2017.04.21 更新

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早稲田大学人間科学学術院
教育学博士・博士(心理学) 
竹中 晃二 教授

1975年早稲田大学教育学部卒業。1990年Boston University 大学院博士課程修了。Doctor of Education(Boston University)、博士(心理学)九州大学。専門は健康心理学、応用健康科学。総合的な健康プログラムとしてのヘルスプロモーション活動の実践およびスモールチェンジ方略を用いた健康づくり行動の普及啓発などを行っている。
Cyclingood
運動は「はじめられない」「続かない」ものだという
竹中先生のお話にとても驚きました。
私はこれまで、身体活動・運動行動の開始・継続・逆戻り予防のための指導プログラムや継続のための技法開発にたずさわってきました。最初は「がんばるぞ!」と気合いを入れてウォーキングやジョギングなどの運動をはじめても、何らかの理由で止めてしまう人がほとんどです。続けられないことを前提として、どうしたら運動をはじめ、続けられるようになるのかを長年にわたって研究しています。
Cyclingood
運動をはじめても続けられない人がほとんど...。
そう聞くと少し安心します。
やりたいことをやる、また充実した毎日を過ごすために、ある程度の健康は応援団の役割を果たします。しかし、大抵の人は病気でなければ健康のありがたみを感じていません。「運動しないと病気になるよ」という脅しは、今なんともないと思っている人にとっては何の説得にもなっていないのです。
Cyclingood
運動しないと病気になるという「脅し」は
健康な人に対しては効果が期待できないのですね。
そうです。さらに、健康づくりのためと運動をはじめても何かの理由で止めてしまい、「自分は意志が弱い」と罪悪感を感じ、その結果諦めてしまいます。運動ははじめるのも続けるのも難しいのですが、私たちは対象者を5つのステージに属することを想定して、それぞれのステージ者に働きかけを変えています。
Cyclingood
対象者を5つのステージに分類。
詳しく教えていただけますか。
専門用語では「変容ステージ」と言います。まずまったく運動をする気のない人は「前熟考ステージ」に、まだ運動を行っていないがそのうちにはじめようと思っている人は「熟考ステージ」に、やりはじめたばかり、あるいは不定期だけど運動をしている人は「準備ステージ」に属しています。一般的にはこれら3つのステージのどこかに属している人が多いでしょうね。さらに運動を習慣的に行ってまだ6カ月以内の人は「実行ステージ」に、6カ月以上継続できている人は「維持ステージ」にいます。
Cyclingood
実行ステージ、あるいは維持ステージにいる人は
運動習慣が定着していて問題なさそうですが...。
いえいえ、特に実行ステージの人は運動をはじめてまだ半年足らず。「週に3日以上はウォーキングする!」と決めていても、雨で歩けない、仕事が忙しくて時間がないなど、さまざまな理由で準備ステージに戻ってしまう、つまりは不定期にしか運動を行わない、さらには止めてしまう状況になりがちなんです。せっかくはじめた運動を何らかの理由で途切れさせてしまうのはもったいないですよね。このステージでも逆戻りさせない働きかけや意識付けが重要になってきます。
Cyclingood
なるほど、「途切れる」ことは「止める」の危険信号。
運動を続けることは思った以上に難しいんですね。
そうです。ダイエットのために運動をはじめる人は「マイナス5kgを目標に」とその達成のために努力しますが、ただ頑張るだけでは義務感が募り、ストレスを抱えやすくなります。何かのためにという目的指向で頑張るのは不快感を伴いますが、行動そのものを楽しむと続けやすいのです。「何kgやせる、何㎞歩く」という「目的指向」よりは、健康活動の実践そのものに集中する「行動指向」の方がダイエットや健康づくりに対して意欲的に長く取り組めると考えられています。
Cyclingood
その「行動指向」で運動習慣を定着させるために
自転車は有効だと思われますか?
ええ、もちろん。自転車運動は風を切る爽快感や自身で動かしているという一体感があり、また運動の負荷も調整しやすいので、運動そのものを楽しむ行動指向の健康づくりとしてとても適していると思います。
Cyclingood
後編では運動をしない状況から継続できるようになるまで、
主に自転車運動でのステップアップを紹介!
竹中先生による、運動を「はじめる」「続ける」コツは必見です!

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