2016.08.19 更新

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名古屋市立大学大学院 システム自然科学研究科
博士(障害科学) 
奥津 光晴 講師

2002年 東北大学大学院 医学系研究科 障害科学専攻 博士後期課程修了。ヴァージニア大学など、国内外での研究活動を経験し、2014年より現職。専門は「運動分子生物学」。運動が筋萎縮や生活習慣病に与える影響を分子レベルで研究しており、メカニズムの解明による健康改善への貢献を目指している。
Cyclingood
先生、そもそも筋萎縮の症状は
自覚できるものなのですか?
知らず知らずのうちに少しずつ骨格筋が減少していきますから、自覚するのは難しいでしょう。ただ、若い頃から運動習慣がある人とない人では、50~60代になったときに骨格筋量に大きな差が生まれます。萎縮のスピードには個人差がありますが、運動をほとんどしない方の中には40代で高齢者並みに筋萎縮が進行してしまっている方もいますね。
Cyclingood
運動には、少なくとも
筋萎縮を遅らせる効果があるのですね。
そうですね、筋萎縮の予防には運動が効果的です。その際には、2つの考え方があります。ひとつは遅筋の維持。もうひとつは速筋の維持です。筋萎縮は速筋で顕著に起こりますから、減少しにくい遅筋を維持し骨格筋の量をできるだけ保つことが予防法として一般的といえます。
Cyclingood
なるほど。遅筋を維持するには、
どのような運動をすればいいのですか?
持久系の運動、例えばウォーキングやジョギングなど、ゆっくりしたペースで動き続ける運動が効果的です。また、負荷が軽い持久的な運動は、運動不足の方でも取り入れやすく、どなたでも取り組みやすい予防法なのではないでしょうか。
Cyclingood
持久的な運動ということは、
自転車運動も予防効果が期待できますよね?
そういえるでしょうね。自転車運動の場合はひざへの負担が小さく、生活の中にも取り入れやすいことが特徴といえます。高齢の方でもムリなくできるでしょうし、運動不足の方にとっても始めやすい運動です。また、自転車運動で使う太ももの骨格筋は、身体の中でも特に大きな筋肉。ほかの骨格筋を使う場合に比べ、より高い代謝促進効果が期待できます。
Cyclingood
大きな骨格筋を使うことで、筋萎縮の予防以外の効果も期待できるのですね。
では、速筋の場合はどうすればいいですか?
レジスタンス運動、いわゆる筋力トレーニングが有効です。運動習慣がない方の場合は特に、腹筋やスクワットから始めることをおすすめします。というのも、大きな骨格筋を使うこれらの筋力トレーニングには、高い代謝促進効果が期待できるだけでなく、ケガをしにくいというメリットもあるからです。
Cyclingood
でも、筋力トレーニングってちょっと大変ですよね…。
速筋を維持することも、やはり大切なのですか?
私は速筋の維持も重要だと考えています。というのも、転びそうになったときに素早く足を出すためには、速筋が重要だからです。また、骨格筋は多様な機能を持っていますから、速筋が少なくなることで何らかの機能が失われるおそれもあります。思い通りに身体を動かし、生涯現役でいるためには、遅筋だけ、速筋だけを維持しようとするのではなく、両方をバランスよく保つことが大切ではないでしょうか。
Cyclingood
ということは、遅筋も速筋も維持することが、
人生を弾ませる、“バネ”になると。
確かに、そう考えることもできるでしょうね。いくつになっても思い通りに身体を動かせることと、ただ移動できるということでは大きな違いです。移動ができる程度の体力の維持は、やりたいことを実現するうえで最低限必要ですが、より自分らしく、若々しくあり続けるには、颯爽と動けることも大切。寝たきりや要介護にならないことを目標に置くのではなく、いつまでも人生を楽しめる身体でいることをめざせば、Quality of Life(生活の質)を高く保ち続けることができるのではないでしょうか。
Cyclingood
骨格筋を維持することが、人生を楽しむ活力になるのですね。
先生、ありがとうございました。