2015.05.11 更新

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信州大学大学院医学系研究科教授
(疾患予防医科学系専攻・スポーツ医科学講座)

医学博士 
能勢 博 教授

1979年京都府立医科大学医学部医学科卒業。研究分野は運動生理学・環境生理学・温熱生理学。研究課題は「暑熱環境下運動時の血液量調節機構とその生理的意義」「運動トレーニング、環境適応過程における体液循環調節機構」など。2012年より現職、2004年NPO法人熟年体育大学リサーチセンター理事長に就任(兼任)。
Cyclingood
それにしても先生、負荷があるといえども「歩く」だけで体力が総合的に向上するのはどうしてなのでしょう?
負荷のある歩行運動は脚の筋力アップだけでなく、全身持久力つまりは体力の向上に効果的な運動です。そのため少し速い歩行を取り入れるインターバル速歩は、通常の歩行以上に効果的に体力、心肺機能を向上させる運動トレーニングになっています。実は人の筋肉の60%は下半身が占めています。 特に脚の筋肉は心臓から送り出され全身に行き渡った血液をまた心臓に送り返す、いわばポンプのような働きを持っており”第二の心臓”とも言われています。したがって脚の筋肉を鍛えることは、より多くの血液を心臓に送り返すことにつながり、心臓はそれを受けて酸素を含む血液をより多く全身に送り出すことができます。 体力の指標として最大酸素摂取量(1分間にどれだけ多くの酸素を体内に取り込めるか)がありますが、インターバル速歩を行うことでこの最大酸素摂取量が増加することが確認されています。
Cyclingood
インターバル速歩は体力と脚の筋力が同時に鍛えられる
一石二鳥の運動なのですね。
他にもキツイ運動をすることの意味はあるのでしょうか。
速歩を続けていると、太ももやスネに筋肉痛を感じる人が多いのですが、この筋肉痛は、筋線維が傷んで炎症を起こしていることで起こります。 そしてこの傷んだ筋線維を修復するためにアミノ酸を取り込もうとします。その際にちょっと余分にアミノ酸を取り込んで筋肉の修復とともに発達を促します。 筋肉痛はいわゆる乳酸が出るレベルの少し強い運動によって引き起こされます。つまり、乳酸が出るほどの少しキツい運動を取り入れなければ、筋肉はほとんど発達しないのです。
Cyclingood
下半身を使う負荷の強い運動で体力が向上するなら
自転車も有効ですね。
もちろんそうです。自転車でも大いに結構。速歩に関わらず「キツイ」と感じるレベルの運動をどれだけ実践できるかが重要ですから。自転車だとまず坂道を上がるのが負荷を得られる一番の方法でしょうね。 上り坂で少し頑張ってペダルをこぎ、平地や下り坂ではゆっくりこいだり足を止めて休むのもいいですね。あとはギアを変速して脚にしっかり負荷がかかるようにするのも有効かもしれません。
Cyclingood
自転車は脚を大きく回転させる動きのため、
特に下半身の筋力アップに適していると思うのですが。
スピードやギアを調整して、自分にとっての負荷をコントロールできるのはとてもいいと思います。それに肥満傾向の人やヒザに痛みを抱えている人にとっては、歩くよりも取り入れやすいのは間違いないです。 脚の筋力をつけて心肺機能を上げ、さらに持久力やパワーをつけていくと、速歩と同様に「20%の法則」を生み出せるかもしれませんね。
Cyclingood
加齢とともに低下する体力を取り戻すことで
健康だけでなくさまざまな面で人生が豊かになりそうです。
私たちが行った実験では、「お腹がへこんだ」「ヒップが上がって脚もスリムになった」「血圧が下がった」「身体が軽い」など、うれしい効果の声がたくさん届きました。 運動の効果を感じることは継続のモチベーションになるだけでなく、自分に自信を与え、社会参加にも積極的になれます。 つまり、人生の好スパイラルを生み出すのです。早い段階から積極的に行うことが重要なので、体力の衰えを実感しにくい30代の方に特に実践してほしいですね。多くの人にこの効果を実感してもらい、豊かな人生につなげていただきたいです。
Cyclingood
筋肉を鍛えることで健康体をつくり、気持ちも行動も
オープンになっていくのは素晴らしいことですね。
先生、ありがとうございました。