Health ヘルス
Theme.26
アンチをFunに変えるエイジング。 ➋
「抗加齢」を意味するアンチエイジング。若く見られたい、衰えたくないという思いは、年齢を重ねるごとに強くなるのかもしれません。
私たちが「抗いたい」のは、加齢よりも老化。そこで今回は、長年にわたり老化と活性酸素の関係の研究をされている石井教授に、老化とは何か、どのようなメカニズムで進行するのか、そして老化を遅らせる方法があるのかを教えていただきました。
加齢を抗うよりも、受け入れ、楽しむFun Agingの方法、すべての世代の方に読んでいただきたい内容です。
2022.2.22 更新
東海大学 健康学部 健康マネジメント学科
石井 直明 教授
1951年神奈川県生まれ。東海大学工学部応用物理学科原子力工学専攻卒業。1986年より2年間、アメリカ・ロッシュ分子生物学研究所に留学。東海大学医学部教授を経て、2019年から2021年3月まで同大学健康学部特任教授。医学博士。専門は老化学、分子生物学、健康医科学。
後編のお話
- ① 老けない身体への近道は、栄養にあった。
- ② 負荷を調整できる自転車運動は老化予防に効果的。
- ③ 若返りホルモンの分泌を促す良質な睡眠。
身体の酸化と糖化を防ぐためには、
どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。
どのようなことに気をつけたら良いのでしょうか。
一番の方法は食事です。食生活が寿命を決めると言っても過言ではありません。酸化を防ぐ抗酸化力をつけるためには、今の日本人に圧倒的に不足しているビタミンとミネラルを摂ることがとても重要です。野菜を食べているから大丈夫という人でも、昔に比べて野菜そのものの栄養素が減っていることを意識して、より積極的に摂っていただきたいですね。
糖化を防ぐためには、やはり糖質の摂り過ぎに意識することが重要なのですね?
もちろんそうです。ジュースやスイーツなど、甘いものの美味しさはひとしおですが、それだけに習慣化しやすくなります。砂糖の摂取を控えることで、糖尿病だけでなく、脳や心臓などの血管障害を防ぐとともに、身体の中から若々しさを保つことができるでしょう。
では先生、運動は老化予防に効果がありますか?
もちろん運動も老化を防ぐ大切な生活習慣です。適度な運動は抗酸化能力を高め、足腰などの移動機能が低下するロコモティブシンドロームの予防にも効果的です。しかし、運動する場合も栄養には気をつけてもらいたいですね。運動によって筋肉の修復に必要なタンパク質や、エネルギー代謝が上がることでビタミン・ミネラルがより必要になるため、こうした栄養をしっかり摂ることで、運動の効果を上げることができます。
運動の中でも、自転車運動はどのような老化予防が期待できるでしょうか?
介護が必要となった原因の1/4は運動器が関係しています。関節を傷めたり、転倒や骨折から寝たきりになったりというケースが多いようです。まず自転車運動は、こうした運動器障害を防ぐために有効な下半身の筋肉増強に効果があり、軽く息が弾む強度によって心肺機能を高め、持久力をつけることができます。つまり、脚筋力と持久力の向上によって、ロコモティブシンドロームの予防が可能になると言えます。
コケない身体づくりや体力アップ以外にはいかがでしょう?
そうですね、やはりウォーキングやジョギングに比べて移動距離が長いため、多様な景色を楽しめるといった精神的な刺激もあるでしょう。また変速機によって負荷を変えることができる、つまりは体調に合わせた運動ができることも、運動を習慣的に長く続けられることにつながるでしょうね。
負荷の強い運動にならず、自分の体力に合った適度な運動を習慣的にできることが老化予防に良いということですね。
そうですね。今日は筋肉に負荷がかかったなという日や距離を長く走った日には、タンパク質とビタミンやミネラルを多めに摂って、せっかくの運動効果を損なわないようにしてもらいたいです。こうして体力をつけていくことで、見た目の若々しさも変わってくるでしょう。
栄養と運動以外に、老化を予防する生活習慣があれば
教えていただけますか?
教えていただけますか?
老化予防には良質な睡眠も不可欠です。睡眠には細胞を修復する働きがあり、それを担っているのが成長ホルモン。「若返りホルモン」とも呼ばれるこのホルモンは、加齢とともに分泌量が減るため、年齢が高い人ほど分泌を促進する工夫が必要です。成長ホルモンの分泌がピークを迎えるのは入眠後30分から1時間程度で訪れる最初のノンレム睡眠。このときの深い眠りを妨げないように就寝前は食事やカフェインの摂取、スマホなどの強い光を避け、心地よくスムーズに入眠できるようにしましょう。
若返りホルモンの分泌を促すためには、最初の深い眠りが重要。
これも実践していきたいです。
これも実践していきたいです。
朝、目覚めたときは、太陽の光に当たることで体内時計の狂いをリセットできます。体内時計が整っていると、抗酸化作用のあるメラトニンなど健康を維持する体内物質の分泌が整い、また熟睡しやすくなるという好循環を生み出します。栄養、運動、質の高い睡眠を実践して、健康という土台をしっかり作ることが、本質的なアンチエイジングになっていきます。
先生がおっしゃる「健康管理こそがアンチエイジング」
という意味がよくわかりました。
という意味がよくわかりました。
そもそも人は100年生きられる遺伝子を持っていますが、現在の日本人男性の平均寿命は81歳です。この約20年の差を生んでいるのは、基本的に生活習慣病に深く関わる各種疾患。正しい生活習慣から細胞の生きる力を長く保つことで身体の老化を遅らせ、いくつになってもやりたいことが自由にできる人生を皆さんに過ごしてもらいたいですね。
適切な栄養、運動、睡眠を生活に取り入れることは、
単に「健康になる」だけでなく「老化を防ぐ」ことにも。
人生を長く楽しむためには、細胞から衰えさせない
生活習慣の実践が大切だと改めて感じました。
石井先生、ありがとうございました。
単に「健康になる」だけでなく「老化を防ぐ」ことにも。
人生を長く楽しむためには、細胞から衰えさせない
生活習慣の実践が大切だと改めて感じました。
石井先生、ありがとうございました。