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いまこそ必要な「気持ちよさ」。その効果とは? ➋
先の分からない状況が長引き、知らず知らずのうちにストレスが溜まっていませんか。この状況下でクリアな心を保つためには、意識的に自分が「気持ちいい」と思える瞬間をつくることが大切なのだそう。でも、気持ちよさってそもそも何なのでしょう?今回は、知っているようで知らない「気持ち」のこと、気持ちよさが心身に与える効果、そして自転車によって気持ちよさをつくる方法について。感性工学を研究する井口先生にお話をお伺いしました。
2021.6.11 更新
中京大学 工学部 機械システム工学科
博士(工学) 井口 弘和 教授
1976年東京理科大学卒業。1979年 (株) 豊田中央研究所に入社し、感性工学による快適性、安全性を追究した自動車の開発に従事。1996年名古屋工業大学大学院博士号取得の後、2003年日本人間工学会認定人間工学専門家資格取得。2004年から中京大学教授(感性工学研究室)。2013年~2016年工学部学部長。
中編のお話
- 気持ちよさの種類と、自転車によって気持ちよさをつくる方法
- ① 最も日常的な気持ちよさ「爽快感」
- ② 五感を研ぎ澄ませる「高揚感」
- ③ いま、この瞬間に集中する「解放感」
- ④ 小さな目標を成し遂げる「達成感」
一言で「気持ちいい」と言っても、いろいろありますよね。
具体的な種類を教えてください。
具体的な種類を教えてください。
細かく分類すると多岐にわたるので、代表的な5つをご紹介します。まず、日常に最も身近な「気持ちよさ」と言えるのが「爽快感」です。さっぱりして清々しい感覚や心持ちのことで、柑橘系の味や香り、炭酸飲料の喉ごしなどさまざまな刺激から感じることができ、掃除や断捨離によって「スッキリした!」という精神的な爽快感を感じることもできます。
運動をしたときにも爽快だと感じることがあります。
爽快感を運動によって得る場合は、ぜえぜえハアハアと息が上がって疲労を感じるほどの激しい運動よりも、ウォーキングやジョギングといった軽く汗ばむ程度が効果的です。運動後のシャワーも爽快で気持ちいいものですよね。
自転車でスイスイ走るのも気持ちいいです。
自転車で爽快感を感じるには、スピードを少し速く、リズミカルなペダリングを意識すること。さらに、風や自然を感じることが爽快感につながります。クルマや人・自転車の通りが多い場所では思い通りの走行ができず、かえってストレスになってしまうので、通勤や通学では通行量が少ない道や時間帯など、スイスイ走れる自分だけの「爽快ルート」を探してみるのもおすすめです。
自転車に乗っていて、新しいお店を見つけたときに「おっ!」と
テンションが上がるのも「気持ちよさ」ですか?
テンションが上がるのも「気持ちよさ」ですか?
それは「高揚感」ですね。何かワクワクすることが起こったときや、起こる前に生まれる気持ちです。ほかにも、衝動買いしたくなるほど好みの服を見つけたときや、旅先で偶然写真に残したくなるような風景に出合ったとき、スポーツの手に汗握る試合展開、舞台や芸術を観たときの心が洗われる感覚も高揚感です。
生活の中で意識的に高揚感を感じるコツはありますか?
大切なのは、外部からの刺激を受け流さず、五感を研ぎ澄ませて「好き」「ワクワクする」という感覚を素直にキャッチすることです。いちばん簡単な方法は、自分がワクワクするモノ・コトを生活に取り入れること。サイクリングでも、おいしいとウワサのパン屋さんまで行ったり、自分の心が動く「好きな景色」や「キレイな花」を探したりしてみましょう。
いつも通る道でも、ワクワクやドキドキを
見つけることが大事なのですね。
見つけることが大事なのですね。
次に、「解放感」があります。これはストレスがないことではなく、多種多様なストレスの要因を「考えずに済む」状態を意味します。例えば、読書や釣りなど自分の好きなことに集中することで解放感が得られ、特に「いま、この瞬間」に集中するマインドフルネスでストレスから解放された状態になります。集中によってドーパミンが分泌されて気持ちがよくなり、さらにストレス要因である悩みや考え事から意識を引き離すことで、心をのびやかに解放することができます。
自転車に乗っているときは、この状態に近い気がします。
その通り。自転車走行中、意識はペダリングに集中します。「いま、この瞬間」に集中し、悩みや考え事、余計な情報から離れることで、脳は自然と解放感を得ることができます。プレゼンを控えているなどストレスや緊張を感じる日は、自転車通勤で少し遠回りしてのびのび走ってみると、心のモヤモヤや不安が落ち着きやすくなります。
ひと仕事終えた帰り道も、いつもより解放感を
強く感じられそうです。
強く感じられそうです。
仕事に関連する「気持ちよさ」には、「達成感」があります。目標を成し遂げたときや目的地にたどり着いたとき、できなかったことができるようになったときに「やった!」「やりきった!」と感じるのが達成感です。
大仕事を成し遂げたときのような、
ちょっと特別な「気持ちよさ」でしょうか。
ちょっと特別な「気持ちよさ」でしょうか。
実はそうでもなく、日常でも簡単に味わうことができます。そのために必要なのは、小さな目標を設定することです。「何時までにこの仕事を終わらせる」など、自分が達成しやすい目標を立ててクリアすることで気持ちがよくなり、その快感の積み重ねが、やりがいや自己肯定感につながります。
小さな目標でいいのなら、自転車でもできそうです。
例えば、いつもは途中で足がついてしまう坂道を
一気に登り切る!とか。
例えば、いつもは途中で足がついてしまう坂道を
一気に登り切る!とか。
ほかにも、普段「ちょっとそこまで」の短距離移動に自転車を使っているなら、買い物に数キロ先のスーパーをめざすのもいいでしょう。目の前にある、「できるかなあ、だけどやってみよう」という小さなチャレンジをつくること。そして大切なのは、達成できる目標であることです。
爽快感・高揚感・解放感・達成感。
どれも自転車に乗ることで簡単に取り入れられそうです。
5つめの「気持ちよさ」と自転車の可能性、
その波及効果は後編へ。
どれも自転車に乗ることで簡単に取り入れられそうです。
5つめの「気持ちよさ」と自転車の可能性、
その波及効果は後編へ。