2017.08.10 更新

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川崎医療福祉大学 医療技術学部 健康体育学科
教育学修士 理学療法士 
西本 哲也 准教授

学術修士(教育学)・理学療法士。1996年より川崎医療福祉大学医療技術学部リハビリテーション学科助手。2001年より同学科講師。2011年より川崎医療福祉大学医療技術学部健康体育学科講師。2012年より准教授。
Cyclingood
子どもには小学校に入る頃までに自転車に乗れるように
なってほしいというのが多くの親の思いだそうです。
そうなんですか。ということはだいたい4歳から6歳くらいの間に、自転車の練習をはじめる子どもが多いということですね。この時期に人間の身体で最も発達するのがどの機能かご存知ですか?
Cyclingood
うーん。身長がグンと伸びて幼児から児童へと
著しく身体が変化する年代だとは思いますが...。
アメリカの医学者・人類学者であるスキャモンが1928年に発表した「発育発達曲線」では、人は生まれて5歳頃までに神経系型がおよそ80%成長し、12歳頃には100%に達すると考えられています。神経系型とは脳や脊髄などの中枢神経で、脳が働くための基盤になっています。
スキャモンの発育発達曲線
スキャモンの発育発達曲線
20歳での状態を100%としたときに、身体組織(リンパ型・神経型・一般型・生殖型)の発育・発達していく特徴を4つに分けてグラフ化したもの。
Cyclingood
5歳までに神経系型の80%が成長!
ほぼ子どもの間に完成してしまうのですね。
そうなんです。その他の、たとえば「一般型」と表している身長・体重・胸腹部の臓器などは乳幼児までに急速に発達し、一旦ゆるやかな成長期間を過ぎて思春期の頃に再び急激に発達します。このように人間の発育はその種類によって伸びるタイミングも伸び方も異なるということがスキャモンの発表から理解できます。
Cyclingood
4歳から6歳の幼児期に神経系型が大きく発育するというのは
どういう状況なのでしょうか。
神経回路は低負荷の運動でも刺激になって発達します。幼児のうちは、運動知覚知能認知言語が相互に影響しながら発達するため、実は6歳までに感覚と運動の統合を行っておくのは健やかな成長に大変重要です。言葉と動きの関連を理解したり、ダンスのように複数の動作を一度に行うことは神経系型の発達を促すことにつながります。でも実は4歳の子どもの平均的な運動能力はとても低いんですよ。
Cyclingood
4歳の子どもというと言葉を覚えて
身体の動きもしっかりしてきている印象があります。
あくまでも平均ですが、4歳の子どもの運動能力は片足立ちで5秒間程度。つまりバランス感覚としてはかなり未熟な状態なんです。だからこそいろいろな動きを行って、ときには失敗もしてひとつ一つ出来ることを増やしていくことが、神経系型や運動能力の発達に優位に働きかけていきます。ところが子どもの運動能力の発達を妨げている一番の要因があるのですが、それが何かご存知でしょうか?実は「恐怖心」なんです。
Cyclingood
恐怖心?子どもは怖さに対する感度が高く
それが運動能力を伸ばす妨げになると。
そうです。鉄棒で頭を下にしたり、高いところに上ったりということは多くの子どもにとって恐怖を感じる動きです。しかしこの恐怖心を乗り越えて小さなことでも「出来た!」という体験をすると、脳に分泌されるドーパミンが身体を動かし、集中力とモチベーションを上げ、さらなる成功体験につながりやすいと考えられています。
Cyclingood
恐怖心の克服が、成長を伸ばすきっかけなんですね。
では自転車は子どもにとってどうなんでしょうか。
恐怖心が強い子どもにとって、最初はコマ付きにすることで安定して乗ることができますよね。段階的に「乗れる」自信をつけやすいという特徴があります。さらに自転車運動で身につくのは他にもいろいろあると考えられますね。
Cyclingood
後編ではいよいよ自転車と子どもの発育の
関わりについて西本先生が解説。
子どもに自転車に乗ってほしくなる情報満載です!

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