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やる気につながる、体力新事実。 ➋
「体力」と聞いて何をイメージしますか?いざというときの瞬発力、持続できるスタミナ、もしくは病気にならない身体を思い浮かぶ人もいるかもしれません。実はこれ、すべて「体力」。体力はさまざまな要素で構成され、中でも「行動体力」に分類されているのが実際に計測でき、強化できる体力です。自転車でどんな体力を向上できるのか、星川先生に教えていただきます!
2018.08.09 更新
常葉大学 健康プロデュース学部 心身マネジメント学科
星川 秀利 教授
1993年早稲田大学大学院人間科学研究科修士課程修了。1993年武蔵丘短期大学健康生活科、2009年より浜松大学(現:常葉大学)健康プロデュース学部心身マネジメント学科にて教鞭をとる。研究分野は運動生理学、スポーツバイオメカニクス。
後編のお話
- ① 自転車で「脚筋力」を高める方法。
- ② 自転車で「持久力」を高める方法。
- ③ 平衡性と敏捷性の向上にも期待大。
- ④ 体力がやる気に、生きるチカラに。
それでは先生、自転車運動で期待できる
筋力アップの方法からお教えください。
筋力アップの方法からお教えください。
体力に自信がない、つまり運動習慣のない人でも自転車はラクに負荷を感じずに運動できるというメリットがあります(詳しいデータはこちら)。まずは軽めのギアで1分間70~80回転程度の高速ペダリングでの走行を週3回程度継続していただきたいですね。物足らないと感じたら、ギアを重くするとさらに筋力アップに効果が出ると考えられます。
自転車の場合、変速機も
トレーニングに活用できるんですね。
トレーニングに活用できるんですね。
ええ、変速機を使えることは自転車運動の特徴ですね。体力レベルに応じて負荷をかけたい場合は変速機で調整するといいでしょう。変速機を重く・軽くしてインターバルトレーニングしたり、上り坂も最初は軽いギアでチャレンジして、徐々に重いギアに変えてみても脚筋力を上げるトレーニングになります。
それでは先生、持久力を上げるには
どのような運動が必要になるのでしょう?
どのような運動が必要になるのでしょう?
全身持久力は運動を続けられる力であり、「すぐに息が上がってしまう」という人はこの持久力が低下している可能性が高いです。全身持久力を表す指標のひとつが最大酸素摂取量。これは1分間に体内に取り込まれる酸素の最大量で、息が少し弾む程度の運動を続けて行うことで酸素を取り込む量を増やし、持久力を高めることができます。
ではその息が弾む状況を作るような
自転車運動を続けると持久力が上がるのですね?
自転車運動を続けると持久力が上がるのですね?
そうです。適切な運動強度は最大酸素摂取量の50~60%と言われており、これが息が少し弾む状態です。同じスピードなら、軽いギアと重いギアで比べた場合、軽いギアでくるくるとペダルを回す方がエネルギー消費量が高まる研究結果もあります。どのくらいのギアや回転数が自分にとっての負荷になるかを意識して、1回あたり20分以上走行すると持久力アップが期待できます。
では次に平衡性について。
これはバランス力ですね?
これはバランス力ですね?
そうです、バランス力です。自転車は手と脚とお尻の3点でバランスを維持して走るという特性から、複数の動作を同期させるコーディネーション能力の向上につながると考えられます。特に上体を倒して体幹を使うロードバイクやマウンテンバイクほど効果が高いでしょう。
最後に敏捷性についてはどうでしょう?
敏捷性についてもエビデンスが無いのですが、早い回転数のペダリングによって身体反応が高まる可能性は十分にあるでしょう。スピードに乗って走るなかで、さまざまな判断と対応をする自転車運動で敏捷性が磨かれていくと想像できます。
先生、このような体力の維持・向上によって
さまざまな波及効果があると感じるのですが...。
さまざまな波及効果があると感じるのですが...。
体力が高まると、現実的に「疲れにくい」身体になります。それは同じ作業をするにも余裕が生まれるということになります。私は「生きるための余力」だと捉えているのですが、ギリギリで仕事をするのと余裕を感じて仕事をするのでは気持ちのもちようも変わってきます。身体的な体力をつけると精神的な体力にもつながり、やる気や意欲につながっていきます。単に身体を動かすチカラとしての体力ではなく、生きるチカラとしての体力として心身をパワーアップしてもらいたいですね。
身体的な体力が、やる気につながり、
「生きるための余力」になるとは新たな発見でした。
星川先生、ありがとうございました。
「生きるための余力」になるとは新たな発見でした。
星川先生、ありがとうございました。