2016.07.22 更新

他人にも、社会にも、無関心な人はいない。
それが円滑な島の循環を支えている。

Cyclingood
島の暮らしは人との関係が密接ですよね。
都会とはまったく違うと思いますが。
阿部さん
海士町の人は、良いことがあればみんなのおかげ。
自分のことは自分の責任ととらえている人が多いんです。
でも世の中、この逆になっているケースが多いのではないでしょうか。
問題が起これば人のせい。
良いことがあれば自分の手柄というように。
島の暮らしでは、1日に出会う人数は都会よりもはるかに少ないですが、あたたかいコミュニケーションは断然多いです。
それはみんなが相手を思い、どんなことも自分事として捉えているからなんでしょうね。
思いやるから助けてもらえる、そんな確かなつながりが、海士町の強みだと感じています。
Cyclingood
どうして都会ではつながりを強くすることが難しいんでしょうね。

阿部さん
山登りに行くと、すれ違う人と自然に挨拶をし合いますよね。
山ではそうしているのに、なぜか日常に戻れば素通りになってしまう。
都会にいたころ満員電車にゆられながら、この隣にいるサラリーマンも、きっと山では挨拶をする人なんだろうなと想像したら、人の問題ではなく、都会の構造、仕組みに理由があるのだと考えるようになりました。
Cyclingood
なるほど。その社会の仕組みが海士町ではうまく循環しているのですね。
阿部さん
住民の数が少ないということもありますが、やはりそれだけではないんですよね。
以前、ゴミの有料化が議題に上がったときは反対する人がいなかったそうです。
Cyclingood
え?一般的に考えたら反対派の方が多くなりますよね。
阿部さん

そうでしょうね。
ここではなぜ反対する人がいないのかというと、ゴミの処理をやってくれている人をみんなが知っているからなんです。

「あの人は子どもが大きくなってきて苦労しているし」「がんばってくれているからね」と有料でいいじゃないかと自然に思えるんです。
人にも町にも無関心でない表れですね。

関係を築くためには、まずすべてのことを受け入れること。
たとえ叱られても決して逃げないこと。

Cyclingood
阿部さんはこのようなつながりの深い関係の中にどうして溶け込むことができたのですか?
よそ者にとっては一番難しいことだと思いますが。
阿部さん
最初の2年間は、とにかく何でもしようと、皆さんの声を聞こうと、いろんなお手伝いをしました。
農家での畑しごとや漁師さんの魚を網から外したり、ときには役場に顔を出していたらイベントの手伝いをすることになったり…。
そうこうしているうちに、農家の方に「人手はいいから売る先がほしい」と言われて、「じゃあやりましょう」と。
実は私たちも販路拡大なんて経験のないことです。
当時は私を含めてメンバーは3人。
試行錯誤しながら物産品の販売を行うWebサイトを立ち上げました。
Cyclingood
臆せずに自分から飛び込んでいくことで海士町の中での巡の環、阿部さんの存在感がどんどん大きくなっていったのですね。

阿部さん
もちろん最初は戸惑うことも多く、いろんな人に叱られましたよ。でもね、叱られたときこそチャンスなんです。
Cyclingood
チャンス?
阿部さん
これはトヨタ時代に学んだことですが私が手がけた設計に不備があったりで、製造現場の方に謝りにいくことが何度もありました。
でもね、相手にしてくれないし、話も聞いてくれない。
向こうはもうカンカンですから。
Cyclingood
それはツライ状況ですね。逃げ出したくなります。
阿部さん
そう。願わくば逃げ出したい。
でも逃げたらもっと最悪な状況を招くことはわかってる。
だから正直に向き合うことが最善の方法だと頭を下げて乗り越えました。
関係がこじれたら、逃げずに向き合うことしか選択肢はないし、それによって挽回できるチャンスになるんです。
Cyclingood
その勇気をもつことが、とても難しいと感じる人は多いと思います。

阿部さん
都合の悪いことが起こると大っぴらにしたくなくてメールで済ましてしまいがちになりますよね。
私も昔はよく上司に言われました。
「自分のミスを相手に押しつけるな」と。
何か問題が起これば、まず会って顔を合わせて話し合うこと。
それが無理なら電話。最後の手段としてメール。
あのときの経験がボクの中に染みついていて今に生きているんだなと改めて思いますね。
Cyclingood
人生の中で無駄なことは何ひとつ無いと。
阿部さん
本当にそうだと思いますね。
あ、ひとつ思い出しました。
その上司、とても厳しい方だったのですが年に何度かだけ褒めてくれたんです。
「お前のいいところは正直なところだ」と。
うれしかったなあ。

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