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人生まで弾ませる!?筋肉のチカラ 1
自分でも気づかないうちに筋肉の量が減少する「筋萎縮」。運動習慣がある人でも症状が進行する可能性があり、将来、生活習慣病にかかりやすくなったり、起き上がれなくなって介護が必要になるリスクも...。いつまでも若々しくアクティブでいるために、筋肉と長く付き合う方法を身につけましょう!
2016.08.05 更新
名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
博士(障害科学)
奥津 光晴 講師
2002年 東北大学大学院 医学系研究科 障害科学専攻 博士後期課程修了。ヴァージニア大学など、国内外での研究活動を経験し、2014年より現職。専門は「運動分子生物学」。運動が筋萎縮や生活習慣病に与える影響を分子レベルで研究しており、メカニズムの解明による健康改善への貢献を目指している。
奥津先生、まずは筋肉がどのようなものなのか教えてください。
一般的に筋肉と呼ばれているのは、身体を動かす骨格筋です。骨格筋は、男性では体重の約40%、女性で約35%を占めており、身体を動かすだけでなく代謝や体温調節を担うなど、さまざまな機能を持っています。例えば、寒いときに身体がガタガタと震えますよね。これは骨格筋を小刻みに動かすことで身体を震わせ、体温を上げようとしているのです。
身体を動かす場合、
骨格筋はどのような働きをするのですか?
骨格筋はどのような働きをするのですか?
私たちは骨格筋を縮ませる収縮と、ゆるませる弛緩によって身体を動かしています。例えば、腕を曲げるときは二の腕の前側の骨格筋が収縮し、伸ばすときは後側の骨格筋が収縮します。また、骨格筋は遅筋、速筋と呼ばれる2種類の筋線維が束状になっており、同じ動きでも、その速さによって使われ方が変わると考えられています。遅筋はジョギングなどのゆっくりした動きを担うほか、姿勢の維持などにもかかわると考えられています。一方で速筋は全力で走る、強く投げるなどの素早い動作や、転びそうになったときに瞬時に足を出すといった反射的な動作のときに主に働くと考えられています。
なるほど。
どちらの筋線維もなくてはならないものなのですね。
どちらの筋線維もなくてはならないものなのですね。
そうですね。ただ、一般的に40歳前後から、骨格筋の量が顕著に減少し始めます。こうした骨格筋量の減少を、"筋萎縮"と呼びます。運動習慣がない方ほど骨格筋が早く減少しますが、運動習慣がある方でも、徐々に筋萎縮が進行していきます。
運動をしていても
骨格筋が萎縮しまうのはなぜなのですか?
骨格筋が萎縮しまうのはなぜなのですか?
生活習慣の変化によって身体を動かす機会が減っていくことが一つの原因ですが、体内の変化も一因となります。加齢に伴って筋肉の材料であるタンパク質の合成量が減る、または分解が促進され、骨格筋を維持しづらくなるのです。ほかにも、老化の原因の一つとも考えられている酸化ストレスなど、さまざまな要因によって筋線維が細くなり、筋萎縮が起こります。
筋萎縮が進むことで、どのような影響が起こるのでしょうか?
骨格筋は多くの機能を担っているので、さまざまな影響が考えられます。実は、骨格筋は血中の糖を代謝する機能も持っています。筋萎縮が進み、骨格筋の量が減ってしまうと、その分代謝も落ちます。その結果、血糖値が高くなり、メタボリックシンドローム、さらには糖尿病などの生活習慣病につながるリスクが高まるといえるのです。
筋萎縮がメタボの原因に...。
ほかにはどのような影響が考えられますか?
ほかにはどのような影響が考えられますか?
運動機能についていえば、つまずきやすくなったり、身体が疲れやすくなるでしょう。また、立つ・歩くなどの機能が低下し、ロコモティブシンドロームという要介護の一歩手前の状態になってしまうリスクもあります。筋萎縮がさらに進行すれば、いつか動けなくなり、最終的には寝たきりの状態になる可能性もあるでしょう。
知らず知らずのうちに進んでいく筋萎縮。
次回はその予防方法と自転車運動の効果についてお伝えします。
次回はその予防方法と自転車運動の効果についてお伝えします。