2021.12.15 更新

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國學院大學 人間開発学部
林 貢一郎 教授

筑波大学大学院博士課程体育科学研究科で博士(体育科学)を取得。運動生理学や健康科学の分野において、生活習慣病の予防・改善策としての身体活動の役割や、女性と運動の関わりを研究している。

前編のお話

  1. ① 有酸素運動としての自転車運動
  2. ② 運動として、女性に自転車をおすすめする理由
  3. ③ 加齢によるホルモンバランスへの効果
Cyclingood
今回は女性の「美しさ」をテーマに、
自転車運動の効果について考えたいと思います。
「美しさ」の価値観は人によって異なります。まずは自転車によってどのような運動効果が得られるか、という観点から考えてみましょう。
Cyclingood
お願いします。自転車は女性にとって、
買い物などの「移動手段」のイメージが大きいですが、
「美しさ」につながる運動効果があるでしょうか。
基本的に、自転車の走行は有酸素運動ですからね。脂肪燃焼効果はもちろん、特に脚筋力アップや全身の血流促進など、ジョギングやウォーキングと同じように全身運動としてのさまざまな効果を得ることができます。
Cyclingood
主に脚を使う自転車でも、全身運動になるのですか?
そうですね。特にスポーツバイクであれば、前傾姿勢になるため全身運動としての効果は高まります。上半身を支えるには、腕や体幹の筋肉が必要ですから。そして重要なのは、主に脚を使うということ。人の筋肉のうち6割以上は下半身についています。ひとこぎで下半身の筋肉をダイナミックに動かす自転車のペダリングは、効率的に有酸素運動の効果を得やすいと言えます。
Cyclingood
ラクに感じるペダリングですが、
体感以上に筋肉を使う動きなのですね。
筋肉を使うことで、下半身を引き締めることができます。女性は男性よりも筋肉量が少ないため、瞬発的に筋肉を使う筋力トレーニングよりも、比較的ラクにたくさんの筋肉を動かせる自転車運動はおすすめです。
Cyclingood
「筋肉を鍛える」と聞くと、
脚が太くなるのではと敬遠されそうですが...。
短時間で大きな負荷がかかるトレーニングでなければ、脚を太くすることの方が難しいでしょう。しっかりと筋肉を使って代謝を上げ、脂肪を燃やすことで、身体が引き締まって健康的な美しさに近づくことができます。特に若い女性は、理想的な体型に近づこうと、無理な食事制限などのダイエットをしている人が少なくありませんが、必要以上の減量はかえって月経不順などの不調を引き起こしやすくなります。
Cyclingood
そうなのですね。
月経は女性の日々のコンディションに深く影響します。
自転車運動によって、月経に何か好影響はありますか?
習慣的な有酸素運動は月経前症候群(PMS)の予防や症状の軽減に効果があることが知られています。運動によって気分が晴れることや、骨盤周囲の血流が改善されることで、月経に関連する不快な症状が軽減されます。
Cyclingood
では、加齢によるホルモンバランスの変化については
どうでしょう?
有酸素運動によって更年期症状が緩和されることが分かっています。一般的に女性は50歳前後で閉経を迎え、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量が急激に低下。ホルモンバランスが崩れることによって、ほてりや発汗などのホットフラッシュ、頭痛やめまいといったさまざまな症状が現れます。こうした更年期症状の緩和に、有酸素運動が効果的であることは多くの研究で分かっているのですが、そのメカニズムはまだ解明されていません。
Cyclingood
女性の身体やホルモンと運動との関係については、
まだ研究段階なのですね。
現時点で考えられるのは、有酸素運動は自律神経を整え、脳に作用し快感情を引き起こすことが知られているので、更年期特有の心身の不安定さを緩和できるのではないかということです。また、メカニズムは異なりますが、女性ホルモンであるエストロゲンの働きと有酸素運動の効果はほとんど同じなのです。
Cyclingood
それはどういうことでしょう?
例えば、エストロゲンのもつ動脈硬化の抑制、自律神経の安定、骨量・骨格筋の維持といった働き。これらはすべて、有酸素運動によっても得ることができます。エストロゲンの減少で失われるさまざまな働きを、有酸素運動を行うことで補うことができると言えます。
Cyclingood
有酸素運動としてさまざまな効果がある自転車運動。
さらに、「美しさ」の土台となる
健康や脳機能への効果については後編で!

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