2021.12.17 更新

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國學院大學 人間開発学部
林 貢一郎 教授

筑波大学大学院博士課程体育科学研究科で博士(体育科学)を取得。運動生理学や健康科学の分野において、生活習慣病の予防・改善策としての身体活動の役割や、女性と運動の関わりを研究している。

後編のお話

  1. ① 更年期には、自転車などの有酸素運動が効果的!?
  2. ② 有酸素運動の効果は、心の不調にも好影響
  3. ③ 自転車は、女性の生涯に適した運動
Cyclingood
加齢によるホルモンバランスの乱れを整えるには、
筋トレのような無酸素運動よりも、
有酸素運動のほうが有効なのですか?
無酸素運動は瞬発的にグッと筋肉を働かせるため、血圧が急激に上昇しやすく、高血圧や動脈硬化のリスクが高い更年期には注意が必要です。また、無酸素運動は名前の通り、酸素をあまり使わない運動でもあります。血圧の急上昇を抑えながら、全身に血液をめぐらせることができるという点で、更年期症状の緩和やホルモンバランスの改善には有酸素運動がおすすめです。
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中高年の世代になってから運動をはじめても、
遅くはないのでしょうか?
そうですね。更年期女性に中強度の運動を行ってもらったところ、10週間でさまざまな更年期症状が緩和されたというデータがあります。とは言っても、やはり若い頃から運動を習慣化させておくほうがいいでしょう。
Cyclingood
それはなぜでしょう?
閉経後は内臓脂肪の増加や高血圧、認知症、骨密度の低下などの疾患リクスが上昇します。若いうちから運動習慣を身につけ、健康の水準を高く保っておくことで、女性が必ず経験する「閉経」に備えておくことができます。こうして日々のコンディションを良好に保ち、健康で過ごせる期間を延ばすことが、その人の求める「美しさ」をめざすための重要な土台となります。
Cyclingood
更年期には身体の症状以外にも、
集中力の低下や気分の落ち込みなどの症状も現れるようです。
こうした心の健康についてはどうでしょうか。
抑うつなどの精神的な症状にも、有酸素運動は有効です。有酸素運動を行うと、セロトニンという脳内物質が分泌されます。これは「幸せホルモン」とも言われ、ストレスを軽減して気分を安定させる働きがあるため、抑うつ症状を改善できると考えられます。ストレス軽減は、若い世代の方にもうれしい効果ではないでしょうか。
Cyclingood
有酸素運動によって、心身の健康が得られるのですね。
外に出て運動することで、普段とは違う景色を見たり、誰かとコミュニケーションをとったり、日常に新しい刺激を与えることもできます。そうした変化も、精神面に良い影響を与えるのかもしれません。それが自転車であれば無理なく行動範囲を広げることができ、刺激もさらに多くなるでしょう。
Cyclingood
心への刺激という点では、自転車運動はマインドフルネスのような
効果や脳機能の向上にもつながると言われています。
自転車で風をきって走る気持ち良さは、誰もが感じることだと思います。リズミカルな全身運動ですから快感を得やすいでしょうし、走る瞬間に集中することでマインドフルネスの効果や脳機能の向上も期待ができそうですね。
Cyclingood
先生ご自身は、自転車運動の有効性を
どのように考えられますか?
特に筋肉量の少ない女性にとっては、ウォーキングやジョギングよりも筋肉や膝の関節への負担が少ないため、比較的ラクに無理なく長い時間走れることがメリットだと感じます。また、自転車運動を長時間続けることで、脂肪燃焼や心肺機能の強化など、さまざまな健康効果が期待できます。そして、これは自転車に限りませんが、運動は効果が自覚しやすいという点が挙げられます。
Cyclingood
効果を実感することが、「美しさ」や健康にとって
どのように重要なのでしょう?
例えば、健康のために食事制限をしても、すぐに効果を実感することは難しいでしょう。ところが、運動すると気分がすっきりする、寝つきが良いといった実感を得ることができる。変化を実感すると、明日も運動しよう!という意欲が湧いてきます。自転車は走ること自体が気持ちよかったり、自分が思っているよりも遠くまで走ることができたり、意欲が湧きやすい運動かもしれませんね。
Cyclingood
実感が継続につながるのですね。
ダイエットからホルモンバランスの改善まで、
自転車は女性の生涯に適した運動だと言えるでしょうか。
そうですね。月経前症候群(PMS)の予防や症状の軽減、脂肪燃焼や身体の引き締めといったダイエット効果、脳や心への好影響。さらに、年齢を重ねてからはホルモンバランスの改善やロコモティブ・シンドロームの予防など、自転車は生涯にわたって寄り添ってくれるのではないでしょうか。
Cyclingood
そう聞くと、自転車が単なる「移動手段」ではなく、
美と健康へのパートナーとして、
とても頼もしい存在に感じられそうです。
求める「美しさ」は、人によっても、人生のときどきによっても変化します。自分がいまどのような「美しさ」を求めているかを明確に、目標をもって運動を続けることで、身体の変化を実感しやすく、さらにモチベーション維持・向上につながります。
Cyclingood
自分に興味をもち、変化を実感することが、
さらなる「美しさ」へと導いてくれるのですね。
私の研究や実験に参加してくれる方を見ていても実感します。研究に参加することで、健康に関する新たな知識へのアンテナが敏感になったり、参加者同士のコミュニケーションの中から新しく興味を惹かれるものに出合ったり。年齢を問わず、常に自分への向上心をもつことこそが、その人の願う「美」を叶えていく原動力だと考えられます。
Cyclingood
自転車を良きパートナーにすることで、
生涯の中で多様に変化する「美しさ」へ走っていけそうです。
林先生、ありがとうございました。
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