2018.01.26 更新

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名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
博士(人間・環境学) 
髙石 鉄雄 教授

1988年神戸大学大学院卒。1989年名古屋市立大学教養部助手等を経て、2012年より名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科教授。京都大学博士。運動生理学とバイオメカニクスを使って、自転車運動が健康づくりにもたらす効果を研究している。

後編のお話

  1. ① 中強度の運動が気分の落ち込みを解消。
  2. ② 動脈硬化の予防には自転車で心拍に刺激を。
  3. ③ 高齢期の認知症を防ぐには社会性も必要。
  4. ④ 実は運動になる!E-BIKE。
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それでは次に、50代頃から増える更年期症状について。
最近は男性にも起こると考えられているようです。
このテーマは私の専門外なのではっきりしたことは言えませんが、一般論として気分の落ち込みやうつ状態を改善する方法のひとつに有酸素運動がいいと考えられています。中強度の運動で交感神経をしっかりと活性化させることで、運動後に副交感神経の活動が高まり、気分を落ち着かせるようです。身体活動に抑揚をつけることが大切ですね。自転車運動で中強度であれば、少し息が弾むくらいの強さとなります。
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60代頃からは心疾患リスクが気になります。
これは血液が関係しているのでしょうか?
心筋梗塞などに代表される心疾患を引き起こす主な要因は動脈硬化です。実際に血管が硬くなると同時に血管内が狭くなって高血圧を引き起こし、血管自体に負担をかけます。その負担に耐え切れずに血管の内側が破れて血栓が作られ、血流が止まった状態が「梗塞」です。
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つまり血液の状態を正常にして、
動脈硬化を予防することが必要なのですね?
そうです。コレステロール値や中性脂肪値、血糖値などが高いと、血液の粘性が高くなり、流すのに高い圧力が必要となります。これがいわゆる血液ドロドロ状態です。血液サラサラ状態とはこれとは逆に、高い圧力をかけなくてもスムーズに血液が流れる良い状態を示す言葉で、有酸素運動を習慣的に行うことで、この状態が得られます。
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自転車運動でも血液サラサラ状態にする働きが
あるのでしょうか?
自転車運動の場合、路面の変化などによって運動強度が変動し、心拍数をアップダウンさせやすい状態になります。このような強弱のある運動は、脂質や糖質を消費して血液の粘性を下げる効果だけでなく、血管の緊張を抑える物質の分泌を促すことで血圧を下げ、心疾患や脳血管疾患を引き起こすリスクを低下させます。
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続いて70代頃からは認知症が心配になってきます。
脳機能と運動は密接に関わっているようなのですが。
このテーマも私の専門外なので明確に答えられませんが、最近は運動で認知症を予防できるという研究が盛んに行われています。これを読んでいらっしゃる方はまだお若い方が多いと思うのでなかなか自分ごとにはならないでしょうが、私自身、脳機能を維持するには社会性も重要だと思っています。自転車に乗って出かけ、仲間と会う、好奇心を満たすということができる状況を早くから作っておくことも大切ではないでしょうか。
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最後に先生、電動アシスト機能を搭載したスポーツバイクが登場していますがこれは健康づくりに有効なのでしょうか?
まったく運動していなくて体力に自信がない人、加齢によって外に出ることが億劫になってしまっている人にとって、その人の体力をカバーできるという安心によって外に出る、ペダリングをして足を動かす機会となるのはとても意味があることだと思います。実は私たちの実験で、アシスト機能を使っても運動になる可能性が示唆されているのです。
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アシスト機能を使っても運動になる!
それは興味深いニュースですね。
道路の勾配によって変化するため一概には言えませんが、運動強度や筋活動は運動としての基準を満たすケースが見られ、決して「運動にならない」とは言い切れない結果となっています。遠くまで走りたいけど自信がない、初めてのサイクリングに挑戦したい、そういう人にも運動を楽しむひとつのツールとして使ってもらいたいですね。ただし充分に体力と筋力のある人は、あまり頼り切らずに自分でしっかりこぐことを意識してください。
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長い人生の中で起こりうるさまざまな身体の変化と症状を防ぎ、改善させるために自転車をはじめとする有酸素運動が有効であることがわかりました。髙石先生、ありがとうございました。

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