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アンチをFunに変えるエイジング。 ➊


「抗加齢」を意味するアンチエイジング。若く見られたい、衰えたくないという思いは、年齢を重ねるごとに強くなるのかもしれません。
私たちが「抗いたい」のは、加齢よりも老化。そこで今回は、長年にわたり老化と活性酸素の関係の研究をされている石井教授に、老化とは何か、どのようなメカニズムで進行するのか、そして老化を遅らせる方法があるのかを教えていただきました。
加齢を抗うよりも、受け入れ、楽しむFun Agingの方法、すべての世代の方に読んでいただきたい内容です。
2022.02.18 更新

東海大学 健康学部 健康マネジメント学科
石井 直明 教授
1951年神奈川県生まれ。東海大学工学部応用物理学科原子力工学専攻卒業。1986年より2年間、アメリカ・ロッシュ分子生物学研究所に留学。東海大学医学部教授を経て、2019年から2021年3月まで同大学健康学部特任教授。医学博士。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。
前編のお話
- ① そもそも老化って何?
- ② 加齢とともに細胞機能が低下する理由。
- ③ 老化を促進する「酸化」と「糖化」。
先生、まずは「老化」とは何かをご説明いただけますか?

最近、「加齢」と「老化」が混同しているように見受けられますが、加齢とは単なる時間経過であり、老化はその時間経過によって起こる生理的機能の低下です。人は誰しも年齢を重ねると、老化現象が起こります。これは病気とは異なり、ゆっくりと起こるので、自覚しにくいという面があります。
白髪になったり、肌のたるみを感じたり。
老化現象は誰にも起こるものなのですね。
老化現象は誰にも起こるものなのですね。

では「老化とは何か」についてご説明しましょう。
老化は2つに分類され、ひとつは誰でも身体のどこにでも起きる「生理的老化」、もうひとつは誰にでも起こるわけではないけれど、加齢によって増える疾患による「病的老化」です。生理的老化は止めることはできませんが速度を遅らせることができ、病的老化は発症させないことは可能だと考えられています。
老化は2つに分類され、ひとつは誰でも身体のどこにでも起きる「生理的老化」、もうひとつは誰にでも起こるわけではないけれど、加齢によって増える疾患による「病的老化」です。生理的老化は止めることはできませんが速度を遅らせることができ、病的老化は発症させないことは可能だと考えられています。
遅らせることができる「生理的老化」と、
発症させないことが可能な「病的老化」。
なんだか希望がもてそうです。
発症させないことが可能な「病的老化」。
なんだか希望がもてそうです。

次にこうした老化がなぜ起こるのかについて考えましょう。
加齢によって不調や病気になりやすいのは、臓器や器官の機能低下が主な要因ですが、これは臓器や器官の細胞そのものの機能が低下していることに由来します。実際、 60代頃から各臓器の重量も減少していきます。
加齢によって不調や病気になりやすいのは、臓器や器官の機能低下が主な要因ですが、これは臓器や器官の細胞そのものの機能が低下していることに由来します。実際、 60代頃から各臓器の重量も減少していきます。
臓器の重量が減っていくということは、臓器を構成している
細胞が減っているということでしょうか?
細胞が減っているということでしょうか?

そうです。加齢とともに機能を大きく損なった細胞が細胞死(アポトーシス)を引き起こしていることが主な原因です。ではなぜ、加齢によって細胞の機能が低下していくのでしょうか。この件についてこれまで多くの研究者たちが仮説を立ててきました。
なんとなく、高齢になると細胞が弱っていく
イメージがありますが...。
イメージがありますが...。

そのイメージは主に生物も自然法則に従っているとする「擦り切れ説」に近いですね。その学説とは異なるのが、老化は寿命遺伝子に組み込まれていると考える「遺伝子プログラム説」で、諸説ある中、細胞の機能低下をもたらす原因は主にこの2つに絞られましたが、この2つの説は両立しないものとして長らく議論されてきました。
ではいったい、老化が進む要因は
何だと言えるのでしょうか?
何だと言えるのでしょうか?

この2つの説を結びつけるのが、活性酸素です。私は長年にわたる研究で、活性酸素が老化を促進することを分子遺伝学的に証明しました。自然の摂理に従って細胞が擦り切れていくことは生活環境に関わり、また活性酸素の過剰は細胞・遺伝子障害につながります。細胞そのものを老化させる重要な要因が活性酸素、つまりは身体のサビ=酸化であることを突き止めたのです。
身体のサビ、酸化が老化に深く関わっているのですか!?

そうなのです。呼吸で酸素が体内に入り、エネルギーを作る過程でその数%が活性酸素になります。これ以外にも喫煙、不規則な生活、過激な運動、肥満などによって過剰に活性酸素が増えすぎる、つまりは身体のサビが進行することで細胞を傷つけ、機能を失わせてしまいます。ということは、活性酸素を増やしすぎないことで、細胞の損傷を軽減できることになります。
過剰な活性酸素の発生を抑えるためにも、
生活習慣を正すことが大切なのですね。
生活習慣を正すことが大切なのですね。

生活習慣で意識しなければいけないのは酸化だけではありません。もうひとつの重要なキーワードが「糖化」です。糖化とは、食事から摂った余分な糖質が身体のタンパク質と結合し、タンパク質の変性・劣化をもたらすことです。この変性したタンパク質はAGEsと呼ばれ、増えすぎると肌のくすみや弾力の低下などの見た目の老化に加え、動脈硬化のリスクも高まります。
肌のくすみなど、見た目にも影響を与える「糖化」。
糖質の摂り過ぎも意識しないといけないですね。
糖質の摂り過ぎも意識しないといけないですね。

糖尿病の人で100歳を超える長寿者が少ないことからも、AGEsが 老化の促進に深く関わっていると言えます。老化を遅らせたい、病気にかかりたくない、その願いを実現するにはまず「酸化」と「糖化」を意識することがとても重要。つまりアンチエイジングとは、日々の健康管理そのものなのです。
アンチエイジングとは日々の健康管理。
年齢に関わらず、酸化や糖化を意識した生活習慣を
取り入れることで、老化を遅らせる可能性が高まるようです。
後編では具体的な老化防止の方法を紹介してしていきます。
年齢に関わらず、酸化や糖化を意識した生活習慣を
取り入れることで、老化を遅らせる可能性が高まるようです。
後編では具体的な老化防止の方法を紹介してしていきます。
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