勢和中学校の「コミュニティ・スクール」❷

勢和中学校の「コミュニティ・スクール」❷

勢和中学校の「コミュニティ・スクール」❷

2017.10.06 更新

中学1年生がグループにわかれ、地域を走って町の観光資源を発掘する「自転車で地域再発見」という活動が
三重県多気郡多気町の勢和中学校で行われています。最初は戸惑いがちな様子だった生徒たちも
次第に町の魅力を「見つける」ことに意識が高まり、知らなかったさまざまな町の姿に出会った模様でした。
この活動は勢和中学校が独自に取り組んでいる「コミュニティ・スクール」の一環。活動の意図や背景などについて、
勢和中学校の先生と、企画運営を担当された(株)地域資源バンクNIUの西井さんにお話をお聞きしました。

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多気町立勢和中学校「コミュニティ・スクール」
三重県多気郡多気町にある多気町立勢和中学校では、「地域の力を借り、地域とともに育てる」開かれた学校をめざし、「コミュニティ・スクール」活動を推進。職員だけでなく地域の方も参画した多様な取り組みを実践されている中、2年連続で自転車による地域の魅力再発見プログラムを実施している。

地域資源バンクNIUさんは、多気町を基盤に町の活性化に貢献する
自転車の可能性を求めてさまざまな活動に取り組んでいらっしゃいます。
多気町立勢和中学校で実施されている「コミュニティ・スクール」の活動のひとつ、
「自転車で地域再発見」プログラムも
NIUさんが提案されたものでした。
中学校の運営行事を地元の企業が提案し、実施に至るというのは
なかなか無いように思いますが、
いったいどのような経緯だったのでしょうか。
地域資源バンクNIUの代表取締役 西井勢津子さんを訪ねてみました。

Cyclingood
「自転車で地域再発見」を勢和中学校にご提案されることに
なったきっかけは何だったのでしょう。
西井さん
私たちの活動のひとつである
「自転車の町プロジェクト」の一環として、
勢和中学校で自転車の交通安全教室を担当させていただいています。
生徒のほぼ100%が自転車通学なので、
交通マナーの理解だけでなく、
正しく自転車に乗れるテクニックを指導することは
町全体のトラブルを減らすことに貢献できると考えています。
Cyclingood
そういうつながりと活動実績をお持ちの中で
コミュニティ・スクールのプログラムの提供につながっていったのですね?
西井さん

もっとこの町のお役に立てることはないかと中学校へお話を聞きに
行った際、コミュニティ・スクールのお話が出てご提案に至りました。

中学校の先生が
「小学校の統廃合後バス通学になり、 自転車に乗る機会が減ったことで子どもたちが自分の地区以外に 出かけることが減っている」

と気にされていたのが 印象に残っていたため、
私たちの提案で先生が感じられていた課題の解消に
少しでも応えられたことが励みになりました。

Cyclingood
2016年で2回目となる「自転車で地域再発見」だったそうですが、
1回目と2回目で変えたことはありましたか?
西井さん
グループ行動で地域の観光資源を発掘して
その数や内容を発表するという主な流れは変わっていません。
ただ、自転車に乗ると生徒たちは立ち止まるのを忘れて
先へ先へと行きたがってしまい、スポットにも目新しい発見が少ない
という課題が1年目でわかったので、2年目では少しルールを変更しました。
Cyclingood
自転車に乗ると走り抜けてしまいたくなる
生徒さんの気持ちはなんとなくわかります。
西井さん
そこが問題で、どうやったら立ち止まってもらえるかを考えました。
結果、ゲーム性を高めてポイントを獲得するルールとし、
自然の風景や匂いなどの無形のものを観光資源として見つけた場合は
獲得ポイントをアップしました。
また途中で他のチームのポイントを公開して順位を伝え、
「勝ちたい」という動機からのめり込んでもらえるように働きかけました。

