2018.04.23 更新

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福岡大学 身体活動研究所
田中 宏暁 所長

1947年生まれ。東京教育大学(現在の筑波大学)体育学部卒、医学博士。専門は運動生理学で、特に肥満・動脈硬化性疾患などの生活習慣病の治療と予防、健康増進・競技力向上に有効な運動処方に関する研究が主なテーマ。
2018年4月23日 田中宏暁先生がご逝去されました。
謹んで田中先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

前編のお話

  1. ① 現代人の体力低下は深刻な問題。
  2. ② 田中先生の「スロージョギング」とは?
  3. ③ ニコニコペースがもたらす運動効果。
  4. ④ 「スローサイクリング」でも同様の効果に。
Cyclingood
田中先生がスロージョギングの第一人者として講演会や
イベントなど精力的にご活動されているのに驚きました。
現代人の体力低下は深刻な状況です。横断歩道を歩いていて赤信号に変わりそうになり、無意識に走り出して渡りきったら息がハアハアとなった経験はありませんか。そのくらいの低体力の方にもムリなくできて健康づくりに良いというスロージョギングの魅力を、多くの方に知っていただきたいというのが私の思いです。
Cyclingood
その状況、ドキッとします。確かにそのくらいのダッシュでも
息が上がってしまう人は多いでしょうね。
メタボと診断されたり、体力不足を認識しているけど、どうすればいいかわからない。そういう人が増えていることは間違いないでしょう。買物もインターネットで済ませることができるなど生活の利便性が高まる一方で、身体を動かす機会は確実に減っています。だからこそ意識的に運動を取り入れる習慣をつくることがとても重要になっています。
Cyclingood
先生が提唱されている「スロージョギング」は
どのような特徴があるのでしょうか。
まず方法としては、指の付け根の少し下付近で着地する「フォアフット着地」で小さな歩幅で小刻みに進みます。これは足を後ろに蹴り上げるのではなく、アキレス腱のバネの力を利用して前に進むので運動効率が良く、さらに地面からの衝撃を軽減できるという特徴があります。そして最大の特徴は笑顔で一緒に走っている人とおしゃべりを楽しめる「ニコニコペース」で走るということです。
Cyclingood
笑顔で話ができる程度の「ニコニコペース」ですか?
はい、ウォーキング程度の非常にゆっくりとしたスピードです。なので息が切れずにいつまでも走っていられます。この走法で使うのは主に持久力を発揮する「遅筋」であるため、疲れにくく長く走れるというメリットがあります。
Cyclingood
先生、そんなにゆっくりとした疲れないスピードで走って、
健康効果は期待できるのでしょうか。
それがゆっくりのペースだからこそ、健康へのさまざまなうれしい働きかけがあります。ニコニコペースを運動強度で表すと50%最大酸素摂取量に相当します。この強度で運動することによって、心臓の1回の拍出量が最大に達し、脂肪代謝量も最大になることがわかっています。つまり血流を促すことで動脈硬化の予防になり、脂肪の燃焼にも効果的であるためダイエットにも非常に適した運動なのです。
Cyclingood
動脈硬化予防やダイエットに効果があるのですか。
それはうれしいですね。
スロージョギングをはじめてみるみる痩せたという声をたくさんいただいています。さらに脚の筋力がつくのでロコモ対策にもなりますし、認知症予防をはじめ脳機能の活性化も期待できます。脂肪を落とし、血流を促し、脚筋力をつけ、脳にもいい。運動をはじめたい人にはムリなく今すぐできて、望ましい効果が得られるといえるでしょう。
Cyclingood
では先生、そのスロージョギングのメソッドは、同じ有酸素運動としての「自転車」でも効果が期待できますか?
もちろんです。自転車は一般的に「速く」走ることを楽しむことが多いですが、あえてスローペースで走ることで、スロージョギングと同様の健康効果が得られます。自転車ならジョギングよりもより遠くへ行けるという楽しみが増えるのもいいですね。
Cyclingood
スロージョギングの効果は
自転車運動でも期待できるそうです。
その詳しいお話は後編にてお伝えします!

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