2015.04.21 更新

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信州大学大学院医学系研究科教授
(疾患予防医科学系専攻・スポーツ医科学講座)

医学博士 
能勢 博 教授

1979年京都府立医科大学医学部医学科卒業。研究分野は運動生理学・環境生理学・温熱生理学。研究課題は「暑熱環境下運動時の血液量調節機構とその生理的意義」「運動トレーニング、環境適応過程における体液循環調節機構」など。2012年より現職、2004年NPO法人熟年体育大学リサーチセンター理事長に就任(兼任)。
Cyclingood
先生が提唱されている「インターバル速歩」によって、
体力が20%高まり、20歳ほど若返った気分になれるとは本当なのですか?
はい、本当です。5,400名ほどの被験者によるインターバル速歩の実験によって、最大で体力が20%向上し、高血圧や高血糖など肥満の症状が20%改善、そして20歳ほど若返った気分になれ、医療費も20%削減できたという結果が出ています。これを私たちは「20%の法則」と呼んでいまして、多くの方に効果を実感してもらっています。
Cyclingood
それはすごい!興味津々です。
では、インターバル速歩はどのように行えばいいのでしょうか。
とても簡単ですよ。個人がややきついと感じる速歩3分とゆっくり歩き3分を交互に繰り返す運動を1日30分行ってください。これを週4日の頻度で、そうですね4ヶ月ほど継続すれば脚やお尻まわりがスッキリしたように感じられるはずです。私たちの調査では、肥満傾向の人なら2週間程度で体重が1kg程度減少しはじめ、1~2ヶ月もすれば体調の良さや身体が軽くなったと感じられたようです。
Cyclingood
たったそれだけの運動でそんなに変化を感じられるものなのですね。では、速歩とはどのような歩き方をすればいいのでしょう?
専門的な言い方をすれば、個人の最大体力70%以上の負荷になる歩き方です。自分がもう限界だと感じるMAXの体力が100%として、その7割程度のキツさですね。ただ自分ではわからないと思うので、普段歩きよりも歩幅を広めにとり、サッサッサッとリズミカルにいつもよりもやや速いと感じるペースで歩いてみてください。3分歩くと息がはずみ、5~10分で少し汗ばんで、10~20分歩くとスネや太ももに軽い筋肉痛を感じるくらいが、70%程度の負荷と同等になる目安です。
Cyclingood
速歩を取り入れるのと、普通にウォーキングを行うのでは
どのような違いがあるのでしょう?
それがまったく違うのです。私のいる長野県の中高年者を対象に、1日1万歩を普通に歩くグループとインターバル速歩を行うグループに分けて5ヵ月間経過をみました。信州の人は真面目なので、1週間で4〜5日は歩きます。結果、普通歩行のグループは、インターバル速歩のグループに比べて歩数が多く、歩行時間も長かった。しかし、単位時間当たりの歩行中のカロリー消費量はインターバル速歩グループの方が高かったのです。その結果、インターバル速歩のグループでのみ、膝の伸展筋力や屈曲筋力、心肺機能も向上するなど総合的に元気になり、体力を向上できたのです。
Cyclingood
ということは、ただ歩いているだけでは
効果はあまり期待できないと。
その通りです。1日1万歩、ただぶらぶら歩いているだけではほとんど体力は変わりません。しかし少し負荷のある運動を加えることで、筋力が高まり、持久力がつく。つまりは体力が上がって健康な状態へと目に見えて変化していくのです。ちなみに速歩だけを連続で15分以上取り入れてもらう実験も行いましたが、これは「しんどい」「おもしろくない」という理由で皆さん継続できませんでした。運動を習慣化するにはこの「おもしろさ」も必要だと私は考えています。インターバル速歩ならゆっくり歩きを挟むことでツラさが軽減され、3分間ごとに変化を付けることによって飽きにくくなります。さらに、日々何らかの効果を感じられることはもちろん、ライバルと競ってみる、仲間に褒めてもらうなどによって、「おもしろさ」を高めていけると思いますね。
Cyclingood
インターバル速歩は体力を向上する確かな効果とともに
「誰でも継続できる」よう考え抜かれた運動法です。
次回はそのメカニズムと自転車への応用についてお伝えします。

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