2019.06.27 更新

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国立研究開発法人理化学研究所
健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム
プログラムディレクター

医学博士 渡辺 恭良 教授

1976年京都大学医学部卒、1980年京都大学大学院修了医学博士、1981年京都大学放射性同位元素総合センター・助手などを経て、現在は大阪市立大学健康科学イノベーションセンター顧問、大阪市立大学名誉教授、一般社団法人日本疲労学会理事長などを兼任。疲労についての著書多数。

後編のお話

  1. ① 身体のサビを防ぐ、質の良い睡眠とは?
  2. ② 抗酸化に良い栄養素について。
  3. ③ ツラくない程度の運動で酸化を防ぐ。
  4. ④ 運動がストレスを解消させる一面も。
Cyclingood
では身体がサビないようにするために
どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか?
まず先ほど説明した休息は、日々の睡眠が深く関わっています。良い睡眠とは何時間寝たから良いというものではなく、朝起きたときに気持ちよく目覚めたか、今日も頑張ろうと意欲的になれているかで判断できます。睡眠中は活性酸素で傷ついた細胞が修復にかかるため、身体と脳を休めることで修復の精度を上げることが肝要です。
Cyclingood
なるほど、質の良い睡眠によって、
細胞の修復をすることが大事なのですね。
それでは食事についてはどうでしょう?
現在、さまざまな研究によって、細胞の酸化防止、つまりは抗酸化に効果的な栄養素がわかってきています。水溶性のビタミンCや身体に蓄えることのできる脂溶性のビタミンE、システインなどのアミノ酸、ミネラルをはじめ、β-カロテン、ポリフェノール、茶カテキンやコエンザイムQ10、鮭などに多く含まれるアスタキサンチンもそのひとつ。これらの栄養素を日々の食事やサプリメントで日常的に摂り入れてもらえたらと思います。
Cyclingood
では先生、運動についてはどうでしょうか?
抗酸化になるのでしょうか?
運動については、疲れない程度の運動強度であれば抗酸化につながることもあると考えられます。酸化された細胞内の物質が血液中に出ると、それを血液の流れで排出することが必要になります。この血流を促すために、軽い有酸素運動は効果的
ウォーキングや自転車運動は良いとされますが、いずれも運動中や運動後にゼイゼイと息が上がるような強度の運動は控え、ツラさを感じない程度の運動を心がけてもらいたいですね。
Cyclingood
一方で、ツラいと感じる運動が抗酸化に適さないのは
なぜなのでしょう?
ツラいと感じる運動、例えば長時間の運動や、高強度の運動をすると、当然ながら疲れます。これは筋肉細胞の疲労でもあり、それだけしっかり修復できる栄養や時間が必要になるからです。ふだん運動習慣の無い人にとってはこの筋肉細胞の疲労が蓄積することで酸化につながるため、できるだけ避けた方が良いといえます。
Cyclingood
なるほど。ではどのくらいの運動量が適切なのでしょうか?
理想的な運動習慣は週3日以上、1日1時間以上と一般的に言われています。実は運動中は筋肉細胞だけでなく脳細胞も活性化されていて、ウォーキングであっても二足歩行で絶妙なバランスを保っているのです。自転車になるとよりバランスを取ることの難易度が上がり、走行中には周辺環境や走るルートなどについて無意識に思考を巡らせているため、また、危険を察知するためにも集中力や注意力を上げているために、いっそう脳細胞を刺激していることになります。
Cyclingood
ということは運動によって、脳も疲労しやすくなるのですね。
そうですね。しかし有酸素運動中には自分の呼吸と運動のリズムを合わせることで自律神経にゆらぎが生まれ、それが気持ちよさにつながるという可能性があるとも言われています。こうした気持ちよさや爽快感によって、酸化が進む原因であるストレスの解消にもつながりやすいという一面もあります。
Cyclingood
自転車運動の場合、その自律神経のゆらぎは
ペダリングで生まれると考えられるのではないでしょうか。
確かにペダリングの周波数と自律神経系のゆらぎとは関連する可能性があります。ただ、その人に合った無理のないレベルの運動を習慣化することで、ストレスの解消や体力の維持向上に努めつつ、疲れやストレスを溜め込まない生活をいかに持続するかが現代人にとってとても重要になっています。加えて、食事、休息、運動のほかにも、抗酸化につながる「笑い」や「仲間とのツーリング」など自分にとっての楽しさや心地よさを感じることを意識的に日常生活に取り入れていただきたいですね。
Cyclingood
抗酸化を意識した生活をすることで、
単に病気のリスクを軽減できるだけでなく、
心地よさや良いコンデションキープにつながる質の高い
生活を送ることができそうです。
渡辺先生、ありがとうございました。