一体感や心の充足など、いろいろな楽しさが見つかりそうです。
シマノ本社がある大阪府堺市で、散走を実施しました。
取材班とともに散走に参加してくれたのは、堺市在住の3人です。
取材班とともに散走に参加してくれたのは、堺市在住の3人です。
この「散走」というスタイル、「運動するぞ~!」というより、参加したみなさんの「遊びを楽しもう!」という姿勢が魅力的です。私もこのような機会があれば参加してみたいなあ。
ありがとうございます。9時30分にスタートして堺市内をゆっくりめぐり、ゴール地点では西日が差していました。
みなさんとても楽しそうですね。写真を見ているだけでも爽快に感じます。
私も一緒に走りましたが、「運動した」というよりも、「みんなで遊びに出かけた」感覚です。終わる頃には心地いい疲労感がありました。
自転車のペダリングによる筋運動、有酸素運動といった健康への影響だけでなく、運動を継続させる遊びの4要素を盛り込みやすいのも散走の良さだと感じました。
遊びの4要素ですか?
遊びには、アゴン(競争)、アレア(運)、ミミクリー(模倣)、イリンクス(めまい)、この4要素があると言われています。
散走には4要素が入っているでしょうか?
例えば、自転車はウォーキングと比較して、「時間や距離、自転車のカスタマイズなど競う物・者を見立てやすい」といったアゴンの要素、「行動範囲が広がり、偶発的にお気に入りの風景や場所に遭遇しやすい」といったアレアの要素が多くあるように思われます。
ミミクリー(模倣)とイリンクス(めまい)の要素もありますか?
「速度や負荷の調整に幅があり、カスタマイズ要素も多く、まねをしたくなる・共感できる点を見つけやすい」といったミミクリーの要素、「スピード感や気持ちの高鳴りを得やすい」といったイリンクスの要素も多く、この散走は楽しめる要素がいっぱいですね。
参加者からも「知らない景色や街の歴史を知って、この街をもっと好きになった」、「みんな興味のあるポイントがそれぞれなので、いろんな視点で楽しめた!」という意見が聞かれました。
運動を続けている人が求めていると思われる「楽しさ・高揚感」の因子、「新しい発見や体験」、「予測のできない感動」、「目標への達成感」、そして何より「仲間とのモノ・コト・トキの共有や共感」の可能性に満ちています。さらに、みんなと走っている時間は、その人の「居場所」にもなるかもしれませんね。
散走は、運動継続につながる「楽しさ」を見つけやすいと言えそうですね。
まさに、このような余暇のあり方こそ大切です。すぐに身体的な健康につながらなくても、自分の価値観に応じたウェルビーイングを謳歌できれば、心の健康に非常に良い効果があるでしょう。散走には知的好奇心を刺激し、五感をフルに働かせ、多様な感性を磨く可能性を感じます。
自転車に乗れば、体力に自信がない人でも
自分のペースで広い範囲をラクに移動できる。
「運動するぞ!」ではなく、「遊びを楽しもう」という
ゆるやかな気持ちで走れるからこそ
さまざまな楽しさに気づくことができ、
それが、運動が続く好循環を作ってくれるようです。
江口先生、「運動しなきゃ」という
気負いがなくなるお話を、ありがとうございました。
自分のペースで広い範囲をラクに移動できる。
「運動するぞ!」ではなく、「遊びを楽しもう」という
ゆるやかな気持ちで走れるからこそ
さまざまな楽しさに気づくことができ、
それが、運動が続く好循環を作ってくれるようです。
江口先生、「運動しなきゃ」という
気負いがなくなるお話を、ありがとうございました。