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2020.01.31 更新
金沢市内の自転車走行環境の改善活動を牽引されてきたことで広く知られている三国さんご夫婦。自転車で走る道路環境と聞くと「自治体や国がするもの」と思いがちですが、その必要性についていち早く声を上げ、地元住民と一緒に一歩ずつ活動したことが市や国を動かし、金沢のまちに具体的な成果を残されました。なぜお2人がこの活動を推進することになったのか、どのように取り組んできたのか、そしてこれからのビジョンについてじっくりとお話を伺いました。
1990年環境保護グループ「地球の友・金沢」設立。2002〜2006年『金沢自転車マップ』(地球の友・金沢)、『自転車・歩行者交通安全マップ』(金沢河川国道事務所との協働制作)などを機に金沢市を中心にした自転車利用環境の向上を牽引。
三国千秋さん:北陸大学名誉教授。NPO法人市民環境プロジェクト代表理事、自転車利用環境向上会議全国委員会監事などを兼任。地球の友・金沢代表。
三国成子さん:自転車利用環境向上会議全国委員会会長。2013年環境省「環境に優しい自転車の活用方策検討会」検討委員、土木計画学研究委員会自転車政策小委員会委員、金沢自転車ネットワーク協議会委員などを務める。

≪Part②のお話≫
- 日本初、バス・自転車共用レーンの実験・導入。
- お2人が活動の中で大切にしていること。
- そして、関心は里山へ。
金沢市内はバスネットワークが発達しています。スイスのバーゼル市のバスレーンをヒントに、このバスレーンを自転車と共用できないかと考えました。道を広げることができないなら、ある道で工夫しようというアイデアです。しかしそんなに簡単にはことが進まないと思い、ここでも道路関係者や地元の町内会の方、小中校の先生方、PTAの皆さんバス事業者と一緒に検討を重ねました。
国土交通省金沢河川国道事務所に協力してもらったことも大きかったですね。私たちは最初に自転車がバスレーンを使用することでどの程度の影響が出るかを実際にバスレーンの左側を走って確認し、運行の遅れが出ないことを確かめてから、3ヵ月間、国道を利用した社会実験をスタートさせました。
自転車の左側走行が利用者に浸透したことが一番大きかったです。バスの運行を妨げることなくどちらも安全に走行できることがわかり、「3ヵ月で止めないで」という声が聞こえてくるまでに。結果、さらに3ヵ月社会実験を延長させた後、2007年10月から本格導入となりました。これが日本初のバス・自転車共用レーン誕生です。2019年段階で金沢市内では、自転車の交通事故は、この11年間で71%減少したという効果も表れています。
私、幼稚園で絵を教えていたのですが、ティッシュペーパーが木からできてると話すと「木は茶色いのにティッシュは白い」と子どもたちが不思議がるんです。やはり環境が私たちの生活の一番の基盤で、小さいうちからの教育が必要だと感じますし、環境の上にまちづくりがあり、その上に交通があるという関係性が理想。この環境・まちづくり・交通が三位一体となってこそ本質的に豊かさのあるまちになると考えていますし、ここ金沢をそういうまちにしたいと強く願っています。
自然環境とまちづくりがひとつになっているのですね。
そうです。そのため最近では金沢市郊外の中山間地域で、森林や里山をどのように活用し、未来に残せるかを考えるワークショップにも取り組み始めています。地元の人の協力のもと、里山を走る自転車ツアーも開催し、このまちの資源を皆で体感できる機会も設けています。電動アシスト自転車を使えば、体力に自身が無い人も参加しやすいですからね。このような機会を通じて、私たち自身も自転車がもたらす健康に対して意識が高まってきたのです。
里山サイクリングの協力メンバーである中村さんご夫婦。中村市朗さんは農事組合法人まっきゃまの代表理事として牧山町の自然環境を守り、農作物を産業に生かす取り組みの中心人物。三国さんご夫婦はこのように地元の方と対話を重ね、あるべき姿をともに考察している。
自転車施策だけを専門にされているのではなく、
その先に見据えているのはまちづくりと自然環境保護。
広い視野で「金沢」を見つめ、問題点を見つけ、解決に向かって進めています。
第3回はこれからのビジョンについてもお話しいただきます。
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