2017.04.28 更新

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早稲田大学人間科学学術院
教育学博士・博士(心理学) 
竹中 晃二 教授

1975年早稲田大学教育学部卒業。1990年Boston University 大学院博士課程修了。Doctor of Education(Boston University)、博士(心理学)九州大学。専門は健康心理学、応用健康科学。総合的な健康プログラムとしてのヘルスプロモーション活動の実践およびスモールチェンジ方略を用いた健康づくり行動の普及啓発などを行っている。
Cyclingood
それでは先生、まったく運動する気のない人に
運動を意識付けするにはどうしたらいいでしょうか?
運動する気のない人は、運動をはじめることを0か1で考えるのではなく、0.2や0.3レベルの「できること」からゆるやかにはじめることが大事です。家事に精を出す、歩く機会を増やすなどの活動量を増やし、できる範囲で身体を動かすことを当たり前にしていくことで運動に対するハードルを下げ、少しずつ運動できる自分に近づいていきます。何もしないよりも、わずかなことで良いので何かをするという感じです。
Cyclingood
自転車運動をはじめたくても機会が無い人に対しては
どのようなきっかけ作りがいいでしょう。
自転車運動の場合、新たに自転車を買うことは難しいでしょうから、まずは最近増えているスポーツバイクのレンタルサービスを利用してみるのはどうでしょうか。思わぬ軽快さや気持ち良さにふれ、「もっと乗りたい」という気持ちにつなげていくといいですね。ここまでくれば、もう準備ステージに突入です。
Cyclingood
では、自転車に乗れる環境が整った準備ステージでは
どういうことに気をつけるべきでしょうか。
その人に合った運動レベルを見極めることが重要です。無理をしすぎて辛くなると気持ちが萎えてしまいますからね。できる範囲の運動計画を立て、例えば移動手段を自転車に変えて乗る機会を増やす、自転車運動を行う計画をカレンダーに書き込んで目にふれやすくする、自転車やヘルメットを玄関に置くなど、自転車に乗るためのキッカケや合図を生活の中に仕掛けていきます。
Cyclingood
自転車に乗る、運動をするんだということを
自分自身で意識付けするために仕掛けを設けるのですね。
そうです。運動に関するモノや情報を目にふれる所に置くだけでずいぶん効果があります。ただこのステージでは運動習慣がまだ定着していない状況。皆さんも思い当たる節があるかと思いますが、やらない理由を挙げたくなってくるんですね。逆に、運動することでどんないいことがあるのかを自分で考えたり、周りの人に「私は運動しています」と宣言して、運動を続ける拘束力を高めると良いでしょう。
Cyclingood
この準備ステージから実行ステージにアップするには
少し努力と工夫が必要になりますね。
ここを踏ん張って、運動を続けられているという自信をもつことも重要になります。周りの人に「すごいね」と褒めてもらったり、運動できなかった頃の自分を振り返って自信を増強させていくといいですね。そして雨でできない、時間がないなどのバリアをどのように克服するかという具体策を立てることで、実行ステージの6カ月の壁を乗り越えやすくなると思います。
Cyclingood
運動の習慣をつけることが簡単なことではなく、
自らの工夫が必要なことがよくわかりました。
もちろん周囲の協力はとても大きな力になりますが、人は「はじめられない」「止めてしまう」ものだと理解し、自分の中で運動そのものを楽しむ工夫を常に行っていくことが、運動習慣を定着させる一番の方法です。そして運動を続けることで「できている」という感覚(自己効力感)が得られれば、続けることがラクになっていきます。
Cyclingood
できているという感覚の
「自己効力感」とは何でしょうか?
自分に対する有能感、つまりは「自信」ですね。できていなかったことができるようになることは、その人の充足感や達成感、満足感に結びつき、単に健康になるだけでない大きな価値をもたらします。自己効力感が高まると、「もっとやりたい」という挑戦的な行動にもつながりやすくなります。
Cyclingood
運動を通じて自信をつけることで、健康になるという
だけでない人生の充実感を得ることができますね。
皆さん、仕事や趣味、家族との時間など、やりたいことや大切にしていることがあると思います。それをかなえるための道具が健康であり、その達成方法のひとつが運動です。自分の人生を充実させるために、不可欠な健康づくりをどうすれば楽しんで取り組めるかを考え、あらゆる工夫を重ねて長く続けていただければと思います。
Cyclingood
自ら工夫して運動そのものを楽しむ生活の
大切さがよくわかりました。
竹中先生、ありがとうございました。