2016.02.12 更新

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流通科学大学 人間社会学部 人間健康学科
博士(学術) 
大島 秀武 教授

1995年大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。1998年3月大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了。1998年4月よりオムロンヘルスケア株式会社に勤務し、体脂肪計や歩数計、活動量計の開発に携わる。2011年4月より現職。
Cyclingood
大島先生、「1日1万歩」という考え方以外にも健康づくりのための基準があるそうですね。
その通りです。
「1日1万歩」は皆さんご存知だと思いますが、2006年からは新たに「活動量」に着目した「健康づくりのための運動基準2006」が厚生労働省によって策定されました。
活動量とは、活動の強度に時間を掛け合わせたもの。
運動だけでなく、掃除機をかける、子どもを抱っこするといった生活活動全般が含まれており、より多くの人が取り入れやすい基準といえます。
2013年には「健康づくりのための身体活動基準2013」に改訂され、「運動基準」が「身体活動基準」へ改称されるなど、より活動全体に着目する基準に変更されています。
Cyclingood
なるほど。身体活動全般が注目されるようになった
理由は何なのでしょうか。
生活習慣病の前段階ともいえる「メタボリックシンドローム」や筋力低下などによって起こる「ロコモティブシンドローム」など、さまざまな現代病が健康問題となっていますが、これらは運動不足を含めた「活動量不足」がひとつの原因です。
運動習慣がない方でも、生活活動の見直しなら取り組みやすいでしょうし、活動量を増やす習慣づけにつながりやすいと考えられます。
また、生活活動のような低強度の活動でも、毎日少しずつ積み重ねていけば十分な活動量を確保でき、健康づくりに効果があるとわかったことも理由のひとつといえるでしょう。
Cyclingood
生活活動も健康づくりに
効果があるというのはうれしいですね。
実際にはどのくらい活動すればいいのでしょうか。
「健康づくりのための身体活動基準2013」では、1週間あたりの理想的な活動量の目安として、強度が3METs以上の活動を「23METs・時」行うこととされています。
活動強度「METs」は、安静時を基準としたときに何倍の強度があるかを表しています。たとえば、歩行の強度は安静時の3倍にあたる3METs。30分(0.5時間)歩いたとすると、3METs×0.5時間で活動量は1.5METs・時です。
1週間で目安となる活動量を達成するには、掃除機をかける(3.3METs)、部屋を片付ける(4.8METs)などの生活活動を1日に合計1時間程度行い、毎日2~3METs・時ずつ積み立てていくといいでしょう。
そのうえでさらに運動を取り入れることが基本となっています。
Cyclingood
生活活動で1日2~3METs・時ならできそうな気がしますね。
では、運動はどのくらいすればいいのでしょうか。
3METs以上の運動を、1週間で4METs・時以上行うことが望ましいとされています。ウォーキングに置き換えると、1週間で合計1時間半程度。通勤・通学で5日間、1日15分ほど歩けばいい計算ですね。
この歩行に加えて早歩きや階段昇降を積極的に取り入れると、4METs・時/週以上の活動量を確保できると共に筋力アップも期待できます。
どうでしょう?これなら普段運動をしていないでも「できそう」と思える手軽さですよね。分割してちょっとずつ体を動かせば効果が期待できる、というのもこの身体活動基準の特徴のひとつ。仕事が忙しいビジネスマンでもひと駅分歩く、エスカレーターをやめて階段を使うというように、日々の中で活動量を増やす工夫をすれば、無理なく続けられると思います。
もちろん、これは健康づくりのために最低限必要な運動量ですから、スポーツ好きな方はこの基準以上の活動量をめざしてください。
Cyclingood
その人のライフスタイルに合わせて工夫すればいいということですね。ということは、職種によっても仕事で得られる活動量が変わってくると思うのですが。
その通りです。
日本で行われたちょっと興味深い研究をご紹介しましょう。
下のグラフは職種別に中高強度(3METs・時以上)の活動を歩行と歩行以外にわけ、1日あたりの平均活動時間を表したものです。
黄色の歩行と緑色の歩行以外の時間や比率は、職業によって大きく違いが出ています。この警備員と清掃員を見比べてみるとよくわかりますね。
警備員の場合、中高強度の活動時間のほとんどが歩行なのに対し、清掃員では約7割が歩行以外。非常に対照的ですが、それでも活動時間に大きな差はなく、活動量もほぼ同じです。
この結果から、歩行以外の活動も日々の活動量増加に貢献していることが明らかです。「歩く」ことを意識することはもちろん大事ですが、仕事を含めた1日の行動次第で活動量を向上できると言えます。
職種別にみた、歩行および歩行以外の中高強度活動時間

Cyclingood
誰にでも取り入れやすい活動量を基準とした健康づくり。
次回は自転車運動のメリットや理想のライフスタイルについてお伝えします。