2017.10.27 更新

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吉備国際大学 社会科学部 スポーツ社会学科
健康スポーツコース

博士(健康科学)・健康体育学修士 
山口 英峰 教授

2003年から東北大学未来科学技術共同研究センター特別研究員。2004年に吉備国際大学社会福祉学部健康スポーツ福祉学科講師に就任し、2009年社会学部スポーツ社会学科講師、2011年より同学科准教授などを経て2017年より社会科学部スポーツ社会学科教授。

後編のお話

  1. ① 運動のパフォーマンスが高まる時間帯がある!
  2. ② 少し高めの強度の運動をするなら16~18時
  3. ③ 朝の身体と出勤時の自転車運動法
  4. ④ 毎日できる自転車運動は日々のリセットに効果的
Cyclingood
先生、体内時計のリセットに効果的な運動時間がある
とのことでしたが、どういうことなのでしょう?
最初にお話したように、人の身体は約24時間周期のリズムをもっています。一般的に体温や心拍数、血圧などは朝に低く、夕方に高くなり、夜になって下がっていくという周期です。同様に、握力や酸素摂取量といった運動に関わる機能にも、その能力が高くなる時間帯があるのです。
Cyclingood
え?それは握力なら、1日のうちに最も強く握ることのできる
時間帯がある、ということですか?
そのとおりです。おもしろいのが、握力、酸素摂取量、換気量、全身反応時間、心拍数、膝屈曲力という、運動のパフォーマンスに関わる機能の多くが、夕方の16時~18時頃に最大のピークを迎えているんです。つまりこの時間に運動すると最も力を発揮しやすいということに。競技にもよりますが、アスリートの記録が出やすい時間帯とも言えますね。
Cyclingood
そんな時間帯があるのですね。16~18時といえば
帰宅時間と重なる社会人や学生が多いかもしれません。
各機能の多くは16時がピークになっていますが、18時くらいまで効果的な時間帯だと考えていいでしょう。この時間に自転車で帰宅する場合、坂道を積極的に上るなど、通常よりも少し負荷のある強めの強度を意識した走行が運動パフォーマンスを発揮しやすくなります。ただし、帰宅時間が遅くなり、就寝まであまり時間がない場合は、強い運動は避けてください。
Cyclingood
なぜ、就寝前に強い運動を行うことは良くないのですか?
眠る前に息が上がるような強い運動をすると、本来は機能が沈静していくはずの交感神経が活性化し、目が冴えて眠れないという状況になりやすくなります。気持ちよく眠りに入り、シャキッと目覚めることは体内時計にとって大事なリズムですから、睡眠を妨げる行為は避けた方がいいですね。
Cyclingood
なるほど!では、朝の通勤・通学に自転車を利用する場合、
どのようなことに気をつけると良いですか?
朝は帰宅時と異なり、身体のパフォーマンスが低い状況です。起きてすぐの身体は水分量が少なく、脳の命令が全身に行き渡っておらず身体がアンバランスな状態。心筋梗塞などの発症リスクが高い時間帯でもあるため、朝の激しい運動は避けましょう。起きて1時間は朝食を摂ってゆっくりと過ごし、自転車で通勤する場合も軽いペダリングでリズミカルにするのが良いですね。
Cyclingood
朝はゆっくり。帰りはしっかり。
時間帯で運動の強さを意識することが大事なんですね。
体内時計という観点から身体の仕組みを知り、その仕組みを活かした運動を生活に取り入れることは、心身ともに健やかな状態をキープする上で大切です。結果、仕事の効率アップや質の良い睡眠といった波及効果が生まれ、運動そのものだけでない波及効果につながることが期待できます。週に一度の運動よりも、毎日短時間でも運動を取り入れる方が、体内時計のリセットに効果があるため、そういう意味でも自転車運動はとても有効だと思います。
Cyclingood
身体の不調に体内時計が関係していること、
正常な状態を保つには自転車運動も有効であることが
よくわかりました。毎日リセットする習慣、ぜひ取り入れたいですね!

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