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やらない理由とサヨナラ! "楽しさ"からはじまる好循環。 ➋
運動しないと。続けないと。頭では分かっていながらも、忙しいから、今日は気分が乗らないから...、と何かと理由を見つけてなかなかできない・続かないのが運動習慣の現実。
今回は、この状況を断ち切る「楽しさ」について、産業医科大学の江口先生と考えていきます!
2023.9.20 更新
産業医科大学 産業保健学部 人間情報科学
江口 泰正 教育教授
1986年、福岡教育大学大学院修士課程教育学研究科修了。2014年より産業医科大学産業保健学部人間情報科学准教授、2022年より現職。日本健康教育学会理事ほか。専門は健康教育・ヘルスプロモーションや体力科学。
中編のお話
- ① 運動が続く人の、5つの楽しさとは?
- ② 自分の居場所をもつことも大切
- ③ やればできる!セルフエフィカシー
5つの楽しさについて、さっそく教えてください。
まずは「予測できない出来事や発見、刺激を受けるワクワク感」が挙げられます。この楽しさを得るために、私は散歩をする際は真っ直ぐな道よりも、曲がりくねった道を選ぶようにしています。
それはなぜでしょう。
真っ直ぐだと、先が見通せてしまいますよね。曲がっていれば「この先に何があるだろう?」と小さな期待を感じることができます。この予測のつかないところがポイント。運動に飽きやすい人は、ランニングやサイクリングなら新しい道を開拓する、室内での運動ならマメにメニューを変えてみると良いですね。
自分が飽きないように工夫をするのですね。2つ目は何ですか?
「スピードやタイムなどを誰かと競う」ことです。ここで大切なのは勝ち負けではなく、「負けないぞ!」と競争心を燃やすこと。一人のときでも、通りすがりの誰かを心のライバルに見立てたり、タイムや距離を記録して過去の自分と競ったりもできます。勝っても負けてもOKのゆるやかな競争を取り入れてみましょう。
ゆるやかな、というのがポイントですね。
3つ目は「誰かと一緒に過ごす体験」。1人の方が好き、という人は別として仲間がいれば「時間が経つのが早くて予定よりたくさん運動できた」「楽しくてあっという間だった」...なんて経験ありませんか?
分かります。気乗りしない日でも、「みんながいる」と思えば出かける気になったり...。
一人よりも続けやすくなることがありますね。また、こうした他者との関わりを通じて自分の存在価値や役割を確認できる「社会的居場所」があることは、心の健康にもつながります。
では、一人で運動する方が好きな人に適した楽しさはありますか?
そうですね、一人でも、お気に入りの景色が見える場所や落ち着ける店など、「自分の居場所がある心の充足感」が楽しさにつながるでしょう。例えば駅から離れた場所にお気に入りの店を作れば、そこを目的に自転車に乗ったりすることで、結果的に運動量を増やすことができます。
では、最後の5つ目を教えてください。
「目標への挑戦や達成感」です。目標といっても、「あの電柱まで走ろう」、「あと5分やってみよう」といった小さなことでOK。それを着実にクリアしていくと、「やればできるんだ!」という自信につながります。
ダイエットによくある、「◯kg痩せる!」ということも目標になりますか?
できれば、少しの努力で達成できる目標の方が良いですね。体重を落とすような目標は時間がかかるので、小さな目標を設定し、達成し続けることで、「次も頑張ろう」とやる気に変わっていきます。
大きな結果を追い求めないことが大切なのですね。
結果を出そうとすると必死になって「楽しさ」から離れてしまいます。そうではなく、「楽しんでやろう」と心の余裕をもつことが大切です。私はこれをよく「遊び心」と表現するのですが、どんな遊び心が自分に合っているかを意識してみてください。
これら5つの楽しさは、運動を続けやすくするだけでなく、「やればできるんだ」という自信、つまりセルフエフィカシー(自己効力感)につながる可能性があります。
セルフエフィカシーとは何でしょう?
「自分はできるんだ」と思える自信のようなもので、セルフエフィカシーは新たな挑戦への意欲につながります。これはプロのアスリートも重視しているスキルであり、運動継続の重要なポイントといえます。小さな目標でも、それを達成できると高揚感が味わえ、またそれを感じたいと自然に運動が継続していくのです。
運動を続ける好循環が生まれるのですね。
その通り。この循環は、何よりも「楽しい!」と心が動くことからはじまります。「運動しないと」というプレッシャーからはなかなか生まれ難いものです。
結果を必死に追い求めるのではなく、
どんなときも「楽しんでやろう」と心の余裕をもつこと。
自分に合う楽しさを見つけることが継続の近道だと分かりました。
後編では、先生に教えていただいたいろいろな
「楽しさ」を見つけに、自転車で街へこぎ出します!
どんなときも「楽しんでやろう」と心の余裕をもつこと。
自分に合う楽しさを見つけることが継続の近道だと分かりました。
後編では、先生に教えていただいたいろいろな
「楽しさ」を見つけに、自転車で街へこぎ出します!