2021.2.5 更新

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筑波大学 人間総合科学学術院
久野 譜也 教授

スポーツ医学の分野においてサルコペニア肥満、中高年の筋力トレーニングなどを研究。2002年、筑波大学発のベンチャー「(株)つくばウエルネスリサーチ」を設立。最先端の健康政策の研究に取り組むと共に、科学的根拠に基づく健康増進や支援システムの普及に努めている。

前編のお話

  1. ① コロナ禍による健康二次被害とは?
  2. ② リモートワークでこんなにも運動量が減っている。
  3. ③ 健康二次被害の対策には「運動」が有効。
Cyclingood
コロナ禍によって多くの人が健康を意識するようになっている
ようですが、実際はどうなのでしょうか。
外出自粛やテレワークの増加など、私たちの生活は大きく変わりました。 通勤することが減ったり、外出を控えた生活が続くと、 自然と活動量や運動量が低下します。この状況が長く続くことで、 免疫機能の低下をはじめとする健康二次被害が問題になってきています。
Cyclingood
その健康二次被害とはどういうものでしょうか?
外出を控えた生活を発端に、運動や身体を動かす機会が減る、食事の量が極端に増える、あるいは減ってしまう。 そして人と話すこともあまりないという状況になっていきます。このような生活環境によって、 肥満、筋力の低下、ストレスや不安の増加、低栄養による栄養不足という状況を 引き起こしやすくなります。
Cyclingood
確かにコロナ禍で「太った」「ストレスがたまる」という声は
特によく聞きますね。
このような状況が長く続くとどうなるでしょうか。体重や体脂肪増加によるメタボ、 筋力低下によるロコモなどの生活習慣病が悪化しやすくなるのは明白です。 高齢者にとっては人と会う・話す機会が減ることで認知機能の低下が深刻になります。 そして全世代において免疫機能が低下し、病気の重症化やうつの増大という 健康二次被害につながっていきます。
Cyclingood
外に出られない、出にくいという状況が長く続くことで
いつの間にか心身への影響が深刻化して「二次被害」になると...。
そうです。この健康二次被害は、子どもから高齢者まで全世代に見られています。 誰もが関係のない話ではないということですね。私たちは都内の健康系企業との合同研究で1カ月の歩数を調査したのですが、 テレワーク導入による歩数が、約100人の平均値でオフィス勤務時に比べて1日あたり 約30%減、約4,000歩も減っていることがわかりました。
Cyclingood
社会人の歩数が4,000歩も減少!
それだけ運動していない生活になっていることがよくわかりますね。
そうでしょう。外出自粛=運動不足ととらえて、健康二次被害が起こってしまう前に早めに対策しなければなりません。 新型コロナウイルスはなかなか収束のめどが立たないため、 さらなる長期化に備えて生活習慣を見直しておく必要があります。
Cyclingood
先生、長期化への備えとして必要なのは
やはり「運動」なのでしょうか。
その通りです。健康二次被害を引き起こす発端が「外出自粛」、つまり活動量や運動量の低下です。 まずは運動を意識的に取り入れていくことが今できるとても重要な対策です。
Cyclingood
最近は「免疫」に関心が高まっているようですが、
この免疫機能の向上にも運動が有効だということですね?
コロナにかかりたくないことから免疫機能を高めたいというニーズが高まっているようですが、 免疫に大きな影響を与えるものの一つが「運動」で、 運動不足が免疫を下げることは科学的に立証されています。でもだからといって、 普段運動習慣のない人がいきなり激しい運動をする必要はありません。
Cyclingood
では、普段運動していない人にとって、
どのような運動が免疫機能の向上に効果的なのでしょう?
運動をしないこと、過度な激しい運動をすることが免疫を下げます。 適度な運動量があると免疫力が向上するのが明らかとなっています。自分の体力に応じた中強度レベル、 つまりは少し息が上がる程度のニコニコペースで毎日の運動を心掛けましょう。
Cyclingood
ニコニコペースの運動は、免疫だけでなくメタボの解消や
ストレスによる抑うつにも有効なのでしょうか。
もちろんです。運動は脳に快適なホルモンを増やすことが 研究で示されているため、ストレスの発散や解消にとても有効。 脂肪燃焼には有酸素運動が効果的なのは皆さんもご存知の通りです。 このコロナの状況下では個人ごとに何らかの心身の変化、不調を感じていることと思いますが、 まずは軽い運動で不調の改善を図っていただきたいですね。
Cyclingood
ストレス対策や免疫機能の向上など、
制限のあるコロナ禍で気になる健康づくりには、
まず「運動」を習慣化することが一番。
後編では自転車運動の有効性について考えていきます。

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