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めぐりをよくして、いつだって「いい感じ」。 ➊


代謝がスムーズに行われている、あるいは、体中に酸素や栄養が行き届いて老廃物が排出されている状態。今回はこうした「めぐりのよさ」を生み出す血液や血管の働きについて、立命館大学の家光先生に教えていただきました。血液のめぐりは、健康だけでなく美しさやコンディションにも関わり、効率的に血液をめぐらせるには自転車運動が適しているようです。
2021.10.1 更新

立命館大学 スポーツ健康科学部
医学博士 家光 素行 教授
筑波大学大学院医学研究科博士課程で博士(医学)を取得。「生活習慣病およびサルコペニアに対する運動効果と機序の解明」が主なテーマ。運動効果のメカニズムを明らかにするために、DNA、遺伝子、細胞、組織、個体までを統合的に解析。その結果をもとに、トレーニング方法の開発に取り組んでいる。
前編のお話
- ① 体内をめぐる血液の働き
- ② 地球2周半!血管の99%を占める毛細血管
- ③ 毛細血管の衰えが疾患や不調の原因に
最近「めぐり」や「血管力」に注目が集まっていますが、
その具体的な意味や役割はあまり知られていないように思います。
先生、まずはこの「めぐり」について教えてください。
その具体的な意味や役割はあまり知られていないように思います。
先生、まずはこの「めぐり」について教えてください。

それでは、体内の水分とそのめぐりについてご説明しましょう。人の身体の約60%を占める水分のうち、全身をめぐっているのは主に血液です。血液は血管を通って私たちの身体のすみからすみまで行き渡り、絶えず循環しています。
基本的なことですが、血液はどのような働きを担っているのでしょうか。

かんたんに言えば、血液は身体の中の運び屋のような存在です。まず、心臓から送り出された血液は動脈を通り、肺で取り込んだ酸素と共にタンパク質や脂質・糖質などの栄養やホルモンを全身へと運んで行きます。
身体中に酸素や栄養を届けるのですね。

血液が全身の細胞にたどり着くと、運んできた酸素や栄養などを細胞に受け渡し、不要になった二酸化炭素や老廃物を回収して静脈から心臓へと戻ります。この酸素・栄養と二酸化炭素・老廃物の物質交換を行う場所が、細胞とつながっている毛細血管です。
毛細血管は、動脈や静脈とは違うのですか?

毛細血管は動脈と静脈の間にあり、すべての臓器にネットワークのようにはりめぐらされています。名前の通り細く、髪の毛の10分の1ほどの血管で、赤血球が1つようやく通れるほど。人間の血管のうち99%はこの毛細血管が占めており、人間一人分の毛細血管をすべて合わせると、なんと地球2周半もの長さになります。
地球2周半も!
血管=ほぼ毛細血管と言ってもいいほどですね。
血管=ほぼ毛細血管と言ってもいいほどですね。

そうですね。ところが、酸素・栄養と二酸化炭素・老廃物の受け渡し場所である毛細血管は、残念ながら加齢と共に衰えていきます。20代をピークに毛細血管の老化がはじまり、60〜70代では毛細血管の量がピーク時から約4割減少するという報告もあります。
血管も加齢によって衰えるのですね。
そのほかに毛細血管が減少する原因はありますか?
そのほかに毛細血管が減少する原因はありますか?

タバコやストレス、過度な飲酒、生活習慣の乱れ、過剰な運動による活性酸素の増加も毛細血管の減少や損傷につながります。
毛細血管の老化や損傷が進むと、どうなるのですか?

血液に含まれる栄養や水分が血管の外に漏れ、血管が細くなって血流が停滞し、血液が届かなくなった毛細血管は徐々に消滅していきます。動脈や静脈のように大きな血管ではありませんが、血管の99%を占める毛細血管は私たちの身体にとって重要な生命線ですから、減少や損傷による影響は多岐にわたります。
具体的には、どのような影響がありますか?

毛細血管の減少・損傷が進んだ場所には、血液が届かず酸素や栄養が行き渡らなくなります。すると心臓は「もっと強く血液を送り出さなければ」と判断し、高血圧に。高血圧が続き負担がかかった血管は次第に厚く、硬くなっていきます。これが動脈硬化で、進行すると心筋梗塞や脳梗塞に至ります。また、骨や脳に栄養が届かなくなると、骨粗しょう症や認知症のリスクも高まると考えられています。
髪の毛よりも細い毛細血管の減少が、
重大な疾患につながるのですね。
重大な疾患につながるのですね。

それだけではありません。実は日頃の不調にも毛細血管が関わっています。例えば、皮膚表面の毛細血管が減少するとシミやシワなど肌トラブルの原因に。頭皮付近では抜け毛や髪の乾燥、手や足では指先の冷えを起こしやすくなります。さらに、新陳代謝が滞るため疲れやすくなり、太りやすくなってしまうのです。
肌トラブルや太りやすさまで!

また、「むくみ」も毛細血管が関係しています。よく誤解されているのですが、むくみの直接的な原因は水分の摂り過ぎではなく、血液の循環が悪くなることにあります。血液が滞ると、毛細血管から水分が吸収されず、細胞のすき間などに水分が停滞してしまうのです。
そうだったのですね。
むくみは特に、脚に起こりやすい気がします。
むくみは特に、脚に起こりやすい気がします。

脚がむくみやすいのは、血液が心臓から重力によって脚に流れて溜まっていくことが原因です。毛細血管が衰えていたり、数が少なかったりすると、より血液が滞ってしまい、そこにデスクワークや立ち仕事など同じ姿勢で過ごす時間が続くことで、脚のむくみが引き起こされます。
加齢と共に衰えてしまう毛細血管。
後編では、この老化を食い止めることができるのか
引き続き家光先生にお話を伺いします。
後編では、この老化を食い止めることができるのか
引き続き家光先生にお話を伺いします。
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