Cyclingood
なるほど、そのようなゲーム性は中学生にとってやる気になりますね。
西井さん
もうひとつこだわったのは、働きかけの強化です。
生徒たちに無い視点をどうすれば与えることができるかを考え、
「都会の人」というゲストを設定しました。
Cyclingood
都会の人の視点が必要だったのですね。
西井さん

そうです。
東京や大阪からはるばるお越しいただくことに意味がありました。

各グループに必ず都会からのゲストが入り、
生徒たちだけでは気づかない、通り過ぎてしまう部分について
指摘してもらうようにお願いしました。

「ここは空気がおいしいね」とゲストに言われて、
自分たちが住んでいる場所の魅力を
再認識しているシーンも見られましたね。

Cyclingood
私たちも同行させていただいて、生徒さんたちの変化を感じました。
最初はなかなか立ち止まろうとしなかったのが、
次第に慣れて大人が働きかけなくても
自分たちで新しい場所を見つけようという
意識にどんどん変わっていったような気がします。
西井さん
そうですね。先導係やカメラ係、得点係など、グループの中に
個々の役割を作ったので、それぞれが自分の担当を理解して
役割を果たすようになっていきましたね。

Cyclingood
この日は午後から体育館に集まって
プレゼンテーションをするという流れでしたが、
この発表してもらうという意図は何だったのですか?
西井さん
多くの地域学習は地域の文化や自然の理解を目的にしていますが、
その理解から一歩進めて、感じたことを人に伝える心を育みたいという思いからです。
多気町にあるすべてのもの、風景、人の素晴らしさを
誰かに伝えたら喜んでもらえるという経験をしてみることで、
地域愛がさらに深まるきっかけになればと思っています。
Cyclingood
「自転車で地域再発見」終了後も、一部の有志の生徒さんによって
みんなで集めた情報を活用する課外活動に発展されたそうですね。
西井さん
そうなんです。1年目は6名の生徒さんが集まって
みんなで集めた勢和の魅力をイラストで表現した
マップハンカチを作成しました。
この活動は多気町長、さらに三重県知事にも直接お会いして報告するまでに。
知事に生徒たちが自分の好きな場所をお伝えして
「もっとこの町のことをいろんな人に知ってほしいです」
と話していたのが印象的でした。
伝えたいという気持ちが芽生えているのかなと感じましたね。
Cyclingood
そのような成果物に結実させることによって、
自分たちでこの町を調査して宝を見つけたという自負心とともに
この活動について「やってよかった」という印象も強く残りますね。
西井さん
そうだといいですね。
今年も結局10名ほどの生徒さんが課外活動として参加してくれました。
「今年はみんなで何を作ろうか」と協議を重ね、
地域のクチコミ情報にクーポンをつけたミニ冊子「くぅぼん」を作成することに。
ここに地元の名所である丹生大師にまつわるエピソードも加え、
この冊子をカプセルに入れてガチャガチャ形式に仕上げました。

Cyclingood
ガチャガチャですか。それは楽しそうですね。
西井さん
名付けて「くぅぼんガチャガチャ」。
地元の一大イベント「あじさいまつり」でお披露目、販売をして
注目されましたよ。
Cyclingood
自転車のもつ価値を地元の人に伝えていきたいと
考えていらっしゃるNIUさんとしては、
子どもたちに地域の魅力に出会ってもらうツールとして
自転車がフィットしたことも良かったのではないでしょうか。
西井さん
そうですね。子どもたちがあまり地元を知らない状況であるという
課題に対しても、自転車だからこそ広く移動でき、
立ち止まることで深掘りできるという企画が実現できたと思います。
地域学習のあり方を考察して、
この活動をさらに進化させていけたらと思っています。
ほぼ全員の生徒が自転車で通学しているのに、
地元をあまり知らないという生徒さんの状況をふまえ、
楽しく、積極的に参加できるようにプログラムを組み、
運営を担った西井さんたちによる「自転車で地域再発見」。
「地域とともにある学校づくり」をめざす勢和中学校にとっても、
意義のある活動になったようです。
この活動が今後どのように発展していくのか、
今後の行方を楽しみにしています!