岡山県真庭市 自転車の街づくり 1

岡山県真庭市 自転車の街づくり 1「すべては、この街を感じることからはじまる。」

岡山県真庭市 自転車の街づくり 1「すべては、この街を感じることからはじまる。」

2015.06.12 更新

蒜山高原やバイオマス発電で有名な岡山県真庭市がいま、「自転車の街づくり」に取り組んでいます。
その実現に向けて行われているのが、市の職員や一般住民が参加する「自転車の楽しみ方プラン会議」。
官民がひとつになって真庭の魅力を探り、自転車道の改善を考えるこの会議が2015年5月24日行われました。
会議といっても、まずはみんなで蒜山高原自転車道を走ることからスタート。
私たちCyclingood取材班も同行し、皆さんがどんなプロセスでこの活動を行い、何をめざしているのかを聞いてきました。
全3回にわたってお届けします。

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岡山県真庭市
岡山県の北部、鳥取県に隣接する真庭市は、山々に囲まれ、のどかな蒜山高原が広がる自然豊かな街。林業が盛んで、木材処理で出た廃材を発電に活かす「バイオマス発電」の取り組みは国内だけでなく海外からも注目を集めています。現在は木材だけでなく、食品、家畜排泄物などのさまざまなバイオマス資源の活用へと広がっており、この「循環型社会」の実現に向けた取り組みのひとつとして、住民の健康づくりと観光に「自転車」を活かす活動が推進されています。

前日までの雨模様の天気予報がうそのように晴れ渡った2015年5月24日。
朝10時の集合時間に、自慢の自転車とともに参加メンバーが集まってきます。
サイクリングウェアを身にまとった人がいれば、Tシャツ姿の
ラフな格好の方もいらっしゃいます。

この日の目的は、完成して20年にもなる蒜山のサイクリングロードをみんなで走って、標識・看板に不備がないか、危険箇所はないか、舗装や補修箇所はどこかなどを確認し、最後に意見を集約すること。集まったメンバーは約40名。
1チーム約10名で4班にわかれ、各チームがサイクリングロードを巡るプランです。

今日の流れについての説明と、チーム分けが行われ
各班ごとにサイクリングマップを手にルートの確認に。
中には初対面の方もいらっしゃいますが、この活動に賛同した者同士、
そして蒜山を、真庭を愛する者同士、すぐに打ち解けた様子です。
いよいよチームごとに出発!の時間となりましたが、ちょっとここで、
このプロジェクトがどのように発足し、
自転車の街づくりに取り組んできたのかを振り返ってみます。
時間を2014年に巻き戻しましょう。

真庭市が自転車の街づくりに着手するようになったのは2013年のこと。
「何からはじめたらいいのか、まったくわからなかった」と
真庭市蒜山振興局地域振興課の小谷さんは当時を振り返ります。
そんなとき、LIFE CREATION SPACE OVEが開催する地域交流会に参加し、
散歩をするようにゆったりとした時間を自転車で過ごす「散走」という新しい楽しみ方に出会ったそうです。

小谷 佳嗣さん(真庭市蒜山振興局地域振興課)

「これだ!と思いました。ロードでもマウンテンバイクでも、ママチャリだっていい。
どんな人でも参加できて、自由に自転車を楽しみながら真庭の街を散策してもらえる、散走という考え方にとても共感しました。クルマと違って、自転車ならゆっくりとスポットを巡ってもらえますよね。観光という面では、滞在時間が長くなるということも大きな魅力でした」

そこでOVEが散走イベントを提案し、2014年6月に「第1回散走フォーラム&散走体験会」を蒜山エリアで実施。
続いて2014年11月には第2回が勝山・久世エリアで開催され、
たくさんの住民の方が参加されました。
自転車のタイプもコースも自由なこのイベントに
2回とも参加された方のお一人が、自転車販売店を営んでいらっしゃる野崎さんです。

野崎 雄二郎さん(自転車販売店経営)

「私は以前からこうした自転車イベントの企画をしていました。しかしスポーツバイク系のイベントになるとなかなか新しい方に参加してもらえない、と限界を感じていたのです。それにイベントの企画そのものにもマンネリが生じてしまっていました。しかし散走なら、速く走る必要もなく、初心者の方にも楽しかったと喜んでもらえます。私自身、参加者としてとてもワクワクしましたし、アイデアもどんどんわいてきて、いまは新しい企画を考えることが楽しくて仕方ないです」

この散走フォーラムの大きな特徴は、まず参加者みんなでコースを作り上げることです。
「より真庭の魅力を感じられるスポットは?体験は?」と地域の資源を出し合い、チームごとにコースをまとめていきました。
そして、みんなで自分たちが考えたコースを実走。
想像以上の楽しさを感じ、また課題点を見つけ、長年地元に住む人にとっても
たくさんの発見があるイベントとなったのです。

散走フォーラム&散走体験会の様子

井藤 嘉之さん(自動車販売店経営)

「私は生まれてからずっと真庭に住んでいますが、実は蒜山のサイクリングロードを一度も走ったことがありませんでした。それどころか、自転車に乗る習慣もなく、どこに行くのもクルマで移動。そんな私が散走フォーラムでクロスバイクの快適さを体験し、知っていたつもりでいた真庭の街の魅力を改めて感じることができました。この豊かな自然を肌で感じられるのは自転車ならでは。私にとって驚きに満ちた体験となりました」

真庭市の青年会議所に所属している井藤さんのお話しにあったように、長年ここに住む人にも新たな魅力に気づくことができた散走フォーラム。
特に地方部は、交通の不便さもあることからどこに行くのもクルマで移動することが当たり前になりやすく、「クルマの免許を取ったら自転車は卒業」となる人が多いのかもしれません。

ちなみに蒜山エリアでの第1回散走フォーラムで提案されたコースは

のバラエティに富んだ5コース。地元の人だからこそ知り尽くす名スポットやお店が並ぶ一般的な観光地めぐりとはひと味もふた味も違うこのコース設定こそ、散走ならではのおもしろさです。
それぞれのチームがテーマに沿ったコースを走る中で、地元の食を満喫し、たまたま居合わせた人との会話を楽しみ、美しい風景にほれぼれとしながら長年慣れ親しんだこの街を、新しい視点で感じ取ることができたようです。

石賀 義久さん(真庭市産業観光部産業政策課)

「“自転車の街をつくる”となると、道路や環境整備などに目を向けてしまい、リスクを考えがちになってしまいますが、散走フォーラムを体験して考え方が大きく変わりました。この街にはこんなにたくさんの財産がある、この魅力をどう伝えていくかを考えることが大事だと気づいたのです。仕組み作りはこれからですが、まずは真庭市の住民がこの魅力に気づき、観光客にも広がっていくような“自転車の街”をめざしたいと思っています」

目標は、「真庭市民が楽しめて、地元の人から観光客へ語られる」自転車の街。
まずは自分たちがこの街への愛着を新たにしていくことが大切だという気づきが、「自転車の街」というぼんやりとしたビジョンをくっきりとしたものに変えていったようです。

こうしたプロセスを経て今回開催された「自転車の楽しみ方プラン会議」。
蒜山のサイクリングロードを走って、
何を感じ、発見していったのか次回に続きます。お楽しみに!