2017.02.17 更新

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筑波大学大学院 人間総合科学研究科
スポーツ医学専攻 
久野 譜也 教授

1962年生まれ。スポーツ医学の分野においてサルコペニア肥満、中高年の筋力トレーニングなどを研究。2002年、筑波大学発のベンチャー「(株)つくばウエルネスリサーチ」を設立。最先端の健康政策の研究に取り組むと共に、科学的根拠に基づく健康増進や支援システムの普及に努めている。
Cyclingood
久野先生は大腰筋研究の第一人者でいらっしゃいますが
まず大腰筋がどのような筋肉なのかを教えていただけますか?
大腰筋とは腰の脊柱と太ももの大腿骨をつなぐインナーマッスルで、上半身と下半身をつなぐ唯一の筋肉です。脚を引き上げる、踏み出すという動作を司っていて、大腰筋が加齢と共に衰えてくると、このような動作ができなくなっていきます。「なんでこんなところでつまずいたんだろう?」というようなことが起こったら、それは大腰筋の衰えが原因かもしれません。
Cyclingood
脚を上げる、踏み出すという動作や日常の歩行を維持するには
下半身の筋肉を鍛えればいいと思っていました。
もちろん、太ももやふくらはぎなどの下肢の筋肉も脚の機能を維持するために重要ですが、それだけでなく、大腰筋も大いに影響していることが近年の研究でわかってきました。実は歩くスピードは40代、50代から少しずつ低下していくのを知っていますか?1年で1%程度と徐々に進行するため、自分では歩行の速さが落ちていることに気づきにくいのです。
Cyclingood
40代から歩くスピードが落ちていく…。
確かにその実感は無いと思います。
歩行スピードとは、「ピッチ(歩調)」と「歩幅」によって決まるのですが、ピッチは老化の影響をあまり受けません。20代と60代の人のピッチの差はほとんど無かったという研究報告もあります。一方、歩幅は加齢によって少しずつ低下していくことがわかっています。つまり老化によって歩くスピードが落ちるのは歩幅が狭くなることに起因していると考えられるのです。
Cyclingood
歩幅が狭くなる。
つまり一歩の距離が短くなっているということですね?
そうです。ではなぜ加齢によって歩幅が狭くなるのか。それは下肢の筋肉の衰えに加え、大腰筋の衰えによって脚を上げる、踏み出す機能が低下しているために一歩分の距離が短くなっているのです。高齢者が脚を上げずに歩こうとするすり足や、若い女性がチョコチョコと小さい歩幅で進む歩き方になっているのも、大腰筋の老化が「待ったなし」になってきていると思った方がいいでしょう。
Cyclingood
若い女性の歩き方にも大腰筋の衰えが…。
では大腰筋を鍛えるにはどうすればいいのでしょう。
有酸素運動と筋トレの両方を習慣づけ、特に足腰を中心に鍛えることが有効です。有酸素運動はウォーキングが定番ですが、もちろん自転車運動も適しています。ただし、自転車はラクなので、効果を得るならウォーキングをするよりも長めの距離を目安にするといいでしょう。一方、ウォーキングは歩ける距離が限定されやすく、飽きたり楽しめないという特徴があります。例えば少し遠くの公園まで自転車で移動し、公園内を歩くというメニューを組んでみると行動範囲が広がり、継続しやすい運動習慣になると思いますね。
Cyclingood
なるほど、有酸素運動を継続するには
楽しむ工夫が必要なのですね。
私は普段、ジョギングをしていますが、ただ走るだけだとつまらなくなるんです。最近は出張先でもスマートフォンのアプリを活用して地図と連動させたり、距離や時間を確認したりして、楽しみ方をいろいろと試していますよ。
Cyclingood
後半では自転車での筋トレ的な運動方法や自転車運動と大腰筋の関係をお話しいただきます。
久野先生、引き続きよろしくお願いします。